箱根駅伝ポスター

箱根駅伝に情熱をかけた男たちの戦い〜大学生⑩〜

2003年10月18日

僕にとっては「初めて」
成瀬さんたち大学院生にとっては「最後」

箱根駅伝予選会の日がやってきました。

この日を迎えるにあたってたくさんのことを犠牲にしてきたり、我慢してきたのは間違いありません。世の中で持たれている(?)大学生の生活とはかけ離れた世界でみんな努力し、目標に向かって時間を使ってきました。最後の1ヶ月はどう過ごしたかよく覚えていません。ただただ、夢中だったと思います。そして、僕が筑波大学を目指すきっかけになった箱根駅伝へのチャレンジが少くともあと3ヶ月、早ければあと1ヶ月で終わってしまうかもしれないと思うと寂しさもあった気がします。不思議というか、変な感覚でしたね。。。

僕にとっては「初めて」の箱根駅伝予選会のはずが、いろんなことを考えていたら自分でもよくわからないくらい気持ちが高ぶってしまって、選手発表の時になぜか涙が溢れてきました。なぜ泣く!?と突っ込まれそうな状況で、今でもよくネタにされます(笑)

スタート前に思ったのは「箱根駅伝に出たい」という想い、そして「このメンバーでもう少し長く一緒に頑張りたい」という想いでした。後者のほうが大きかったかもしれません。大勝負の前にこんなメンタルじゃダメなのはわかっていることですが、どうしても情に流されちゃうんだと思います。

入学してまだ半年、上級生とともに過ごした時間は決して長い時間とは言えませんでしたが、濃い時間でした。苦しくもあり、楽しくもあった時間を振り返っていたのは僕だけじゃなかったと思います。

僕は選手発表の時にポロポロ泣いてしまいましたが、スタートラインに立ったときに人知れず泣いていた3年生の先輩のことを後で聞きました。この先輩のお話もまた別の機会に譲りますね。

■「箱根」で行われた予選会

せっかくなので、予選会の動画の一部をYoutubeにあげました。悔しくて苦しい思い出も今はきちんと直視できる過去になりました。

第80回の記念大会の予選会は少し特殊で、予選会が箱根の芦ノ湖周辺で行われました。粋な計らいではあるのですが、このコースがまたキツい!大きな坂が繰り返し現れ、しかも場所によっては道幅が狭くなるような、そんなコースでした。

実はこの「難コース」というのもプラスにしようと考えていました。普通のフラットなコースであれば、トラックの記録がそのまま予選会の記録に反映されてしまいます。しかし、アップダウンがあれば下克上が起こり得る。そういう目論見でした。夏は山の中ばかり入っていましたし、十和田八幡平駅伝という激坂駅伝にも出ました。あわよくばを起こす!それが最後の最後にひねり出した最終兵器&秘策だったと思います。

エントリーメンバーは 14名、そのうち出走メンバーは12名です。「最後の」予選会となる上級生にとってはこのメンバーに入りたいという思いは間違いなく強かったと思いますが、最後の最後このメンバーから漏れた4年生は僕と同室のキタさんでした。

入学してからずっと僕のことを気にかけてくれたキタさん。頭が良くて物静か、おしゃれでコツコツなんでもこなすタイプでした。メンバー発表があってからは自分を押し殺してサポートに回ってくれました。それもまたチームのなかでの一つの役目。心の中はどうだったかわかりません。ただ、勝ち負けがつく世界では必ず起こり得ることなので、そんな覚悟は誰もが持たなくちゃいけないものなんだと思います。

■タスキのない予選会

箱根駅伝の予選会は本戦のようにタスキリレーするわけではありません。予選会もすでに有名になっているので、もはや説明の必要はないかなと思うのですが、一応補足だけしておこうと思います。

箱根駅伝の予選会に出るためには最低でも5000m16分30秒以内もしくは10000m34分以内の公式タイムが必要になります。最低10人最高12人まで予選会に出走することができ、その上位10人の合計タイムを競うものになっています。当時の細かいルールは忘れてしまったのですが、関東インカレポイントというものがあって、駅伝偏重のチーム作りを防ぐために春のトラックシーズンの成績が予選会の合計タイムにアドバンテージをして加わってきます。筑波大学は陸上競技部としてとても強かったので3分50秒も引いてもらっていました。

タスキはないけれど、チームで集団走を組んだり、個人走で上位タイムを稼いだりと、作戦は様々。マネージャーはライバル校のタイムも同時に計測しなが自校の順位を計算するというマルチタスクを求められ、もう「総力戦」状態です。チームの仲間の走りを気にしながら全力を出すというレースは「見えないタスキ」でお互いが繋がっていて、自分が振り絞って縮めた1秒でチームが負けることも勝つこともありえるというような心境でした。

走れない選手も、支えてくれたマネージャーも、みんな気持ちは一つ。

みんなを信じて走る。


号砲が鳴りました。

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