見出し画像

日々のこと 0824

ああ、いいなと思える映画に出会えて、それを見ている時間って、すごく幸せなわけで。
そういう映画の取材依頼を受けて、準備のためにその映画についてずっと考える。思い起こす。原作を読む。資料を読む。その間も幸せが続く。
作った人にインタビューしてる間も、取材記録をまとめる間も、原稿書く間も編集する間も、ずっとずっとその一本の映画のことを考えています。原稿をアップして、自分の中でようやく映画が終わる。今、そこです。はあ寂しい。

取材があるすべての映画について、毎回どっぷり浸かるわけでは残念ながらありません。でも個人的趣味と合致すると、やっぱり熱が入る。取材は日常的だし、他の仕事もちろんある。でも心の奥に通低音として流れ続けていたこの映画が終わってしまったことが、とても寂しい。

ずっとずっと考えているうちに、映画は私の中で勝手に育っていってしまう気がします。実際見たら「これがそんなに?」と思うかもしれない。もう一度見たら、私自身もそう思うかもしれない。

一度見ただけの映画を一生懸命思い起こし、それを作った人にどんなことを尋ねるか、演じた人に何を聞くか、考え続けていくうちに、映画は独り歩きする。そうして、私のものになってしまう。自分の中にもともとあった感覚や世界観と、これを見て新しく生まれた感情が結びつき、この世界を思い出しただけでぎゅっと胸が締め付けられる気持ちになる。今もそうです。私の映画は、私のもの。

映画タイトルは『寝ても覚めても』。まさに寝ても覚めても『寝ても覚めても』のことを考えてました。
濱口映画がもともと好きです。これが商業デビュー作。すっかり忘れていた。「あ、デビュー前でしたっけ?」という感じ。

インタビューで、東出さんがとても素敵なことを言いました。完成した映画を見た後で思ったことだそうです。
「個人的な恋愛観でしか語れないけど」と前置きをして「目の前にある川は増水も減水もする、急流もあれば緩やかな流れもある、でも流れ続けているものなんだなって。刹那に感じる寂しさもあれば、刹那だからこその幸せもあるなって」
フツーのことじゃん!と思うかもしれないけど、言われた瞬間、泣くかと思った。
流れていくもの。それ以上でもなく、以下でもない。そういう、目の前をただ通り過ぎていく景色が、私はすごく好きなんです。

tofubeatsの主題歌、とても良いのですが映像が本編ティザーなのでガン見せず、音楽だけを聞いていてほしい。そして映画館で公開されたら、そこで初めて映像は見ると良いかと。
9月1日公開です。

『寝ても覚めても』
監督・脚本:濱口竜介 
原作:柴崎友香
出演:東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、仲本工事、田中美佐子


記事を気に入ってくださったら。どうぞよろしくお願いします。次の記事作成に活用します。