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研修トレーナーだった私が「研修へのアンチテーゼ」を唱える理由

私が見てきた「研修の落とし穴」

私は現在、アクションラーニング型の組織開発プログラムを通して、企業の組織開発、個人のリーダーシップ開発をお手伝いする事業を生業としています。かつては研修トレーナーとして活動してきた私が、この仕事にたどり着いた背景には、「研修で学びが得られても、成長するのは難しい」という葛藤がありました。

みなさんの中にも、数年前に受講した研修に対して「何を学んだか思い出せない」「いまの業務では一切活かせていない」と感じている方も多いのではないでしょうか。

このように変化や成長に繋がりにくい理由には、「研修の落とし穴」が潜んでいます。

人を育てる手法=研修とは限らない?

多くの企業には、「人を育てる手法=研修」という暗黙のルール、それを当たり前とする風潮があるように思います。

しかし、これまでのキャリアで研修事業に携わってきた私は、必ずしも研修だけで人が育つとは思っていません。

というのも、たとえ研修で学びを得ても、一過性のもので終わってしまうことがほとんどだからです。

例えば、私がビジネススクールに勤めていたころのことです。

スクールの受講生のなかには、具体的な活用イメージもなく単位を取ることが目的化していたり、講義で用いる他社の事例は緻密に分析できても、自社を取り巻く経営環境の分析や自分の業務には全く活かせていなかったりと、勉強すること自体が目的化している人が多く見受けられました。

また、研修トレーナーとして担当した案件では、受講生が職場に戻ると、学びを全くを活かせていないというケース(クレーム?)が少なからずあったことを覚えています。

どんなに良い学びを得ても、職場で活かせず忘れてしまえば、成長には繋がりません。

また、「人を育てる」という表現が使われますが、育つかどうかは本人次第。誰かが「育てる」ものではなく、本人の気づきや行動によって「育つ」ものだと私は考えています。

経営や人事が「研修を受けさせれば人は育つ」と研修を目的化してしまうことにも、警鐘を鳴らしたいと思います。

研修後の「なるほど、わかった!」が危ない

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研修を受けても成長できない理由。それは、「学び(わかる)」と「成長(できる)」の壁にあると私は考えています。

特に危ないのが、研修を受けた際の「なるほど」「わかった!」という満足感。みなさんも、一度は経験があるのではないでしょうか。実際には「わかる」と「できる」には大きな壁があるにも関わらず、多くの人は「わかる」と「できる」を混合してしまうのです。

わかりやすく、車の運転を例に考えてみましょう。

運転に関する「知識を得る」ことと、実際に「運転できる」ことには、大きな隔たりがあります。例えば、ウィンカーを出すと知っていても、最初は意識しなければできません。無意識にできるようになるためには、繰り返しの走行練習が必要ですよね。

ビジネスシーンにおける「学び」と「成長」もこれと同じです。

多くの研修で得られるのは、「知る・わかる」ところまで。その先の「できる(=成長)」というフェーズに至るには、職場でのトライ&エラーも必要なのです。

与えられた学びは、行動に変わらない

これまで紹介してきた「研修の落とし穴」の背景には、「与えられた学びは行動に変わらない」ことが挙げられます。

当たり前ですが、研修で使うテキストには間違ったことは書かれていませんし、講師も間違ったことは言いません。研修内容について理解や納得感は得られるかもしれませんが、かといって実践や行動に移せるかといえば、話は別。

現状の研修システムでは、知る・わかるの先にある「行動を起こす」までは担保できていないのです。

だからこそ、本人が自ら気づき、行動することが重要だと考えています。

与えられた学びは行動に変わりにくい。その一方で、人が自ら気づいたこと・やろうと思ったことは、行動に変わりやすい傾向があります。

実際、「これをやるように」と他人に指示されたことよりも、「この方法でこれを達成したい!」と自ら考えたときの方が、実践・行動に移しやすいですよね。

ただ「学び」を得て終わるのではなく、それをきっかけに、自分の潜在意識から掴み出される「気づき」を得ること。そして実践・行動に繋げること。

これが、個人の成長には非常に重要なのです。

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“人が育つ”環境をつくる「組織開発アプローチ」

私は現在、株式会社クエスチョンサークルという会社を立ち上げ、問いを用いた組織開発プログラム「クエスチョンサークル」を展開しています。このプログラムには、かつて研修トレーナーだった私が感じてきた違和感や物足りなさを解消し、「気づきや学びを行動や変化に変えたい」という強い思いを込めています。

もちろん研修の価値を完全に否定するつもりはありませんが、成長や変化に繋がりにくい従来の研修システムや「研修だけで人が育つ」という固定観念に対する「アンチテーゼ」でもあると思っています。

繰り返しになりますが、成長のためには研修での学びに終わらず、職場での実践・行動に接続することが重要。しかし、研修を受けても、職場で学びを実践する機会を持てなかったり、組織の慣習・カルチャーに馴染んで変化できなかったりするケースが、往々にしてあるのが現状です。

この状況を変えるためには、「個人を育てる」にとどまらず「組織(=職場)を変える」というパラダイムチェンジが必要です。

だからこそ、クエスチョンサークルでは組織開発アプローチとして個人と組織の双方にアプローチするとともに、学びと行動(実践)の機会を組み合わせた「アクションラーニング」という問題解決プロセスを導入しています。

このような組織開発プログラムはまだまだ定着していないのが現状ですが、個人と組織を変化させるきっかけづくりのために、今後より広めていきたいと考えています。

人は、気づきや行動によって自然と育つもの。ぜひマネジメント層や人事の方々には、“人を育てる”のではなく“人が育つ”環境づくりとして、組織開発アプローチを視野に入れていただければ嬉しいです。


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