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『シュシュシュの娘』2021.9.14 沖田修一監督&入江悠監督舞台挨拶レポート

シネマスコーレでの上映もいよいよ今週末まで。名古屋だけのオリジナル企画・『子供はわかってあげない』の沖田修一監督と、『シュシュシュの娘』入江悠監督のリモート舞台挨拶のレポートをお届けします。
日芸の先輩後輩であるお二人の最新作は、1日違いの同時期公開となりました。それぞれの作品を鑑賞した両監督によるトークの模様です。
(2021年9月14日 MC:坪井副支配人)

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坪井:沖田さんと入江さん、揃うのは久しぶりですか?

入江:一緒にトークイベントをやるのは初めてかも。緊張してます。20代の時、お互い自主短編映画を作って上映会をしたことがあり、お客さんの前で喋ったかもしれないです。

沖田:そうだっけ。全然思い出せない(笑)。

坪井:沖田さんの『このすばらしきせかい』も、入江さんの『ジャポニカ・ウイルス』という作品も2006年。地方では一緒に公開されたと思います。

沖田:車で、一緒に舞台挨拶に行きましたよね。

入江:行きました。でもバラバラなのでトークとかはしてませんね。

坪井:沖田さんは『シュシュシュの娘』はご覧になりましたか?

沖田:はい、宇野さんがすごい役をやってましたね。宇野さんに見えなくてビックリしました(笑)。シュシュシュって何のことだろうと思ってて、映画を観ながら合点がいった次第です。踊ってるシーンが良かったですね。ついつい見てしまう。実家のはじけ方が良かった。

坪井:スタンダードサイズでしたが、どうでしたか?

沖田:そうですよね。「おいおい!」と思って(笑)。自主映画だから何をやってもいいんですよ。そういう遊びを入江くんが思い切りやってるんだなと嬉しくなりました。コロナ禍でもやってやる!という志で撮った映画に、このテーマ(笑)、その面白さはすごくあった。入江くんの暗く落ち込まない感覚がやっぱり良いなと思いました。

入江:ありがとうございます。沖田さんとは昔から一緒にやっていて、沖田さんの短編に僕が出演したり、沖田さんに出てもらったりしてました。当時ファミレスとかでよく喋ってて、僕がやりたいことや沖田さんのやりたいことはお互い全部知ってる感じ。恥ずかしいです。

沖田:全然変わってない気がする。一緒に『ジャポニカ~』とか上映していた頃のクセみたいなものが変わってない気がします。そんなもんだよなーと、幸せな感じです。

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入江:先輩の瀬々(敬久)監督や鈴木卓爾監督、商業映画をやってて自主映画を撮る人がいますよね。やっぱりそういうことをしたくなる年代、年齢があるのかなと。たまたま僕の場合はコロナで仕事がなくなったので、止まってるより何かやってやろうとこれを作ったんです。

坪井:商業映画を長くやっている人には、自主映画に帰って来れる人と来れない人がいると思います。帰って来る人は、ある意味、自由を求めているんでしょうか?

入江:あると思います。僕の場合、今回のような映画はなかなか企画が通らないので、そこで労力を使うよりは自主映画を作った方が早いというのがありましたね。

沖田:僕はたまたま今こうしてやらせてもらうことがあるだけで、根っこの部分でカメラと人がいれば映画は撮れることを知ってるわけです。選択肢がいつでもある。そこはもう変わらないと思います。良くも悪くも「(カメラを)回しちゃえばいいじゃん」というところがありますね。

坪井:入江さんは『子供はわかってあげない』はいかがでしたか?

入江:見ながらふっと思い出したことがあったんです。昔、守屋(文雄)さんの部屋かどっかで喋ってた時に「入江くんは大作映画を撮っていくかもね。僕は小っちゃな予算でいいんだよね」と話したんです。もうひとつ覚えてるのが「僕はおじいさんやおばあさんだけ撮れればいい。綺麗な女の子とかは僕の映画に要らない」と(笑)。それが「あれっ、今回初めて撮ってる!」と思って、それが一番ビックリしました。その前の『おらおらでひとりいぐも』はベテラン俳優の田中裕子さんと仕事してるのもビックリしたんですが、今回またビックリしました。「10代の女の子をこんなに美しく撮れるんだ」と。

沖田:僕だって若い娘を撮れるんですよ(笑)。10代の女の子を撮りたいとずっと思ってたから。

入江:そうなんですか。おじいさん、おばあさんを撮るのが上手いのは昔から知ってて。本当に、世界的に見てもレアな映画監督だと思うんです。今回も品川徹さんとか、すごく上手い。「こうやって登場させるんだ!」と思いました。でも10代のキラキラした感じ、最後の屋上のところとかは、自主映画時代なら撮ってないんじゃないか。キャリアを積んできたからこそ撮れる境地じゃないかと思いました。

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坪井:2つの作品には共通項がありますね。沖田さんも入江さんも長回しで撮っている。

沖田:たまたま今回の映画が、見せ方の選択肢の一つとしてそういう撮り方をした方がいいかなと。特別に長回しをというわけではないんです。相米(慎二)監督とかいうと言い過ぎですが、若い女の子のああいう感じ、自分が見ていた日本映画の雰囲気がこびりついてて、遊び心というかね。映画自体が教わったことを教えるようなテーマだったので、自分が学んできたことを継承する意味で、そういう方法を取った感じです。

入江:なるほどー。沖田さんの長回しは、僕が今回やっているようなカメラをフィックスで動かさないものが多かった気がします。『子供は~』の、特に学校のところは「あっ!」と思いました。初めて見た気がする。10代の子だから、終わりのところで「全然息が荒くない! 若いってすごい」と(笑)。そういうのがすごく伝わりました。

沖田:あれは3回くらいやって、もうみんな脚パンパンでした(笑)。

入江:今までは沖田さんの方が室内を撮るのが上手くて。昔の『鍋と友達』とか、室内の長回しが上手かったんですよね。

坪井:『おらおら~』もそういうカメラが多いですよね。やっぱりこの2本は共通項があると思います。最後に質問ですが、僕は日本映画の未来は明るい、日本映画がまた面白くなってきていると思っているんです。日本映画はこれから面白くなっていくと思いますか?

入江:なっていくんじゃないですか。20代の頃ダラダラしていた僕や沖田さん、守屋さんとかの映画が映画館でかかるようになり、これから自分たちが作っていけるのかなって気がします。ワクワクはしますね。

沖田:入江くんがこういう映画を作り、パソコンで舞台挨拶しているなんて、昔なら考えられない。そうやっていろんなことが起きてくるのかなとワクワクします。今はコンペもいっぱいあるし、作りたい人がいっぱいいるんだなって。だから未来はすごく明るいと信じてます。

入江:昔、沖田さんに江古田のアパートかどっかで「僕は巨額の製作費は要らないけど、入江くんには100億円あげたらいいのにね」と言われたんです。その言葉で、大作のオファーをもらった時に「やってみよう」と思えたんですよね。「沖田さんが言ってたな、じゃ俺はそっちに向いてるかもしんない」と。

沖田:ハハハ! 金は全部入江くんにあげればいいやと思ってた。

坪井:沖田さんの予言通り、入江さんは大作エンタメの見せ方を確立しているわけですね!

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<おまけ>

入江監督の2016年のツイッターに、こんな呟きを見つけました。これまでもこれからも、きっと一緒に上映が続いていくお二人。今後もそれぞれに素敵な作品を生み出し続けてくださることを願いつつ、レポを終わります!

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『シュシュシュの娘』(入江悠監督)
『子供はわかってあげない』(沖田修一監督)
どちらもまだまだ全国公開中! でもお早めに!

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