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読んだメモ: Distributed Scrum: A Case Meta-analysis

こんにちはこんばんは。スクラムマスターの いのもえ です。

薦められて "Distributed Scrum: A Case Meta-analysis" という分析を ChatGPT に手伝ってもらいながら読みました。今回はサマリや気付きをメモしておこうと思います。

本文はこちらから読めます!


内容のサマリ

取り扱っている仮説

この調査では分散型スクラム(≒リモートワーク下でのスクラムチーム)を対象に以下の大きな仮説を検証する中で、それぞれの問題についても小さな要素に分割し、問題との関連性を検証しています。

大きな仮説
成功するソフトウェアプロジェクトでは、以下の問題が少ない
1. コミュニケーションの問題
2. 調整の問題
3. 管理の問題
4. 文化的な問題
5. 信頼の問題

コミュニケーションの問題に関する仮説
1. コミュニケーションの問題は 拠点の数、時差、スプリントの長さに正比例する
2. コミュニケーションの問題は 同期されたスクラムイベントが実施されること、 done の定義が共有されていること、プロジェクト管理ツールを利用することで低減される

調整の問題に関する仮説
1. 調整の問題は 拠点の数、時差、同期されたスクラムイベントの数、総スタッフ数に正比例する
2. 調整の問題は done の定義が共有されていること、プロジェクト管理ツールを利用することで低減される

管理の問題に関する仮説
管理の問題は 総スタッフ数、拠点の数に正比例する

文化的な問題に関する仮説
文化的な問題は拠点のある国々の内、最も差異が大きい国同士の差に正比例する。差異を測る観点: 文化力の距離、個人主義かどうか、男らしいかどうか、不確実性の回避をするかどうか、長期志向であるか、寛大かどうか

信頼の問題に関する仮説
1. 信頼の問題は スタッフの総数、スタッフの分散の不均衡、拠点の数に正比例する
2. 信頼の問題は done の定義を共有すること、拠点同士を訪問すること、同期された振り返りの実施で低減される

仮説検証の結果

それぞれ統計的に以下のような結果が出ています。

  • 大きな仮説: 「文化的な問題」はプロジェクト成功には関係ない(有意差がなかった)

  • コミュニケーションの問題に関する仮説: いずれにおいても有意差が見られなかった。ただし、拠点の数については調査対象チームが 2-4 拠点をもつチームに偏っていたため、問題数に関係があるかもしれない。また、スクラムオブスクラム(SoS)を取り入れることで問題が発生しづらくなるという有意差が見られた

  • 調整の問題に関する仮説: いずれにおいても有意差が見られなかった

  • 管理の問題に関する仮説: いずれにおいても有意差が見られなかった

  • 信頼の問題に関する仮説: いずれにおいても有意差が見られなかった。ただし、done の定義を共有することについてはサンプル数が少ないながら  p 値が高めであるため、信頼向上に寄与する可能性がある。

またこれらの結果から「分散型スクラムはプロジェクトの成功を阻害する 4 つの問題を改善する方法ではないため、プロジェクトの成功率を高める証拠はない」と結論付けています。

個人的にポイントだと思ったこと

  • SoS を取り入れることでコミュニケーションにまつわる問題が減ったこと

  • 拠点数の数や同期したスクラムイベントの数、スタッフ数がコミュニケーションや調整の問題に影響しないこと(直感的には多くの人が関わるのだから問題が大きくなりそうですが、分析の結果関係がないとされたのは驚き)

私見

  • SoS はスクラムマスターが各チームの窓口として振る舞うこと推奨される記事が多いため、チーム全体の自己管理能力が育ちにくいデメリットがあると私は考えています。一方で、コミュニケーションの問題の低減には効果があるとわかったため、スクラムマスターではない人が窓口として振る舞ったり、窓口をローテーションすることによって一挙両得を実現できるかもしれない

  • プロジェクト成功という観点においては同期的なスクラムイベントが意味をなさないことはわかったが、学習やチームビルディングの観点では意味があるのではないか?気になる!

  • この一説にハッとさせられました。やっぱり目的や効果を理解して実践するのが重要ですね。

Some practices associated with agile methods may deliver substantial benefits when used appropriately (which may involve tailoring to the context at hand). Rather than thoughtfully adopting practices supported by evidence, we often observe a cargo-cult approach: teams adopting Scrum practices such as the daily stand-up without appreciating their purposes or underlying principles, leading to developer frustration and misplaced critique that the practices “don’t work.” Pair programming, for example, has limited uptake despite a substantial base of supporting evidence (cf. Zieris [172]) while daily stand-ups are ubiquitous despite no clear evidence that their benefits outweigh their drawbacks. Other teams adopt a performative approach;

Distributed Scrum: A Case Meta-analysis - 6 CONCLUSION

フルリモート環境下での LeSS を実践する中で、「フルリモートだからこういう問題が起こるのかな?」と思うことがありますが、今回の調査を読むことで、問題とフルリモート環境が関係ないのだと知ることができました。それと同時に、「オンサイトでのスクラム実践」が銀の弾丸のように見えてしまっていたのだなと反省しました。

リモートワークでのスクラム実践もコロナ禍によって多くなったと思うので、もっとリモート環境でのプラクティスが増えるといいですね。私もどこかで貢献できるといいな。

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