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「ミニシアター、今どうなってますか?」その2 休館直前のシネマスコーレより

東京や大阪など7都府県に続き、愛知県でも4月10日(金)に「非常事態宣言」が出されました。それを受けて名古屋のミニシアター・シネマスコーレは12日に営業を終え、すでに休館中となっています。
愛知では現在まだ開いている劇場もありますが、映画を取り巻く状況は悪化しています。
休館を発表する直前のシネマスコーレで副支配人の坪井篤史さん、スタッフの大浦奈都子さんにも参加していただき、心境をお聞きしました。
(取材日:2020年4月10日)

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坪井:休館は会議をして決定しました。いつまで映画館を開けるか、皆で悩みました。今日この後、発表を出す予定です。

大浦:最初は「翌週いっぱいまでやりたい」と坪井さんは言ってたんです。上映のキリも良い。でも1週間延長しても結局何もやれないかもしれず、日曜までという線になりました。

― 宣言が出てからも、しばらく開館し続ける選択もあったんですね。 

坪井:はい。でもいろいろ聞くと、映画館以外でも営業中の施設に対する風当たりは強いようです。関係ない人から「何を考えてるんだ!」と同調圧力がかかったりする。

大浦:集中砲火を浴びてしまったら、今でさえつらいのに翌週までやるモチベーションを保てる自信がない。週末までなら、怖いけどギリギリ許されるんじゃないかと思いました。
そういう時って、コロナのことを一切知らないかのような困った人も来ちゃうんです。それを相手にするモチベーションもちょっとない、と思ってしまいました。

― そもそもこの状況で営業していることは、劇場スタッフ自身も感染する危険性、不安があるわけですよね。

坪井:そうです。お客さんだけでなく業者とかも含め、不特定多数と絡んでますから、ずっと不安はあります。
休館時期に関しては各劇場いろいろな事情があり、思い通りにいかない場合もある。うちも内部で意見が分かれたし、僕も一晩寝たら考えが変わったりする中で、話し合った結果こうなりました。

― シネマスコーレでは再開時期を発表しないとのこと。非常事態宣言は現状、5月6日までとなっています。もしも延長がない場合、再開するのでしょうか?

大浦:今、それを考えているところです。

坪井:宣言が延長されていくと、難しいです。仮に宣言明けですぐ開館できたとしてどうなるか。少し間を置きたいと僕は思っています。

大浦:劇場が開いたからといって、人の気持ちがすぐ映画に向くかも分からない。

坪井:密閉空間にまた皆が来れるか。宣言が明けた翌日「さあどうぞ」とは言えない。いきなり皆の心が映画には向かないとも思います。行楽や外食には向いても、映画には向かない。ただでさえ映画はそういう文化に入っていないので、無理だと思います。経済力もないのに経費がかかり、またドツボにはまっちゃう。
それに映画は事前の宣伝期間が必要で、それがゼロとなってしまいます。何も宣伝しないままいきなり新作をやっても、お客さんも「何、それ?」となりかねないし、映画が可哀想。
映画館はカラオケボックスやボウリング場とは違い、やってる中身を見て選ぶものだから難しいです。
だから復旧はシネコンの方が早いと思います。『007』をやります! とか言える。我々は存在を知られていないようなミニシアターだし、『タイタニック』とかでない限り、お客さんがついてこれない。やるなら誰もが知る超有名な映画を組んでいくしかないと思ってます。

― 今後に向けた映画館支援も、全国的に広がり始めました。

坪井:そうですね。我々も頑張りますが、援助してもらえるのはありがたいです。支援グッズや募金が首の皮一枚つなげてくれてます。募金の発起人になってくれたのが井口昇監督。みんな苦しいけど、自分が育った場所だと思ってくれている。「スタッフからは言いづらいだろうから僕が前に立ちます」と言ってくれた。嬉しかったです。

大浦:グッズ代を多めに入れてくれて「あとはカンパです」と言う人もいました。現在、私たちも配信など準備してることもあります。今月中に何か始めたいです。

坪井:他の映画館含め「みんなでお互い生き残ろう」というのが、休館中の裏テーマですね。
時間だけは死ぬほどあるから、夏休みだと考えるつもりです。今まで何も考えるヒマがなかったから、いったんリセットしろということかも。
でも映画が好きで映画館で働いて、いざ休みになったら好きなものも同時にないんです。普通は休暇に映画を見に行ったりしますが、神様は両方取り上げた。「映画に行く権利も君にはないよ」と言われたみたい。
自分で映写してスコーレで見るという手もありますが(笑)、でも映画を見るってそういうことじゃない。
リセットしたくなくても勝手にリセットされたけど、普段いつも考えてた「あの映画、お客が入るかな…」とかの不安をなくしてくれたチャンスでもあります。再出発しやすいかもと思いますが、その間に映画館が倒れたらダメですから。休館はなるべく短めにしたいです。

大浦:営業している間、お客さんが入っても入らなくても、やっぱり怖かったです。休館を決めた昨日は、何かあるたびに号泣してました。心が壊れそうでした。

坪井:日常に戻るための休館ならそれでいいんです。一回、日常に戻す作業だと思います。休館してる3週間のあいだ、やれることをやるつもりです。

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劇場ごとにタイムアウトのリミットは違ってきますが、シネマスコーレの場合「1ヵ月でも苦しい。もしも3ヵ月休館が続けば、再開はない」とのこと。
私は前回3/30の記事で「劇場のその後も伝えていく」と書きました。なので、今後もできるだけ発信を続けようと思っています。

全国的にミニシアターを応援するプロジェクトが立ち上がっています。引き続き、どうぞ小さな劇場を見守っていただければと思います。

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●SAVE the CINEMA 
「ミニシアターを救え!」という、映画に関わる人たちの暮らしを守るためのプロジェクトが発足しています。
政府への要望書への署名は、10万人目標で14日(火)が締切。
クラウドファンディング「ミニシアター・エイド」では希望するミニシアターの未来チケット、100本超から選べる映画配信などがリターンです。このラインナップもすごい。

●入江悠監督BLOG 各劇場への支援方法
全国ミニシアターの直接支援窓口リストがまとめられています。


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