「なろうっぽい」という雑ラベリングの様相

Web小説投稿サイト「小説家になろう」の作品まわりで、あまりよくない茶化しのニュアンスから「なろう系」「なろうっぽい」というフレーズがふりかざされる時がある。
「っぽい」だから必然、雑なイメージによる雑なラベリングにならざるをえないわけだが、その雑さの原因はいくつかの行動類型にまとめられる。

・そもそも「小説家になろう」サイト現物を確認したことがない
・サイトを覗いたことはあるが作品の現物を読んでみたことがない
・なろうのカテゴリの幅も歴史もふまえず「男性向け異世界転生ファンタジー」という特定ジャンルでしか想像できていない
・商業書籍化された範囲しか認識していない
・コミカライズしか知らないのに原作小説やなろう全体を総括しようとする
・アニメ版しか知らないのに原作小説やなろう全体を総括しようとする
・「なろうについての他人の言説(SNS上の大喜利など含む)」に乗っかることしかしない
・他の投稿サイト産や商業オリジナルなど細かく整理するのが面倒なのでひとまとめに「なろう」呼びでくくる
・悪質まとめサイトの設けたアングルに無邪気に乗っかっている
・トレンドの把握が一、二周遅れている(上に挙げた、商業メディア派生コンテンツでしか認識しないこととつながりやすい)

これは例えばかつて「エロゲっぽい」「ラノベっぽい」という言葉によってそれらがさらされたのと公約数をもつ雑さだろう。他にも「マンガっぽい」「アニメっぽい」あるいは人的属性で「オタクっぽい」「中二病っぽい」「腐っぽい」その他諸々なんでもいいが……ひとが嗜む多くの分野は、大小いくらかの強度で雑ラベリングの試みに遭うさだめにある。

ある分野のいっぱしの向きが、貴方それ自分の守備範囲でそういう雑なこと言われたらふつーに怒りますよね!? と思えるたぐいの勝手総括や大喜利をしているのを見るにこれはプロ・アマ、作り手・ユーザーがどうこうではなく誰にでも問われる了見の問題なのだろう。

もちろん人はあらゆる分野に(とくに深い興味があるわけでもない分野に)そうそう詳しくなれるわけではない。よほど必要なければざっくりした把握に留めるのは効率的な処世ではある、ではあるのだが。
頭の中でいびつにふくらませたイメージに毒されて、心おきなくバカにしていいと思った対象へ心おきなく石を投げつけるより前に、ちょっとした保留をつけてみるのは何事においても有用ではなかろうかと思うしだいである。

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