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【feat.大塚リョーマ】『金閣寺』とクレしんを語る、我々が出したケツ論は【読むラジオ『もっとトークへ』 Vol.5】

みやまる(以下みや):毎度お馴染み、流浪の読むラジオ『もっとトークへ』でございます。え〜最近では、同人のゲームはインディーゲームとも呼ばれ、自作のゲームをNINTENDOスイッチのストアにも……。

大塚リョーマ(以下大塚):大塚リョーマです、よろしくお願いします。インディーゲームの話はいいとして、なぜタモリ?

みや:……髪切った? ……泣いて馬謖、斬った?

大塚:こないだの『タモリ倶楽部』の上坂(すみれ)メタル回はよかったね。

みや:改めまして、みやまるです。リョーマくんは、「自分でゲーム作りたい」って思ったことある?

大塚:小学高学年のころに『RPGツクール』いじったり、オリジナルの手書きのカードゲーム友達と遊んだりしてたよ。

みや:ビジネスにする・しないは別として、かなり夢のあることだよな。ゲーム作るって。リョーマ少年の作ったRPGはどんな作品でしたか?

大塚:ストーリーが作れなくて、ひたすらキャラとアイテムのデータとダンジョン作ってたよ。データ作るのがメインでバランスとかは全然勉強してなかったね。かっこいい名前のめちゃくちゃな武器ばっか作ってた。

みや:案外そういう名前とか、設定考える時間のほうが長くなっちゃったりね。……それでも俺が大学時代に作った『白鵬VS稀勢の里』より面白そうだ……。

大塚:相撲!? それはそれでアツいよ。相撲愛があるなら。

みや:カード6枚(それぞれ「投げ」「押し」になってる)でやるジャンケンなんだけど、勝ち負けの関係性のカード以外だと、力士のパラメータで取組が進むゲームでした。……流石にアクションアニメとか作れないから、テキストで進むんだけど、「相撲を字だけでながめても……」ってなっちゃった。

大塚:ユーザーインターフェースをスポーツ新聞みたいにしたら面白そう。是非公開していただきたい。お互いの黒歴史はこの辺で。『もっとトークへ』、始まってますよ。


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大塚:お互い紹介したいものを、ひたすら話して聞いてもらうコーナーです。今回はみやまるさんから。

みや:今回はちょっと変化球です。NHK『100分 de 名著』の三島由紀夫の『金閣寺』の回を見てから、小説を読んだ話。


みや:『100分 de 名著』はEテレでやってる伊集院光が本を紹介する番組ですね。タイトルの通り、25分の番組だから、4回かけて1冊の本を読み解いていきます。

大塚:僕もたまに見ますが、伊集院さんがいい感じに一般の目線で考察してくれたりね。

みや:伊集院さんはこういう「教養バラエティ」みたいのに、よく出てるけど、やっぱり“橋渡し役”みたいのがすごい上手いよね。
   100分っていうと、大学の講義1コマよりちょっと長いくらいだけど、テレビ番組で「1冊100分」っていうのはかなり贅沢な時間の使い方だと思う。やっぱり文学・読書ってかなり向き不向きがあるから、きっかけみたいなものが多いほうが絶対良いんだよ。その点この番組は遠回りをする分、そうしたきっかけが随所に散りばめられてると思うね。

大塚:『金閣寺』本編のほうはどうでしたか?

みや:『金閣寺』は「信仰」の物語だね。主人公の溝口の金閣への美が、宗教における神仏のように、自分のなかで1対1の信仰の対象になってる。俺は遠藤周作の『沈黙』が好きなんだけど、『沈黙』のように確固たる信仰じゃなくて、かなりそこに揺らぎもあるんだよ。

大塚:今回この話をやるにあたって、自分もあらすじを確認したけど、溝口はかなり周りからの影響に流されやすいよね。そもそもの金閣への憧れも父親の影響だし。

みや:金閣を燃やすっていうのは、『沈黙』の最後に司祭のロドリゴが踏み絵を踏んでしまったように、自分の手で自己を形成したものを、滅ぼしてしまうという意味では共通している。
   それでも人間、生命が続いている限りは人生が続き、自分の意思とは関係なく前へ進んでいく。これをどうとるかは読者次第だけど、ある側面では生命や人間の根底にある力を、とても肯定してると捉えることもできるんじゃないかな。

大塚:ラストの<生きようと私は思った>も、肯定的にもとれるし、救いがないともとれるもんね。

みや:人間速さばっかり求めちゃダメ。特に読書はそうだと思う。そのかわり時間をかけただけちゃんと得られるものもあるし、そもそもわからなくたって全然良いんだから。
   スポンサーありきの民放でこういう作りの番組は難しいかもしれないけど、そこはNHKの強みとして続けてほしいね。

みや:それじゃ、リョーマくんの話を聞きますか。

大塚:オレの話は。『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』


大塚:クレヨンしんちゃん劇場作品29本目です。ジャンルは「本格(風)学園ミステリー」です。

みや:しんちゃんの映画! 埼玉出身としても嬉しい。予告編を見た感じだと、今回は風間くんにもスポットが当たってる感じにも見えますが。

大塚:毎度おなじみカスカベ防衛隊のメンバーが風間くんの誘いで全寮制・AI学習・ポイント制のエリート校「私立天下統一カスカベ学園」、通称・天カス学園へ一週間体験入学することになります。ポイントを稼いでエリートコースを進みたい風間くんに対していつも通りおバカをやるしんちゃんたち。
   途中で喧嘩別れしちゃうんだけど、直後に風間くんが学園に現れるという怪人に襲われておバカな人間になってしまう。しんのすけたちは「カスカベ探偵倶楽部」を結成し、怪事件の謎に迫ります。

みや:風間くんも災難でしたな。「学園」と「ミステリー」というベタなジャンルふたつをかけあわせてますが、しんちゃんたちカスカベの5人組はどう料理してますかね。

大塚:エリートになりたいけど、みんなとずっと友達でいたい風間くんが物語をガンガン動かしてて、まあ感動しちゃったね。落ちこぼれ生徒会長、ワイルド生物部部長、影のある先生、天才ギャル、ゲストのFUWAちゃんと、色とりどりの魅力的なキャラクターが並ぶなか、真の「ヒロイン」は風間くんでした。

みや:風間くんってあの5人のなかでちょっとウザい感じでありながら、心のどこかでトリックスターたるしんちゃんに憧れてて、いちばん人間くさい感じもするんだよね。

大塚:漫画本編の番外編で、小学校に進学した『エンピツしんちゃん』ってのがあるんだけど、そこではもう風間くんはお受験でひとり進学校にいってるのがわかっちゃってるのね。それを踏まえたうえで、今回の話がまあしんどかった。
   しんちゃんはもう25年も”永遠の5歳児”なわけだけど、いつか友達と別れ、親元からも離れるんだと思うと、自分は子どもいないけど、親御さん目線でみちゃいましたね。

みや:「PTAが見せたくない番組」なんて言われてた時期もあるけど、人気を落とすことも無くずっと続いたのは、やっぱりしんちゃん好きな人多いってことだろうし、ケツだけ星人の向こう側にある深さを、みんな感じ取ってくれてるってことなんでしょうか。

大塚:話の流れとしては、きちんとミステリーはやって、ミステリー面白かったねー、じゃあ、今から涙腺決壊させるゾって感じです。クライマックスの「青春ラッシュ」は是非映画館で観てほしい。


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みや:ベタだけど「ケッキョク、この曲!」という音楽の話をするコーナーになります。今回のテーマはわたくしから。「知ってる限り一番バカな曲」です。
   ニンゲン、バカになることの方が大事。特に歌なんてプリミチブな行為なら、なおさらです。ということでリョーマくんお願いします

大塚:BUMP OF CHICKEN『星のアルペジオ』。


みや:……ちょっとタイムリーな人選になっちゃったか?

大塚:一部週刊誌ネタはおいといて。シングル『車輪の唄』のカップリング、それも隠しトラックになってます。普通に再生しようとすると聞けない仕様になっています。

みや:BUMPのこういう、ネジがちょっと足りない曲は『いか』も有名ですね。

大塚:『三人のおじさん』とも迷ったけど、アタマ空っぽ感からこの曲にしました。ギタリストの増川弘明さんの、実際のエピソードを基にした切ないクリスマスソングです。

みや:途中の受話器の音が前時代的なモノになりつつある感じも、なかなか歌詞に相まってカナシイですね。

大塚:タイトルに反してアルペジオは一切使われておりません。

みや:「披露できなかった」という見方も出来るな……。時代は変わろうとも、「クリスマス男子シングル」になっちゃうヤツは今後も現れ続けるんだろう。

大塚:中学生のころ休み時間にCDラジカセ使って遊んでて、その時『カルマ』とかの流行もあって、友達と休み時間中ずっと隠しトラック聴きながら大合唱してましたね。そんなバカな思い出も含めて選びました。

みや:BUMP第一世代だからな。俺らは。結構この曲を題材にしたフラッシュアニメも出てきたけど、youtubeとTwitter以前のネットって、明らかに今と違うノリだったよね。

大塚:まだインターネットで公式MVとかを共有できない時代に、フラッシュ倉庫でお手軽かつ爆発的に流行ったんだよね。

みや:BUMP、もう「古典」になってきた……


大塚:
では、みやまるさんのほうを。

みや:サザンオールスターズ『天国オン・ザ・ビーチ』。


大塚:サビだけピックアップして流れてるのをよく聴くけど、歌詞確認したらけっこうな下ネタ歌ってるよね。

みや:2014年発売の『東京VICTORY』という曲のカップリングですが、割とこの曲で音楽番組に出たり、MVも制作されたりと“露出”の多い曲です。
   これ2014年ってことは、そんなに昔の曲じゃないんだよね。「バカ」「エロ」は桑田さんのお得意の分野だけど、サザン活休(2008)→食道癌を患うも、紅白にて復帰(2010)→サザンも再開(2012)を経ての、この曲なんですよ。

大塚:ずっと元気というか、「お盛ん」というか、そういうイメージがあるけど、そうした経緯があったのね。

みや:それでもなお、おバカでエロい桑田佳祐はやっぱりすごい。「濡れ場」の曲が何曲かあるミュージシャンは少なくないと思うんだけど、ここまで振り幅が広いのは桑田さんだけでしょ。

大塚:歌唱力とバイタリティーで、全部納得させちゃうからね。

みや:俺はいま、現役の日本語文学者の頂点に立ってるのが桑田佳祐だと思うし、同時に2位以下に大差をつけてると思ってる。それでもバカを忘れない姿勢は「かくありたい」と思うね。

大塚:リスペクトがすごいですね。

みや:そして実はこの曲、エロ以外にも歌謡曲界の先輩たちへのオマージュもいっぱい入ってるし。そうした“粋”なところも。

大塚:なんだよー、真面目なところに繋げるのかよー。今回「一番バカな曲」ってシンプルなテーマで選ぶのすごい迷ったのによー。

みや:一番バカだし、一番バカをやるためには、それをやるインテリジェンスがなきゃできないんですよ。


大塚:「読むラジオ『もっとトークへ』」、エンディングのお時間です。

みや:さっきの2曲とも「お尻」が歌詞に入ってますね。なんかしんちゃんと繋がっちゃったな。

大塚:尻出してると間抜けってイメージが、深層心理にあるんですかね。

みや:あ、『タモリ倶楽部』のオープニングも……。

大塚:……ケツのケツ論はまた今度。結構最近過去の回で紹介した作品が、メディアで取り上げられることも多くてね。
前回「盆踊り」ってテーマでフィロソフィーのダンスの曲を紹介したけど、メンバーの佐藤まりあ、十束おとはが『A&Gリクエストアワー阿澄佳奈のキミまち!』(文化放送)にゲスト出演した際のリクエストテーマが、「『ボン』に関するアニソン」だったり、以前紹介した『十三機兵防衛圏』のセールが始まったりして。

みや:リョーマ側ばっかりですなー。果たして総理大臣が辞めるって言った日(「ケッキョック…」のコーナー以降は9/3に収録)のやりとりは、このあとなにかを生み出すのか。このラジオはみやまると。



大塚:大塚リョーマがお送りしました。……またみれば?


(文中一部敬称略)

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