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夕暮れと二人乗り

一つ前のバス停で降りて少し散歩をしようと思った。まだ、ぼんやりと明るい街の中を私はコートに手を入れながら歩き進んでいた。

市が運営しているスポーツセンターの前を通ると、部活終わりの中学生がたくさんいた。これから一緒に帰るのだろうか、亀のように首をネックウォーマーへ縮こませている学生もいた。私はそれを流し見て歩みを進めた。

私の横を車が何台も通り過ぎる。トラックが通り過ぎると風が冷たい。私は一瞬後悔したが、少し遠くに見えるショッピングセンターのネオンが目に入ると、後悔の心はどこか消えていった。夜空とも言えない静かな空に、騒がしく光る人工の光がなんだか好きだった。

歩いて10分くらい過ぎた。体も温まってきて、私はコートのポケットから手を出して歩いた。それからもうしばらく進むと、行ったことのない薬局が見えてきた。私は特に欲しいものもなかったけれど、立ち寄ってみようかと思った。

その薬局の近くで、二人乗りの練習をしている女子中学生か女子高生の二人組がいた。キャハハと笑いながら全く進まないペダルに足をかけてる。度々笑い声が、冬の綺麗な空気をよく伝って私の耳に届いてきた。

私の心はなぜか満たされた。ずっと進まなければいいのに、と思いながら私は薬局へ向かっていった。





過去記事紹介!

内定ブルーのお話です。


まだ、悩殺というハンドルネームで活動していた頃の記事です。この頃はまだ学生で、4月から働かなくてはいけない、という状況でした。懐かしいなあ。もう1年働いてますよ、結局。

人間の適応力はすごいですね。

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