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中国の若者は今何に悩んでいるのか?

若者に悩みが多いのは、日本も中国もそしてどの国でも変わりません。ただ、今まで経済成長が右肩上がりで好調だった中国では、突如視界が暗くなり始めたこともあり、若者の悩みもより切実に顕在化しつつあるようです。特に現代の中国の若者が悩んでいること、それは3つに集約されます。当然こうした悩みはどの国の若者にも存在するものですが、今日は特に中国の若者にフォーカスして簡単に紹介してみたいと思います。

中国の若者3つの悩み、それは

1.就職の悩み
2.結婚の悩み
3.子育ての悩み

です、以下それぞれについて詳しく書いてみます。


1.就職の悩み

中国は改革開放政策の開始以来、経済は破竹の勢いで伸びてきました。その爆発的な成長の恩恵を受けて、多くの若者が仕事をみつけ、また給料も順調に上昇してきました。転職はすなわち給与の上昇を意味し、給料をアップするために転職を繰り返すことも普通のことと考えられてきたのです。

ところが、コロナの流行以降、中国の経済成長には暗雲が立ち込めてきました。要所要所の経済指標や指数は力強い成長を維持しているとメディアでは報道されるものの、実は数年前から現場レベルでは就職難が言われてきたという実情があります。若者は、仕事をみつけるのが難しくなっているのです。

もちろん、一部にはこんな声もあります「贅沢を言うな、選ばなければ仕事なんていくらでもある」と。それは確かにその通りで選ばなければ仕事は山ほどあります。外卖の配達員、レストランの店員、工事現場仕事等、むしろこうした業種では万年人手不足であり、企業も人を求めているからです。

ただ、子供の頃から死にものぐるいで勉強勉強勉強で生きてきて、やっとそれなりの大学に入学をした若者たちが、仕事が無いからといってこうした業種や職種に向かうかというと、中国ではそれはあまり起きないと思います。本人もさることながら、まず親が許しません。中国の両親の子供の教育にかける情熱は日本の比ではありません。子供の頃から相当な投資をして育てた子供がレストランの店員になることは親が許さないという中国の現実があります。

本人のプライドと親の反対。安い給与では駄目、周りに自慢できない職種では駄目。中国の若者はこうした八方塞がりの状況で仕事探しに日々悩んでいるのです。

2.結婚の悩み

結婚する際には、新郎側が家と車を用意しなければならない。そういう決まりが言われるようになってきたのはいつの頃からでしょうか。実はこうした決まりは決して伝統的なものではありません。考えてみれば、中国で自家用車が本格的に普及してきたのはここ10年のこと。なので、新郎の家車付き絶対条件というのは最近定着した習慣なのです。

かわいいかわいい娘を嫁にやるなら、それなりの男と結婚して欲しい。親なら誰しも思うことですが、こうした思いが物理的、金銭的要求に容易に転嫁するのが今の中国です。そしてそうした情報がネットには満ち満ちています。「~さんは結婚の際、新婦に1,000万元の豪邸、100万元の高級車、新婦の両親に結納金50万元をプレゼントした」というようなニュースをみない日はありません。

もとよりこのような事例は特殊で極端だからこそニュースになるはずなのですが、SNSで拡散されると伴にこの最大値(特殊例)が、平均値(普通のこと)になってしまっています。かくして、いつの間にか結婚するには数百万元の元手が必要と誰も思うようになり、新郎はお金で悩み、新婦は条件で譲らずとあっては、結婚はとてもハードルの高いものとなってしまいました。

愛があればとは言いますが、このとんでもないコストは愛であってもそれを乗り越えることが難しい金額になりつつあります。こうして多くの若者が愛し合う一生の伴侶という存在がありながら、果たして結婚して良いものかと悩み続けているのです。

3.子育ての悩み

現代中国において子育ては、不動産や株、信託等と同様に親からみれば一種の投資というふうに考えられています。生まれた頃からものすごいお金をかけて子供を教育し、良い学校に入れ、良い会社に入ればいつか自分たちの老後にリターン(分红)が帰ってくると考えている親は殊の外多いのです。

かつては多くの親が考えるように、学歴は将来の成功を約束していました。良い大学に入ればそれは即良い就職先を意味する時代が以前はあったのです。しかし、今ではそうした学歴信仰は夢物語となってしまいました。どれほどお金をかけて良い学校に行かせたしても、必ずしも良い就職先にありつけるとは限らないのが現在の中国です。

英国に院生として留学までした子供が、中国に戻って月給13万円程度で働いているという現実は、親にとっても受け入れることができないものかもしれません。先程言ったように、子育てを投資だと考えてみればこの投資は大きな失敗ということになってしまうでしょう。

一方で中国は激烈な競争社会、投資のリターンが低いからと言って、周りの子供が死にものぐるいで勉強しているのをみながら自分の子供だけこの勝負から降りるなどという選択は相当の勇気がある親でなければできないことです。とはいえ、どれほどお金をかけたとしてもリターンは微々たるもの、あるいはゼロかもしれないとわかっていながら、この終わりの無いレースをいつまで続けるのか?と中国の多くの親は毎日悩んでいます。


いかがでしょうか。中国の若者は悩んでいます。一人っ子政策の申し子として、子供のころからただひたすら必死に親の言う事を聞いて勉強し、誰よりも努力をして大きくなった結果、目の前には就職、結婚、子育てとどう考えても解決がつかないような難題が立ちふさがっているのです。

昨今、中国における未婚化、少子化が言われています。メディアや諸先輩は「甘い、自分たちが若い頃は食べ物すら満足になかったのだ、死にものぐるいで努力さればなんとかなる、選ばなければ仕事なんていくらである」と若者に対して批判的な言葉を向けますが、今の若者たちが、改革開放政策開始以来最も「無理ゲー」に挑まされている世代であることは確かなのではないでしょうか?

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