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優雅で感傷的な日本野球

(初出:旧ブログ2015/11/14)

 印象的な題名ゆえ本の存在はずっと前から知っていたけど読んだのは最近。ピースの又吉直樹が獲り逃した三島由紀夫賞の第1回受賞作。

題名については松井秀喜や大谷翔平が青少年の模範となりダルビッシュ有や岩隈久志へ女性ファンから憧れの眼差しを注がれる「優雅」な面の一方で、選手や監督、オーナー(ここは実名出そうと思ったけど語弊があるので止めた。各自で想像して下さい……)の失言やスキャンダルといった週刊誌的な部分も実はちょっと楽んでいるような「感傷的」な部分もあり、良し悪しを抜きにそれら全てを含めて愛すべき「日本野球」ということを表してるのかなと推測してるけど……考えすぎ?


 野球に関する断片的かつ幻想的な短編を7つ収録。2章目の『ライプニッツに倣いて』が特に面白い。極度のスランプに陥った名選手が同僚のエースピッチャーからの助言に従ってライプニッツの単子論をスランプ脱出のヒントにしようとする。榎本喜八・イチロー・内川聖一というような"天才肌の安打製造機"というイメージで読んだ。徹底的に理屈っぽく、自らの哲学をもってしてスランプに向き合っていく姿が何とも言えない愛嬌がある。再びバットコントロールを良くした彼が記者に秘訣を聞かれ「ライプニッツ先生の単子論を参考に……」と記者を困らせてる物語の続きが目に浮かぶ……、う~ん、やっぱりイチローっぽい。

#野球 #本 #小説 #レビュー #高橋源一郎

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