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東海テレビドキュメンタリー『さよならテレビ』舞台挨拶レポート

名古屋シネマテークで公開が始まった特集上映「東海テレビドキュメンタリーの押売り」。劇場初上映を含む22作品が上映中です。
初日一発目は2019年の『さよならテレビ』。
圡方宏史監督の舞台挨拶の模様をレポートします。(2022/01/29)

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圡方:取材が2018年くらいの作品で、もう4年くらい経ちました。あれから変わったことも変わってないことも、いろいろあります。
今、僕は名ばかりの「デスク」という、外に出ず下の人たちの原稿を見て嫌味ばっかり言う忌まわしい存在に成り下がってます(笑)。ドキュメンタリーをやりたい、やらなきゃと思いつつ、ちょっと停止中です。
作品に出てきた福島というアナウンサーは、今は高井さんという方がされているニュース番組の中のワンコーナーをやっています。彼は気象予報士の資格を取って『さよならテレビ』の最後に出てきたような感じのことをやってます。彼を愛するディレクターが多いので、みんな面白いVTRを福島のためにと頑張っています。
澤村さんという熱血漢の記者。彼は今も東海テレビにいます。今も企画を一緒に組んでやってます。
そして東海テレビを1年で追われて大阪に行った渡辺くん。実は今日、来てくれています!

(場内拍手)

渡辺:渡辺です。今は愛知に戻ってきて、番組の制作をしています。

圡方:作品の中ではテレビ大阪に行きましたが、何年行ってたの?

渡辺:2年半くらい。いろいろあって愛知に戻りました。

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圡方:今は豊田でケーブルテレビの制作会社にいて、こないだも澤村さんと3人でご飯を食べました。東海テレビはどうでしたか?

渡辺:初めて取材やディレクターみたいな仕事に携わらせていただいて、取材でいろんな人に関われて楽しかったです。自分の努力が足らず、ああいう結果になってしまいましたが。

圡方:作品の中ではカットしちゃったんですが、東海テレビの社員よりも取材とか楽しくやってた部分もあったよね。僕らは作品に出てない人も追いかけていて、結果的にこの3人を残した理由の一つに、渡辺くんも澤村さんも自分の言葉で喋ってること。やっぱりサラリーマンは僕もそうですが、常に言葉がどう捉えられるか考えてしまい、どうも言葉が死んでしまう。澤村さんもナベちゃんも自分の言葉で喋ってるが故に損する部分があるなと思いながら取材してました。
でも何となく、テレビ局にいる人々より逆にこの先、生き残っていけるのかも。今、テレビ業界全体がさらに良くない状況にある気もしてます。

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客席からの質問:渡辺さんは今と東海テレビ、どっちが楽しいですか?

渡辺:番組を作ることでは東海テレビの方が楽しいかなとは思いますが、ケーブルテレビは地域とのつながりが強いのがいいと感じてます。1回の放送じゃなく、1ヶ月に30回とか50回繰り返し放送されるという作りの違いもあります。今は自分の裁量で自分で考えて動けて、時間に追われて動く感じがあまりないのは良いかなと。

客席からの質問:作品にあった、福島さんを炊き付ける言葉として「リスクを負わなければ表現できないじゃないですか」というのは監督ご自身の叫びじゃないかと。テレビという組織の中で自分らしさを何とか表現したいというご自身の叫びじゃないかと思ったんですが、いかがですか?

圡方:正解です(笑)。あとは福島アナウンサーと付き合いが長いのもあって、誰からも怒られないことしか言わない風潮が全体的にある中で、勿体ないなと。僕はこういうドキュメンタリーをやったりしてるので東海テレビの中ではどっちかというとアウトローですが、だからといって死ぬわけじゃない。福島も自分の言葉で喋ってさらけ出していいんじゃないのかと。さらけ出さないから何か隠してるんじゃないかと思われる。さらけ出せば意外とその奥には何もない。良くも悪くも。今、陰謀論的に言われているような「テレビ局の闇」って僕自身も分からないところがあります。おそらくそんな深いものはない。大衆を操作しようとか、特定の国に利益になることをするとか、そんな深いものじゃない。もっと浅くて視聴率が欲しいとかお金を稼ぐとか、それはそれでとんでもないことだとは思いますが。それを何か、さらけ出していないが故に「こいつら壮大な陰謀があるんじゃないか」と思われてるところもあると思うんです。
それをさらけ出しているのがYoutube。テロップや音楽、編集が凝ってなくても見てる人たちは何かしらシンパシーを感じてくれることが、今は完全に明らかになった。もっと等身大にやればいいのにという思いがありますね。

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私は個人的に東海テレビドキュメンタリーファンなのですが、久しぶりに『さよならテレビ』を見て、やっぱりすごく面白いなと思いました。
舞台挨拶の冒頭に圡方さんが「初めて見た人は?」と問いかけ、半数以上が挙手されたことに「僕らにとってははるか昔の作品に思えるので驚きだ」と仰ってましたが、古さを感じさせない作品だとも思いました。それはつまり、状況はあんまり変わっていないということでもある。コロナを経て、むしろさらに悪くなっているようにも思えます。だから何度でも上映されてほしい。初めての人も、二度目三度目でも楽しめて考えさせられるドキュメンタリーだと、改めて感じています。

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「東海テレビドキュメンタリーの押売り」
名古屋シネマテーク他 1/29土~2/11金

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(C)東海テレビ放送


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