デイサービスは、なぜ苦しいのか?

新型コロナウイルスにより、世界中があらゆる影響を受けています。
社会活動・経済活動は制限され、学校は軒並み休校、行政機関も稼働を最小限にしています。
医療現場で、自然の猛威・人間の利己性と戦っていらっしゃる方々に心からの感謝をして本題に入りたいと思います。

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業態の持つ特性

さて、コロナ禍において、高齢者介護の分野でも悲痛な叫びが聞こえてきます。
高齢者への感染リスクや三密必須の業務において、現場職員のプレッシャーと恐怖は計り知れません。

しかしながら、一口に「高齢者介護」といっても、”業種”によって捉え方と影響は様々です。

ー施設系(有料老人ホーム、特別養護老人ホームなど)
 :とにかく「ウイルスを持ち込まない」
 :大きな建物の中に「実際に生活されている」利用者さんがいるので、1人感染すれば大型のクラスターになりかねない

ー訪問系(訪問ヘルパー、訪問リハビリなど)
 :【介護業界最後の砦】として、利用者さんに密着したサービスを行なっている
 :三密業務はもちろん、自宅から自宅へと移動するので、感染とウイルス運搬のリスクが半端ない

そして、

ー通所型(デイサービス、デイケア、リハビリ)
 :施設内の専門設備、専門スタッフの元で生活改善できる
 :外出機会の創出

介護に詳しくない方でもお分かりになると思いますが、
上記三つの業種の中で、まず一番に利用控えが起きるのが「デイサービス」です。

施設系は、そもそも入所しているので「自宅」を同じような捉え方になり、「訪問型」は最低限の生活を送るために必要な機能になっているので、「自宅にいる状態を維持する」ことが目的とも捉えることができます。

一方で、デイサービス・通所系は、「最低限の生活+α」の意味が多分に込められているので、”そこまでしなくてもいい・・・”との利用者さんやご家族の気持ちが反映されやすくなっています。
デイサービスの休業が4月後半時点で全国の約1割に達していることも、この事情に関連していると思われます。

感染予防が難しい

一般的に「感染予防がしっかりしている」のが介護施設としてのあるべき姿ですが、それは「100%感染しない」とは意味が違います。
他業種(娯楽施設、公共施設、飲食店)などに比べ、感染リスクが高い人を受け入れているため、感染対策を多少厳しめに設定している、といった程度のものです。

例を出しながら、「デイサービスの感染経路」について考えていきたいと思います。

・一日利用定員20名:全登録利用者40名
・職員1日7名:全職員15名
とすると、

<利用者に関わる感染経路>
・利用者家庭が平均3人世帯(国内平均が2.47 2017年厚労省)
 3×40名=120名
 ーそれぞれが仕事・施設利用(1日10人を濃厚接触の場合=1,200名)
 ー1週間で1,200名×7日=8,400名

・職員家庭が平均3人世帯(国内平均が2.47 2017年厚労省)
 ーそれぞれが仕事・施設利用(1日10人を濃厚接触の場合=1,200名)
・通勤公共交通機関を利用(1日10人を濃厚接触の場合=1,200名)

・・・書くのが疲れてしまいました。。

と、「通所型」であるデイサービスは関係する人数がかなり多いです。
というか、専門家でも正確に追えないんじゃないかと思います。
小規模の施設であっても、1週間に数千人、数万人との濃厚接触が考えられます。

いくら施設内で感染予防をしたとしても、「潜伏期間」で「無症状」なままの利用者さんあるいはご家族、職員、関係者と接触してしまえば、免疫力が弱く感染リスクの高い利用者さんはひとたまりもありません。

収益構造が「博打」

続いて、「お金」の話です。
介護・福祉の業界ではお金について敬遠されがちです。

「人のための仕事であって、お金のための仕事ではない」
そんな意見も多いと思います。

しかし、よく考えて見れば、”どの仕事もそう”だと思いませんか?
「お金」は手段や価値交換のツールであって、「目的」ではありません。

「人のための仕事であって、お金のための仕事ではない」
それは全ての仕事において言えます。

同時に、「お金」はその業界にも当てはまる「手段・ツール」と言えます。

介護士の皆さんも、「お金、なし」と言われれば大暴動が起きてしまいます。

介護事業にとって「お金」は「目的」なのではなく、「なくてはならないツール」なのです。

前段が長くなりましたが、

介護事業における「お金事情」

について書いていきます。

介護事業において一番の収入源は「介護保険」による収入です。
というかむしろ「介護保険による収入のみ」なんです。

もちろん「自費」での収入も一部ありますが、
・介護保険収入における自費分(1割・2割・3割)
・食事料金(飲食業ではないので、利益率が高いと行政機関になんか言われる)
など、デイサービスにおいて微々たるものです。

また、小規模多機能型(デイサービス、訪問ヘルパー、ショートステイが一つになったもの)など、一部「月額制」のものを除いて、従量性つまり「利用した分だけ」が収入になります。(キャンセル料を導入している施設も多くあるが、取りすぎは社会通念上批判の対象となる可能性もある)

そして、その介護保険による収入は「制度によって完全に単価が決まっている」のです。

つまり、介護事業における「デイサービス」のお金事情は、

・介護保険のみに頼っていてポートフォリオとして成立していない
・従量性により「利用数」によって変動しやすい
・制度によって単価が左右される
・売上の上限が決まっている

といった性質があるのです。

しばしば「介護保険で飼い慣らされている仕事」と言われます。
確かに、僕たちの仕事は「行政の委託」的性質を多分に含んでおり、制度の成り立ちを見ても、「社会インフラ」というよりも「措置」という方がわかりやすいかもしれません。(実際に成り立ちはそうです。)

しかしながら、自費での単価も自由が効かず、
制度や社会の風評によって利用数や収入が決められているのも確かです。

僕は政治家でもないし、活動家でもありません。
制度への不満を言えばいくらでも言えますが、それらは「ポジショントーク」の域を脱することはできません。

すぐに変えろ、変えてやる!
とは言いません。

ただ、わかって欲しい。
知って欲しい。


現場で、必死に利用者さんに向き合っている介護士のことを。

「お金なんて自分たちの仕事で、欲しちゃいけない」と思い込み、小さくなっている介護業界を。


お金なんて要りません。

でも、お金が必要です。


僕たちは、ラッキーなのかもしれない。

今こそ、大きく成長するための絶好の機会なのかもしれませんね!



<おしまい>


Twitterにて、介護業界の中で助けを求めている人に協力させて頂いています。
決して1人で抱え込まないで。
一緒に乗り越えましょう。

<動画版>



シニアの方々が、主体的に・楽しく生活し続けられるよう、頑張ります!少しでもご協力頂けると幸いです。