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日々のこと 1118 ジャクソンハイツ

仕事が予想より早く終わり、これはチャンスとワイズマンのドキュメンタリーを見に行った。『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』は三時間以上もある長尺の映画で、予定調整が難しい。

少し前に『Search/サーチ』という映画を見た。練り込まれたギミックと同じくらい私が面白かったのは、多種多様な人種が当たり前のように出てくることだった。アメリカ映画だし、珍しいことではない。でも主役はイケメンでも美女でもない韓国系のおじさんとその娘。娘の友人たちも白人だったり黒人だったりする。監督はこれがデビュー作というインド系アメリカン、27歳。アメリカは視界が広くていいなあと思った。

『ニューヨーク~』は、世界中から移民が集まり、167もの言語が話されている町・ジャクソンハイツを映したドキュメンタリーだ。
「町」は「人」でできており、人は「生活」や「営み」でできているんだなあ、と改めて思いながら見ていた。少しでも暮らしを幸せに近づけたいと思うのは誰しも同じ。そのためにコミュニティに属したり神に祈ったりボランティアをしたり、歌ったり踊ったりして暮らす人々により、町は形づくられている。どこかの国からやってきた人たちは、それぞれが町に根差し、暮らしに根差し、そこにしっかりと根を張って「生活」をしようとしていた。わが身を振り返り、ちょっと恥ずかしい気持ちにもなった。

映画館を出てスマホの電源を入れると、メッセージがあった。映画を見ている間に、母が倒れて救急車で運ばれていた。
妹夫婦、その子どもたちと動物園へ遊びに行った母は、一日を皆で楽しく過ごし、帰宅した瞬間に意識を失って倒れたという。
前日までの母はいつも通り元気だったはずだった。でも私は三時間超えの映画なんて見てる場合じゃなかったみたい。そこからはバタバタと時間を過ごした。結論からいうと母は意識も戻り、いろんな検査もし、夜になって無事に帰された。

もはや70代になる母が、このまま帰らぬ人になる可能性も考えた。すでに親を亡くした友人知人はたくさんいる。両親が健在な私はラッキーなだけ。いつでもふわふわと暮らし「わが身がちょっと恥ずかしい」なーんて、のんきなことを言ってる場合ではなかった。

「親孝行したい時には親は無し」「いつまでもあると思うな親と金」とか、よく言ったもんだ。その通りすぎる。昔の人は天才だ。てか、ずうっと昔から全員そう思っているのに、上手くできないから今も困り続けてるんだろう。

「生活をする」とは、身の周りにあるものや、いてくれる人たちを大事にすることだと私は思う。日々のおざなりを、丁寧に扱うことだ。
難しいことじゃない。難しくないのに、すぐ忘れてしまう。たとえ紙に書いて大きく貼り出しても、見ないふりで忘れてしまう。けど、忘れる人は、何度でも書かないとダメだよね。

ジャクソンハイツの街角には、いい音楽がたくさん流れていた。あの人たちも、今夜もう寝たかしらと思う。
私も寝るよ。おやすみなさい、また明日。

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