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チンチラ転生 第19話「もう一度」

チンチラ転生~前世でチンピラだったはずの俺がチンチラに転生!こうなったらモフモフな可愛らしさでのし上がってやる!~

第19話「もう一度」


「あら、早かったのね」

 まるでからかうような、半笑いの女の声がした。

 気が付くとリュウは、スナックのカウンターに座っている。
 顔を上げると、ピンクの派手なドレスを着たママが笑いながら俺を見ていた。

「え? お前は誰だ? みずきは?」
「やあねえ、私はそんな名前じゃ無いわよ。飲み過ぎたんじゃない?」

 そう言われて手元を見る。ちゃんと人間の手だ。
 その手にはしっかりと、琥珀色の液体と氷の入ったグラスが握られている。

 ああ、俺はこの店で飲んでたのか?

 わけわかんねえ。
 どういう事だ? 俺がチンチラだったなんて…… 酔っぱらって夢でも見てたんだろうか?
 そんな事を考えながら、手元のグラスをおもいっきりあおった。

 ブフッ!!
 これ、酒じゃねえぞ! 麦茶じゃねえか。

「うふふふ、お行儀が悪いわね」
 ママに笑われた。くっそーー

「死んでいるんだから、いくら飲んでも酔えるわけがないじゃない」
「やっぱり…… ここは天国か?」
「まっさか」
 そう言って、ママは俺のグラスに麦茶を継ぎ足した。要らねえって。

「前回あなた、ここで大暴れしたのよ。早く戻せーって。でも順番待ちだからすぐには無理よって言ったら、なんでもいいから戻せって。で、俺はチンピラだってうるさかったから、似たのにしておいたのよ」

 な、なんだそりゃ。覚えてないぞ。

「ちなみに、生まれた時から前世の記憶があると、面倒な事になりがちだから、大人になったら記憶が戻るようになってるわ」
「大人?」
「正確には時ね」

「目覚め……?」

 (きゅぽっ)

 あ・れ・か……!! まじかよ俺!!

 ママの顔を見ると、俺を見てニヤニヤしてやがる。知ってやがるな!くっそーー!!

「お、おい! また戻りてえって言ったらどうなる?」

「うーん、人間はまだ無理だけど、寿命の短い動物にならいけるわね」
「……チンチラは?」
「いいけど、なんでまた?」

「またチンチラになれば、みずきに会えるかもしれねえ」
 きっと俺が死んでみずきは泣いてる。

「でも今チンチラに転生しても、大人になって記憶が戻るのって5~6カ月くらい後よ?」

 なんだそれ! そんなに長い事待てねえよ!

「面白そうだから、少し時間を遡ったところに生まれ変わらせてあげるわ。でもその代わり、どこに行くかは運しだいよ」
 ママはフフフと笑うと、俺に向けて人差し指を向けた。

「女神ちゃん、大サービスぅ♪」
 視界が白い光で覆われた。遠ざかる意識の中、ママの最後の言葉だけがうっすらと聞こえた。


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【『チンチラ転生』第1話から読む】

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