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5.「探究する精神」大栗博司 著[感想]

「探究する精神ー職業としての基礎科学」
大栗博司(幻冬舎新書・2021)

これからの人生で、愛読書として大切にしたい素敵な本でした。
学ぶこと、思考すること、人生に真摯に向き合う姿勢を教えて頂きました。

本との出会いは、タイミングが本当に重要で、とにかく私は、今、学びたい熱が高まっていて、そこにグサリと刺さった感じです。

先生の半生を辿りながら、自分のこれからの生き方をイメージしつつ読みました。

著者の大栗先生は、1962年生まれ。アメリカと日本を拠点に研究をされている物理学者で、学問的なことは分かりませんが、それでも素人でも驚くほど、もの凄い量のお仕事をこなされています。

そして、その根底には、「自分の好きな職業を選んだ者の責任」があるように感じました。

冒頭に、展望レストランから地平線までの距離を三角法で出そうとした、幼少期のエピソードが語られています。先生は、その頃の真理を突き止めたいという純粋な気持ちを、複数の研究所の所長をされている現在に到るまで、ずっと持ち続けていらっしゃいます。

先生の素晴らしいのは、一流の研究者としての探究心と、抜群のコミュ力の両側面をお持ちという点です。これが、先生を最強の無敵キャラにしていると考えられます。
この両方のレベルが、おそらく途方もなく高く、そのために多くのプロジェクトに参加され、それぞれで重要なポジションにつかれていると推測できます。
まるで、両側に腕がどんどん伸びていくやじろべのバランスを、絶妙に取りながら、いろいろな事を抱えてらっしゃるようです。

先生の思いは、一貫していて、「自分は研究者という好きな仕事をさせてもらっている、だから世の中に相当のお返しをするのは当然」というお考えではないかと思います。
常に、感謝の気持ちをお持ちなのが伝わってきます。
そのため、上の世代から研究を引き継いだ科学者として、下の世代にに対する教育にも責任があるとお考えでしょうし、後半に書かれている、日本の大学教育に関するご意見も、そこから生まれているのだと思います。

この本は、挿絵がまた素敵で、宇宙を知りたい、解き明かしたい純粋な子供の好奇心が楽しげに描かれていて、そこもまた、ワクワクポイントです。

50を過ぎた私ですが、今後は自分なりに学び、好奇心を持って思索し続ける生き方をしよう!との思いを、強くしてくれた本です。


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