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やなせたかしさんが説く「絶対的正義」と世界の安定構築

 2013年に他界した漫画家のやなせたかしさんは次のように語っていた。
「アメリカにはアメリカの“正義”があり、フセインにはフセインの“正義”がある。アラブにも、イスラエルにもお互いの“正義”がある。
 つまりこれらの“正義”は立場によって変わる。でも困っている人、飢えている人に食べ物を差し出す行為は、立場が変わっても国が違っても『正しいこと』には変わりません。これが『絶対的な正義』なのです」

アンパンマンの使命 http://yanasetakashi.com/なんのために生まれて、なにをして生きるのか%EF%BC%9F/


 紛争が続くイエメンでは、2017年10月のユネスコの発表によれば、25歳以下の若者の間では失業率は実におよそ70%となっている。やはりイエメンへの空爆に参加するエジプトも、失業率は公式には12%前後で、国民の28%が貧困ライン以下の生活を余儀なくされるが、実際の数字はより高く、失業率はその倍で、日雇い労働に従事する者たちも半数に達するという見積もりもある。

 イエメンへの軍事介入に主導的役割を果たすサウジアラビアでは1970年代の人口は600万人であったのに対して、現在では3000万人を超える(外国人労働者を含める)。豊かな産油国というイメージはあるが、国民の間の経済格差は著しく、国民の20%は、貧困ラインより下の生活を送る。またサウジアラビアの失業者のうち4分の3が20代の若者たちだ。2015年1月に他界したアブドゥッラー(アブドラ)国王の資産は180億ドル(2兆円)だった。2018年のサウジアラビアの軍事予算は560億ドルで、政府支出の中では教育や医療などに比べて最も多い。
https://www.bloomberg.com/.../defense-is-top-item-in...

 中東イスラム世界における紛争や不安定、暴力も「絶対的正義」である食料、エネルギー資源、水の不足などの要因もその重要な背景だ。

 シリアにおける「アラブの春」の政治変動とその後の内戦も、旱魃による農地不足と農民層の若者たちの失職も重要な背景であった。ソマリアなど「アフリカの角」地域では漁業資源の大幅な減少によって海賊が出没するようになった。

やなせたかしさんの著書


 「イスラム国」など武装集団の台頭を促した要因にも旱魃がある。シリアでは旱魃によって農村部の人々100万人以上の人々が離農して、アレッポやダマスカスなど主要な都市に国内移住していった。長引く紛争によってこれらの国内移住層は生命の危険にもさらされ、若者たちは「イスラム国」による「新しい秩序」の訴えに吸収され、武装集団のメンバーになることによって経済的手段を得ようとする者たちも現れた。

 日本もまたイスラムに訴える武装集団の脅威、漁業資源を求める中国や北朝鮮の領海侵犯など世界の食料の減少に起因する暴力や論争に巻き込まれている。「絶対的な正義」の観点から中東など世界の紛争を考えることが求められていることはいうまでもなく、そのためには国際的協調によって改善しうることは多々あるだろう。

https://www.anpanman.jp/about/yanase.html  より

アイキャッチ画像は http://hagenama.blog.jp/archives/34688183.html より

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