見出し画像

第3回 おさえておく人や組織(クライアント2)

中国で20年会社を経営し、その後売却した筆者が中国における企業経営に関するよもやま話を綴るシリーズ第三回。

前回、日本人である以上、中国で起業すると自然クライアントは日系企業が多くなるという話をした。自国びいきというのもあるが、一番大きいのはコミュニケーションの容易さが一番の大きな理由といえる。

というわけで、私が作った会社も変動はあれども基本的には日系企業がメインクライアントであった。ここでいう日系企業というのはより正確に言えば、二種類に分類される。一つは日本企業の日本側部署、そしてもう一つは日本企業の中国側法人である。

ある程度の企業であれば、日本側にも海外事業をケアする部署が設置されており、こうした部署が我々の主要なクライアントになることが多かった。特に、クライアントが中国市場に進出したばかりのころは、海外拠点の規模も小さいため、この海外事業担当部署が現地法人の経営、予算、采配等も主導権を持っていることが多く、2010年代前半くらいまではこうした海外事業部署とお仕事をすることが多かった。

そして、もう一つは日本企業の中国側法人であり、これは簡単に言えば現地法人である。一般的には、董事長、総経理が日本人、そして社員は中国人ということになる。もちろん企業の規模が大きくなれば、部署の部長が日本人であることも多く、一方で現地化が進んでくれば総経理が中国人ということも珍しくない。2010年代後半からは、こうした現地法人との仕事が増えていった。

さて、日本企業とのお仕事であるが、当然ながらメリット・デメリット両方が存在する。

メリットとしては、私が日本人でありそのため会社は日系企業に分類されるため、クライアントからもある程度安心、信用されることが挙げられる。進出したばかりの日本企業の場合、調査等を行っているとはいえ現地の事情を完全に把握しているわけではないため、現地の情報に詳しい会社(特に日系であればなおさら)、現地に住んでいる日本人(特に中国の人と結婚していいる等であればなおさら)は便利な存在であり、たくさんの仕事を回してもらえる。

特に、董事長や総経理等のトップ層が日本人の場合、トップ営業がかけやすく、営業効率も非常に高いということもあるだろう。

また、ビジネスの進め方や支払いの方法等、基本的には日本式のため、トラブルが起きにくく(起きないわけではない)、安心して仕事を受けられるという点も重要なポイントと思われる。

つまり簡単にまとめると、日本企業をクライアントとするメリットは

・信頼、信用されやすい
・日本人同士で営業がしやすい
・ビジネス作法が日本式でやりやすい

という三点になる。

ただ、メリットは逆にデメリットにもなり得る。日系企業も進出当初は日本人主導で物事が進むとしても、時間が経てば(特に大企業ほど)現地化が進み、中国人スタッフがビジネスを回すようになる。海外事業部の権限は次第に縮小され、現地法人が独自の判断で経営を行っていくようになる。結果、日本人、日系であることのメリットはむしろデメリットになってしまうのである。

日本企業をクライアントとするデメリットはすなわち

・現地化が進むと日本人ではコミュニケーションが難しくなる
・トップが中国人になるのでトップ営業が難しくなる
・次第にビジネス作法が中国化し日本人、日本式では対応が難しくなる

という三点になる。

端的に言えば、時代の流れとともに、私が立ち上げたような日系のサービス業を主体とする企業はニーズが無くなっていったということになる。

更に言うと、中国市場における日系企業のプレゼンスも時代の流れとともに小さくなる傾向があり、その意味でも我々の会社にとっては市場のパイはどんどん小さくなっていったと言えるだろう。

2015年頃、世の中は爆買いブームで盛り上がり、会社は業績も増収増益を続けていたが、すでに少しずつ顕在化していた、日本人、日系の強みが活かせなくなり、また日系企業の中国市場でのプレゼンスの低下で市場のパイが小さくなっていくという時代の流れの中で、私は会社を継続していくことについて次の道を考える必要があったと言える。

次回は、日系サービス企業として日系クライアントにサービスを提供するうえでの私が感じたことや、ポイントについて書いてみようと思う。

つづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?