見出し画像

スタートアップSaaS企業でSalesforce構築する前に知りたかったこと

この記事はBizOpsアドカレ 7日目の記事です。 前回はSalesOps Lab.
mikihiko_doさんによる「私の考えるSalesOpsと、SalesOps Lab.の目指すところ」でした。

こんにちは!みやの / 宮野 功晟 です。
音声認識技術をベースとした事業を展開するRimo合同会社のプロダクトマネージャーをやっています。

今回は、BizOpsに関するアドベントカレンダーということで、Rimo合同会社が2021/10に導入して今もフル活用している「Salesforce」について、ゼロから構築して運用を回した経験から得た学びをシェアできればと思います。

特に、成功談として語られやすい
「これをやったら売り上げが3倍に上がった」よりは
「これを知らなかったから時間を浪費した」
「色々考えたけど、結局これが一番重要だよね」
のような、もっと早く気づけていれば労力を省けたであろう点にフォーカスして、3つほど取り上げます。

読んだ方の感想
公開後、素敵な感想をたくさんいただけたので、いくつか貼らせていただきます。



Rimo合同会社は、「はたらくを未来に」をビジョンに掲げて、Google出身エンジニアの相川が2019/9に立ち上げたAIスタートアップです。(従業員数は2023年12月時点で10名、副業や業務委託を含めると50名程度)

1時間の会議を5分で議事録化する「Rimo Voice」を2020/9にリリース後、現在利用アカウント数は12万アカウントを突破、多岐業界の企業様に活用いただいております。

Rimo売上高推移(リリース後〜2023年9月)

Rimoの顧客データや契約、売上数値といったあらゆる営業情報の管理は、サービスリリース後の約1年間は、すべてGoogleスプレッドシートやNotionを使っていました。
一方、顧客数の急増とともに、メールや架電といった商談記録の入力ミスが増えてきたのに加えて、請求書発行に手間がかかる、レコード数が多すぎて売上データの読み込みに数十秒かかる等の問題がネックになり始めました。

その解決策として、Salesforce、Hubspotを含む複数のSFA/CRMを検討し、最終的にSalesforceを導入したのが2021/10になります。
それ以降、全ての営業情報をSalesforce上で一元管理しています。

それではさっそく、本題の3つの学びをあげていきます。


1) 少人数で回せる運用まで詰めるべし

いわゆるBANT情報などSalesforceに色んなヒアリング項目をもたせることで、リッチな顧客情報を蓄積しようとするのは良いのですが、やたら多くなりすぎると、入力する現場営業にストレスが溜まって、なかなか軌道に載らないです。

特に初期フェーズのスタートアップでは、一般的なSalesforce構築論だけじゃなくて、2,3人など少人数でできる運用まで詰めないと、ワークしないと思います。

例えば商談フェーズがそうです。

Salesforceさんの商談フェーズ

Salesforceさんがデフォルトで定めている商談フェーズは営業視点でわかりやすく素晴らしいとは思うのですが、実際にやってみると商談フェーズが02や03あたりで全く動かず、フェーズ推進できない案件が大量発生することがありました。

おそらく大企業のように、豊富に営業経験があり営業マネージャーも多数存在する組織だと、問題なく推進できると思います。

一方、経験の浅い営業メンバーがいてマネージャー自身もプレイングしているスタートアップだと、同一フェーズの大量案件の中に優先度が高い案件が埋もれてしまい、なかなか運用が難しいんじゃないかと思ったりします。

なので、商談フェーズとしては
「初回商談実施済み」
「2回目商談設定済み」
のように、顧客行動ベースの客観的フェーズを定義したほうが、未経験の営業メンバーでも迷わないし進めやすかったです。

このように、項目一つとっても「なんか使いづらいな」「この項目もほしいな」「これ必須項目にする意味ある?」とかが絶対出てくると思うので、そういった現場の営業メンバーの意見を日次、遅くとも週次で反映するのが重要です。

私自身もその重要性に気がついてからは、日次で平均7商談を実施しながら、毎日Salesforceの項目やフロー設計を見直していました。

実際に営業に入って定例会議やってというふうに、営業をやってる人間が構築するか、営業活動に伴走して運用を回していかないと、現場営業にストレスが溜まりすぎて、うまく回らなくなると考えています。

2) データ入力のヌケモレは放っておくべし

Salesforce構築をやると「みんなデータ入力してくれないな」と悩むことがあります。
結論として、Salesforceの入力漏れを指摘するのは時間の無駄だと思っています。
入力しても売上は上がらないし、貴重な営業リソースを逼迫するだけだからです。

少し古いですが、マーキンゼーが2021/2に出したレポートでも、日本企業は営業メンバーが直接の顧客対応以外に時間をかけ過ぎていることが課題として挙げられていました。

マッキンゼーによる営業員の時間の使い方サーベイ結果

また仮に入力されたとしても、そのデータは営業メンバーによる主観情報かつ一定入力ミスもあるので使い道は意外と少ないです。
SFAへのデータ入力にこだわるよりは、リソースが限られているスタートアップなら1件でも多くテレアポ・商談したほうが良いと思います。

データ入力のヌケモレにこだわりすぎた例でいうと、ネクストアクションのヌケモレを、slack通知で担当者へのメンションつきで飛ばしたところ、ネクストアクションの期限設定を伸ばす動きが出てきてしまい、本質的には意味がなくなりました。

私自身、Salesforceへのデータ入力とその強制に体力をすり減らして初めて気がついた学びです。

1日に7商談とかやっていると、商談の中身が、1日の終わりに多少抜け漏れることがありますが、弊社の営業活動では、自社サービスRimo Voiceで全商談を自動zoom連携→全文文字起こし→自動要約していて、後からタスクとサマリを10秒程度で確認できるようにしています。
人が入力した主観情報と違って信頼性も高く、営業業務をさらに効率化しています。

ちなみにどうしても入力してほしい場合は、Salesforceの内容を使って営業メンバーのKPIやKGIの数値評価をするのが良いと思います。

例えば受注や失注時の報告についても、slackで報告をもらうのではなく、必ずSalesforceをハブにするということです。

・Salesforceで受注に倒したら、slackに自動で受注報告通知が飛ぶ
・Salesforceで更新漏れが15日以上続いたら自動失注となり、slackに自動で失注報告通知が飛ぶ
あたりを実施すれば、営業メンバーの評価に直結するので、きちんと更新してくれるようになります。

営業の仕組み化が進んだら、受注率や受注確定単価といったKPIをslack通知するのも良いでしょう。

Salesforceの営業KPIをslack通知

3) ビジネス判断に用いる数値は早めにダッシュボード化するべし

「今月の売上は今いくら?」
「来月は高確度ヨミまで入れてどれくらい積み上がってる?今期の目標は達成できそう?」
「平均単価って上がってるの?」

スタートアップSaaSのビジネスシーンで考えると、このような問いに出くわすことは、比較的よくあるのではないかと思います。

これに対して「今はわかりません」「来週までに集計してきます」はもったいないです。

というのも、スピードが命のスタートアップで、1週間、経営層の意思決定が遅れると、開発速度低下や事業計画策定の遅れで相当な機会損失が発生します。

特にSaaSなら、追うべきKGIはほぼ決まっています。

マーケティング:予算、リード件数/単価、商談件数/商談化率/単価、受注件数/受注率/単価/ROAS
セールス:目標額、総MRR、NewMRR、期待NewMRR(確度別)
カスタマーサクセス:NRR、解約率、UpsellMRR、DownSellMRR

なので、これらの数値をリアルタイムに追えるダッシュボードは早めに整えたほうが、経営レベルのビジネス判断がしやすくなるでしょう。

Salesforceダッシュボード

一方で、このダッシュボード設計まわりは、データリテラシーを持った人材が、実際に営業現場や定例に同行して構築したほうが良いです。

具体的には
・可視化に適したデータテーブルの持ち方
・表記ゆれやデータ重複削除といったデータクレンジング
・ETL処理によるデータウェアハウス更新
あたりは、エンジニアリングやデータ構造を一定理解している人がやらないと、データが使い物にならなかったり、むしろ邪魔になってしまうケースに繋がりかねないためです。

ちなみにダッシュボードだけTableauやLooker Studioに切り出すのも1つだと思います。ただ、コスト制約があるスタートアップであれば、まずは標準ダッシュボードで出来る限り見える化するのが一番ROIが良いと考えています。

このへんのダッシュボード設計は、語り始めると長くなってしまいそうので、今回の記事が好評だったら、次回以降に書かせていただきたいと思います。


ここまで読んでいただきありがとうございました!

究極的にSFAはただの箱なので、使う人の力量によってROIが大きく変わるツールです。
日本経済の活性化のためには、そんなSFAを使いこなして、数値を元に正しいビジネス判断とアクション管理ができる人材が不可欠だと思っているので、皆様と情報共有して一緒に知見をブラッシュアップできると嬉しいです。

またRimoでは、Salesforceを活用しながら、一緒に営業や戦略策定、実行をやってくれる人材を募集しています。
ぜひ、今回の文章を読んで興味を持ってくれた方は、一度お話しましょう〜
話すだけでも大歓迎です!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?