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【連載小説】ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい[#175]閑話10 ピクニック

ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

閑話10 ピクニック

※時系列は、リリアンが冒険者になった年の夏。シアンが町に帰ってくる前です。

================= こんな天気の良い日には、皆でピクニックに行こう。
 誰からでもなくそんな話になって、皆が笑顔で頷いた。

 メンバーはデニスさん、マーニャさん、ニール、アランさん。さらに今日は久しぶりにミリアちゃんも一緒だ。
 あまり町を出る機会のないミリアちゃんの身支度に付き合っている間に、デニスさんがロディさんの店に昼食用のパンを買いに行ってくれている。それ以外の準備は、そういう事にすっかり慣れたニールが請け負ってくれた。

 王都から1時間と少し歩いた所に今日の目的地の大きな湖がある。それなりに暑い季節だし、水遊びをするのも楽しいよね♪

 湖の畔にいい枝ぶりの大木があって、まるで私たちの為のように日差しを避ける場所を作ってくれていた。そこに大きな敷物を敷いて荷物を広げる。まだまだ昼食には時間が早い。

 男性陣は湖で魚を釣るそうで、アランさんが人数分の釣竿を用意していた。ニールは釣りが初めてだそうで、えらく興奮している。喜んでるのはいいんだけれど、そんなに騒ぐと魚が逃げちゃうよ?
 マーニャさんはすでに大木に寄りかかる様に座ってくつろいでいる。今日は持参した本を読むつもりらしい。

 私はミリアちゃんと狩りに行く約束をしている。
「え? ミリアさんも冒険者登録しているの?」
 ニールには意外だったらしい。

 確かにミリアちゃんは子供の頃に足を怪我しているから、全力では走れない。
 でもそれは獣人としての全力であって、人間の全力と同じくらいの速さでなら普通に走れる。ミリアちゃんも肉食系獣人なのだから、たまにはこうして獲物を追って体を動かす方が、いい気分転換になるのよね。
 こういう時の為だけでなく、一人で生きていく為にもと、デニスさんたちに勧められて冒険者登録をしたそうだ。しかも15歳になってすぐに、Eランクまでは上げてあるのだと。

 ミリアちゃんは完全獣化は出来ないけれど、半獣化までなら出来る。二人で運動がてらヤマキジやホーンラビットなんかを追う予定だ。

 ヤマキジを3羽捕まえた所でキイチゴの実を見つけて、二人で持てるだけ摘んで持ち帰った。湖での釣果もそこそこだったようで、昼に1尾ずつ食べられるくらいは釣れたそうだ。

 マーニャさんはお皿やパンやサラダを並べて、皆が食べる場所を準備してくれている。
 ミリアちゃんと1羽だけヤマキジを捌いて、持参の野菜とスープを仕立てた。その間に男性陣が魚を串に刺して焼いてくれた。

 皆で食べるご飯は、本当に格別なんだ。ちょっと暑すぎるくらいの、でも良い天気のお日様の下で、キラキラと光る水面を眺めながら。皆で食べて、笑って、色んなおしゃべりをした。

 お腹が膨れると、今度は皆で水遊びをした。この為にちゃんと水着も持って来ている。
 ミリアちゃんと二人で水着に着替えて水辺に行くと、ニールが顔を真っ赤にさせて目を見張った。
 色違いでお揃いのセパレートタイプの水着にしたのだけど。ミリアちゃんと私では明らかに体型が違う。凹凸の少ない私と違って、スタイルが良くて可愛いミリアちゃんの水着姿に見惚れるのは当然だろう。

 そこへマーニャさんが水着姿でやって来ると、ニールだけでなく皆の目が釘付けになった。
 えっと、大きい……

 つい隣のミリアちゃんと目を合わせた。
「……やっぱり男の人って、大きい胸が好きなのね」
 そう私にこっそり言うもんだから、二人でくすりと笑った。
 ミリアちゃんだってそこそこあるんだけどね。私とは違って。

「早くこっちに来いよー!!」
 唯一、マーニャさんに気を取られていなかったデニスさんが、湖から声をあげた。
 振り返ったニールにデニスさんが水を掛けると、それが開始の合図のように、皆で激しい水掛け合戦が始まった。

 子供の頃の様に一日中遊び回って、でも帰り道には「腹が減ったなー」なんて当たり前のようにいつもの会話をしている。
 まだヤマキジは2羽残っている。『樫の木亭』に持ち込んで、から揚げにでもしようか。

 ふと、風が呼んでいるような気がして足を緩めた。
 いや気のせいだろう。
 視線をまた前に向けると、皆がわいわいと話をしながら歩いている。その後ろ姿を見ながら何時かの帰り道を思い出した。

 ああ、良かった。皆が笑っていて良かった。

 あの時あんな事がなかったら、今の私も居なかったのだろう。
 おそらくなんて事のない、ちょっとした偶然の巡り合わせがいくつも重なって、今の私を作っている。
 こうして皆と過ごす事が出来て、大事な仲間が出来て、今の私も幸せなんだろう。

 そう、通り過ぎた風に願った。


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