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『EUREKA/ユリイカ』トークレポ@センチュリーシネマ

青山真治監督追悼特集『EUREKA/ユリイカ』デジタルマスター完全版
仙頭武則さん(プロデューサー)・斉藤陽一郎さん(俳優)
(2022.07.31)

今年3月、57歳で他界した青山真治監督の特集上映が、名古屋・センチュリーシネマで開催中です。217分の大作『EUREKA/ユリイカ』(2001)上映後、本作プロデューサーの仙頭武則さん、秋彦役の斉藤陽一郎さんが登壇。大入りの客席を前に、同館の稲垣支配人と共にトークを行いました。

仙頭:名古屋の大学で教員をしていますが、センチュリーシネマ支配人は私の教え子で、青山が死んだ時に泣きながら電話をかけてきて『ユリイカ』をどうしても劇場でやりたいと。今日一番喜んでいるのは彼女だと思います。

斉藤:今朝、宮崎あおいちゃんからメールが来て「今日、仕事終わりに行こうと思ったんですけど名古屋なんですね!」と。来ればいいのにと返したんですが(笑)。お客さんに良い時間を過ごしてもらえればと言っていたので、皆さんにお伝えしておきます。

仙頭:1999年の現場ですよね。この映画に関わった人間は、未だにやり取りしている。

斉藤:そうですね。仙頭さんとは『Helpless』から、25年くらいのお付き合いです。

仙頭:最近は、とよた真帆の指名により青山の遺品整理をしてます(笑)。

斉藤:ものすごい数のDVDと本の山を5人で掃除するのが最近の仕事です。

仙頭:青山はそういう蓄積の中で映画を作って「俺は24時間映画のことしか考えてない」と最後まで言ってました。

斉藤:急に降りてくるものじゃなく、日常を過ごす中で常に考え続けているという話をしてましたね。

仙頭:3時間37分のこんな映画はまさにそうしないと、行き当たりばったりでは作れません。本当に緻密。最初は5時間半あったんです。「ここから俺はどうしたらいいか分からない」と青山が言い、行ってみたら5時間半あった。

斉藤:青山さんは舞台挨拶で必ず肩掛けバッグを持ってるのが定番でした。あれは『Helpless』の最後、浅野君のラスト。だから青山さんの舞台挨拶を見る度に「あのバッグにはヤクザの腕が入ってる」と妄想してしまう。今日は僕もバッグを持ってきて『ユリイカ』の台本を入れてきました。カットされたシーンが意外と多くて、5時間半になるような内容なんです。国生(さゆり)さんに会いに行く前、沢井さんがどっちのネクタイが良いか、梢と秋彦に聞くというシーンもある。僕が殴られた後にとぼとぼ歩いて「あ、ラジカセ」という台詞もあり、実は撮ったんです。

仙頭:編集方針としては、5時間半では長すぎて話が分からないということで、真ん中まではサスペンス。そこから再生の物語と、2つに切り替えてつなぎ直しました。それで君のところはカット。

斉藤:5時間半バージョンは見れないんですね? ないんですね。

仙頭:ない。青山は1コマにこだわる編集ですから。1秒間24フレーム、24分の1を切るか切らないか。あおいちゃんが振り返る最後を切るか切らないか。1コマって人間の視覚には多分捉えられない。それを「どうしよう、もう一回チェックしてくれ」「え、もう一回3時間半を見るの?」。その1コマを見るために、フィルム時代だから場所も用意しないといけない。それを繰り返しましたね。そういう作業をしました。

仙頭:君は役者側から見てどうだったんですか?

斉藤:まだ経験も少なく、右も左も分からない時でしたが、何かとんでもないヤバイことが起きているのは肌で感じました。バスに乗って旅をすればするほど、演じるというより本当に旅をしてる感じになっていき、作品の中にいるだけで成立すると感じさせてもらえる作品でした。後にも先にも、本当に幸せな時間を若い時に過ごさせてもらったなと。
当時、光石(研)さんとか役所さんとかはお酒飲んだりしてましたが、僕はあおいちゃんと(宮崎)将君、(尾野)真千子を引き連れ、近所のスーパーでアイスを買って。僕は29歳でしたが、子どもたちの相手係になってました。さっき袖から見てただけで、この夏に戻っちゃう。一瞬で戻ります。

仙頭:今日もどっかに座ってるような気がするけどな。「陽一郎、もっと気の利いたこと言えよ」とか。

斉藤:今日『ユリイカ』初日の舞台挨拶の映像を見てたら、青山さんが「皆様のご感想が私の明日への糧になります」と。それは今も有効だなと思いました。今、ちょっと青山さんの姿が見えなくなってますが、皆さんのご感想が青山さんの明日への糧になると思ってます。青山さんの映画を見続けていただければそれが全てで、私たちの糧にもなります。

仙頭:追悼とは言いたくないですが、秋から東京で映画祭などいろいろな上映が企画されています。青山作品をここからもう一度始まりにしたいと思っています。応援よろしくお願いします。

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北九州、圧巻の217分の旅路。トークの冒頭、今日が初見という人が大半だと知った稲垣支配人が「スクリーンで初めて見られて本当に良かったですね!」と顔をほころばせていましたが、全く同感です。人生ベストに挙げる人も多い『ユリイカ』、ぜひ巡り合えることを。

2022/07/29(金)-08/04(木)
青山真治監督追悼上映センチュリーシネマ
8/1 『EUREKA/ユリイカ』14:00~
8/2-4 『Helpless』20:20~


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