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崖っぷちに立たされた時にとる行動の話〜大学生⑧〜

“9月”は体にとって酷な季節だなといつも思います。

初旬は暑さがまだまだ厳しく夏が終わってない感じがするのですが、中旬から下旬にかけて一気に気温が下がり涼しくなることがあります。気温が1ヶ月の中で大きく変わるため、少し気を抜いて薄着のままでいると寒さを感じることすらあり、油断はできません。みなさんも風邪はひいてないですか?

ただ、暑い夏にひたすら走る陸上選手にとっては涼しくなってくれるのは本当にありがたくて、体は少しずつ楽に動くようになってくるのが一般的に9月と言われています。鍛錬の夏を乗り越え、涼しくなると同時に疲労が抜けて夏のトレーニングの成果が形になって現れれば、秋に記録がグンと伸びてくれます。まさに

夏に殻を破り、秋に化ける現象

ですね。うちのチームはとにかくこの現象を期待していました。いや、この時期に大きく化けなければ箱根駅伝への道のりはないなとすら思っていました。この時期に記録を出せなければ、箱根への道のりはかなり厳しくなってしまいます。

長く陸上競技をやっていると、こういう「秋に化けた経験」は何度もあるのですが、特に練習環境が変わった「1年生」という立場にある時は最もこの現象が期待できます。大学「1年生」の自分にとっては、とにかく記録を出すこと、下が上を突っつくことでチームを盛り上げることが、自分たち1年生の役目だと考えていました。

■崖っぷち

9月23日

予選会まであと約1ヶ月と迫ったこの日。日体大記録会が開催されました。どの大学もこの記録会の位置付けは同じ。夏の成果を確認する大事な記録会です。そして、それと同時にチーム内で誰が予選会を走るメンバーに選ばれるかを決めるチーム内選考という性格も持つため、競技場内はかなりピリピリしていました。プレ箱根駅伝予選会状態であり、仲間がライバルにもなる瞬間です。いやぁ、この緊張感はすごいですね。

僕たち筑波大学のメンバーも揃って10000mに出場しました。僕にとっては初めての10000m。1周400mのトラックを25周するという種目で、高校生の時には駅伝やロードレースでしか経験したことがない距離です。だから、どういうレースになるか全く読めませんでした。どれくらいの記録を目指せばいいのかも実はあまりよく分かっていなかったのですが、とにかく余計なことを考えずに走ろうと思いました。こーゆー時はシンプルが一番ですね。

レース中のことはあまり覚えていませんが、結果は30分39秒。前半の5000mの通過時点で、大学に入学してから走った5000m走の記録の中で一番速かったので、夏の成果はある程度出せたと思います。でも化けれませんでした。周りも自分ももっと大きな伸びと成長を期待していました。箱根に行くにはそれくらいの記録が求められているということです。

悔いも残る反面、決してやってきたことは間違っていなかったとホッと胸をなでおろしたのも事実で、仲間の快走を見守りました。

ところが、みんながみんなそれなりに走れたというわけではありませんでした。先輩たちの動きが思ったよくない、いや悪い。というよりもこの箱根チャレンジの主役である大学院生たちは明らかにおかしかったです。鍛えに鍛えまくった夏でした。ただ、やっぱり無理をしていたんでしょうね。走れていないというよりも痛そうに脚をかばう動きや、走りのバランスが崩れているのが僕から見ても見てわかりました。

カメラが密着する中でうなだれる先輩たち。まともに声をかけることができませんでした。本来であれば、この日体大記録会はステップアップになるはずの大会。筑波大学は今年要注意!なんだかすごい秘策が飛び出すらしいぞ!!と他大学に思われる予定でした。ただ、結果は厳しかったです。

■挑戦者の気持ち

この記録会で好結果が出れば心に余裕が出るはずでした。ずっと追われてきたプレッシャーが少しでも和らいで、よし行ける!とチームの士気が上が流はずでした。あとは風邪を引かないように体調管理に気をつけよう!疲労を上手に抜いていこう!!そういった過ごし方がしたかった。

でも、現状は真逆。どうすれば予選会を通過できるか改めて作戦の練り直しが必要になり、ギリギリまで強化練習を組んで攻めなければいけない。これはかなりシンドイことです。そんな、どよーんとしかけた空気をピリッとさせてくれたのは成瀬さんでした。

「今は悩んでも仕方がない」
「俺は本気で箱根に出れると思っている」
「だから、最後まで頑張ろう」

正確な言葉は忘れましたが、気丈に振る舞う成瀬さんの姿はよく覚えています。強いなと思いました。箱根に対する想いも強いし、弱気になりそうな自分自身に対して向き合う姿勢も強いなと感じていました。

箱根に対しての気持ちの重みがここに現れていたと思います。僕もできるだけ足掻こう!やれることはやろう!!と思ったのがその時の自分の心境でした。


予選会まであと1ヶ月。
最後の戦いが続きます。

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