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「私たちは無意識のうちに、選別してはいないだろうか」 ーウクライナ侵攻をめぐる欧米の「二重基準」に冷ややかな中東イスラム諸国の人々

「あなたは誰のためにどのくらい、涙を流しているだろうか。私たちは無意識のうちに、選別してはいないだろうか。」 -モンズルル・ハック(Monzurul Huq:プロトム・アロ東京支局長)金子淳訳「流す涙の量は同じか 「青い目」でない難民は今」(『毎日新聞』3月27日)
https://mainichi.jp/articles/20220326/k00/00m/030/143000c

 中東イスラム世界などアジアやアフリカ諸国の人々の厳しい目は、ウクライナ難民には手厚く、それ以外の地の難民には厳格な日本に向けられているに違いない。

二人ともロヒンギャの方だだそうです 日本国籍をもつロヒンギャの長谷川留理華さん(左)と父・健一さん(右)。日本語も流暢に話すが、家族同士ではロヒンギャの言葉で会話する

 NPO法人アジア・アフリカ研究所・愛知大人文社会研共催の「ロシアのウクライナ『特殊軍事作戦』(「侵攻」)をめぐって」では、清水学・一橋大学元教授から中東イスラム諸国の人々はロシアのウクライナ侵攻に対する欧米諸国の姿勢を冷ややかに見ているという指摘があった。それは言うまでもなく、イラクの主権を無視してイラク戦争を行ったアメリカやイギリス、また国際法を違反してパレスチナ占領を続けるイスラエルに沈黙する欧米諸国に果たしてロシアのウクライナ侵攻を非難する資格があるのかという想いからだ。清水氏の説明ではNATOは、アフガニスタンの安定にも貢献することができず、またアメリカはイラン核合意など国際的協定を一方的に破棄・離脱した。また、インドはアフガニスタンを容易に放棄したアメリカへの信頼が希薄になったと語っていた。アメリカを信頼することができないインドはロシアのウクライナ侵攻を非難することも、ロシア制裁に加わることもない。

 ロシアのウクライナ侵攻と無辜の民間人を殺傷する事態は厳しく非難されてしかるべきだが、自省できない欧米諸国の姿勢は暴力などの形で自らに返ってくることがあるかもしれない。過激派のテロは欧米諸国の二重基準に対して行われてきたからだ。オサマ・ビンラディンは、パレスチナ問題について「かりに(湾岸戦争など)戦争の背景にある米国の目的が宗教的、経済的なものであるならば、それはまたユダヤ人のちっぽけな国家の利益となり、そのエルサレムの占領と、パレスチナのムスリムの殺害から注意をそらすことにある。」と述べたが、ロシアのウクライナ侵攻を批判するならば同様にイスラエルを非難しなければ筋が通らない。

 

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下は、イングランドのロックバンド・キング・クリムゾンの「平和 -終焉」の歌詞だが(詞はピーター・シンフィールド)、「終焉」は戦争の終わりを意味する。ウクライナの戦争が早期に終結してほしいという願いはウクライナ人をはじめとして多くの人々に共有されるものであることは疑いがない。
平和 それは海と風が発する言葉。
平和 それは人が微笑む時に歌う鳥。
平和 それは敵への友としての愛。
平和 それは人が子どもに注ぐ愛。
(中略)
平和 それは人の心から流れ出る小川。
平和 それは夜明けのように広大な人。
平和 それは終わりなき日の夜明け。
平和 それは終焉、戦争の終わり。

 トルコのチャヴシュオール外相は昨年4月、NATO諸国の一部にはウクライナ戦争を長引いてほしいと思っている国があると語った。ウクライナでの戦争が長引けば、アメリカやイギリスなどの軍産複合体は潤うし、またロシアの国力を消耗させ、弱体化させることができる。戦争が長引くからくりにも国際社会が厳しい目を向ける必要があることは言うまでもない。清水氏からはウクライナ戦争でスリランカやパキスタンの経済は破綻しかかっているという発言があったが、戦争の長期化は世界の安定と逆行するものであることは疑いがない。

アイキャッチ画像はキング・クリムゾン


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