鑑賞記録 201807
まだ七月が終わってないけど、今日はとても素敵な映画を見たので「もう今月は何も見ないでいいや」と願望を込めて。もう少し余韻を楽しみたい。とはいえ、七月もあと一日。明日は試写の予定もないし新しいものを入れずにいたい気持ち。
●『泣き虫しょったんの奇跡』
「人生それしかやってこなかった人が挫折した瞬間」の表現が印象深い。音楽もいいなあ。豊田監督と松田さんに取材の時に教わった裏話をひとつ。オープニングが瀬川棋士の手、エンドロールが豊田監督の手だそう。注目。
●『素人斬り お祭りテレクラ野郎』
「お金が欲しい。夫が働いてない」という子持ちの女性。「ダンナさんは学生なの?」「…高校生」という話が興味深かった。セックス気持ちよさそうだったのに、こっそり後で「何をされてもダメだった」と告白してたのが面白かった。画面がぐるっと回ったりするのはハメ撮りだからなんだなあ。考えたことなかった。今まで考えずに済んでた。
●『熟女ムンムン報告書 飽くなき欲望』
城定監督はいつも女性の味方。元気ない時に見ると勇気が湧く。なんでこんなに女心がわかるんだ。劇的に何かが変わるわけじゃないけど、ちょっとだけ違う明日が、いつも描かれる。嬉しい。
●『ワイセツ女子高生 河合桃花』
団鬼六が好き=SM好きって、簡単だなあと思った。
●『君が君で君だ』
松居大悟監督の素晴らしき変態性。好きな相手の見たくない部分、汚い部分も凝視して受け入れる、というのは目からウロコだった。相手が思い通りにならないから苦しむわけで、いっそ受け入れればいいのか。全てに目をそらさないことは可能だろうかと考えた。狂気の池松壮亮。無事か心配になりました。
●『ブリグズビー・ベア』
「軟禁して自分の作品だけを与え、作品と相思相愛の子に育つ」って、創作者にとって理想かも。これもある意味『万引き家族』。他人から見たら極悪犯罪でも、当人たちは案外幸せだったりするかもしれない。
●『スパイナル・タップ』
バンドマンあるある満載。『ラストワルツ』見た直後だったのも良かった。一番面白かったのは、ステージで殻から出られなくなったベーシスト救出の様子を、ハンディカメラで真面目に接写する人を映しているシーン。芸が細かいよ。
●『勇気を出して初めてのAV あなたの欲望SEXで叶えます!』
有坂さんの痴話喧嘩は面白かったけど、脂肪吸引手術シーンがこわかった。手術シーンはやっぱり苦手。女優が監督をする「女性のためのAV」『ローズマジック』のつまらなさ…。まあオチはあるのだけど。
●『ナイルの娘』
台湾映画傑作選で見たホウ・シャオシェン。この特集もっと行きたかった。80年代の台北は、街並みも流行も日本にそっくり。中森明菜が流れるケンタッキーでバイトして「王家の紋章」を読みふける女学生。
●『奥までラブ 青木絵里』
これ面白かった! 売れたいAV女優・青木さんがいろんな現場に挑戦。売れたい根拠は不明。「カッコいい男性しかイヤ」と明言。皆が呆れながらも真面目に付き合うプロっぽさも良かった。本人は意に介さないのも良い。全体が素敵にパッケージングされた構成と映像。青木さん本人が見ても嬉しいんじゃないかなあ。誰も損しないAV。良かったです。
●『アントマン&ワスプ』
シリーズ前作を見たのにすっかり設定を忘れていた。小さくなったり大きくなったりする「モノ」のチョイスが楽しいね。
●『正しい日 間違えた日』
ホン・サンス映画は毎度イライラする。でも見ちゃう。今まで見た中で、イライラ度はこれが一番マシだった。ダメな男のナルシシズムと、誰も悪くないのに「あーあー」という方向へ流れていく会話がイラつくのです。結局どう転んでも、別に正しくも間違えてもないのが面白いね。ホン・サンスめ。
●『Teenage! 10代のきらめきと、いらだちと』
インタビューが二画面分割・同時並行、聞き取れるギリギリ。自分のことばっかりな10代感に溢れたアイデアと思う。一人目の女の子はセックスの間中ずーっと目をぱっちり開けてて驚いた。珍しくないですか? 普通ちょっと閉じちゃうでしょ。私も閉じちゃう。それに比べて二人目の子は、たまにカメラ目線になるのが対照的で面白かった。Teenage Fanclub。
●『少女ピカレスク』
井口監督自身によるコメンタリー上映。数年前に見た井口さんの自主映画で、映画館を出ようと思ったのが一本だけある。実際の事件を思わせる残虐暴力描写が、私はどうしても無理だった。それと似た描写がありました。
コメンタリーで良かった。どういう気持ちでそれを撮ってるか聞けたから。
●『青春神話』
ツァイ・ミンリャン監督、台湾傑作選。爽やかな青春は皆無。バイクと孤独と絶望と不安。ゴキブリが何匹も出てきたのも象徴的。アガったのは、初めてテレクラの店内全景を見たことです。個室内映像はいっぱい見たけどな。システムの説明シーンもあり「そうなんだー!」と思いました。
●『カメラを止めるな!』
面白かった。内田けんじ監督を思い出す。応援しています。
●『クレアのカメラ』
ホン・サンス再び。イザベル・ユペール&キム・ミニが並ぶ図、スゴイですね。しかしホン・サンス的な映画監督おじさんに、またイラッとする。「俺のキム・ミニ」を自慢したいのか。でも最高にかわいく撮れてるのは事実ですよね。
●『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』
テニスの映画を初めて見たかもしれない。「女は好きだが、台所と寝室だけでいい」かー。もう何でもスポーツで決めたらいいじゃん。みんな納得するよ。わりと本気でそう思ってしまった。
●『マイ・ブルーベリー・ナイツ』
ウォン・カーウァイ特有の「しめり気」がなく、苦手な人も見やすいのでは。逆にそれが物足りないのも分かる。西洋の美しい人々が演るとこんなにも美しい。三組の男女が出てくるんだけど、三人とも「待つ男」。たまらないですね。悲しい気分の時に見ると本当に泣ける。今はピッタリ。
●『パパはわるものチャンピオン』
プロレスラー棚橋弘至さんのドキュメントかと思い込んでたら全然違った。悪役レスラーの子どもが、父の職業を知った時。我が子に言いたくなさそうな職業は他にもあると思う。それは現実では、どういう決着をつけていくんだろうか。
●『輝ける人生』
長年連れ添った老夫婦、友人と夫の浮気が発覚。ショック受けるも離婚を言い渡される妻…。というところから始まります。「広瀬すずと福士蒼汰でやれば売れる」と言ってる人がいたけど、それじゃ意味ないよ。人生をここまで歩んできた人だから良いんだよ。素晴らしい映画でした。
●『マンマミーア!ヒア・ウィ・ゴー』
ABBAの「ダンシング・クイーン」はそれだけでテンション上がりますね。名曲。
●『寝ても覚めても』
『PASSION』『ハッピーアワー』の濱口竜介監督。途中で突然「あっ、ここから濱口竜介キタ!」と感じる箇所があった。なぜかは分からない。見てる時も、見終わってからも、ずっと泣くのをこらえていた。号泣ではない。ただこらえるのがふさわしい気がする。なぜかは分からない。もう少し余韻に浸ろうと思います。
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