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この子が強くなることに大きな意味があるという話〜大学生⑤〜

大学に入って「仲間」が増えました。ここでいう「仲間」とは、先輩後輩とはまた違った意味で大切になる「同期の仲間」のことです。

一番長く大学生活を共にし、在学中はずっといろんな夢や希望を語り合う関係を持った仲間。もちろん仲良しグループを作りたいわけではないので、喧嘩をしたり、意見をぶつけ合ったりすることだって当然あったし、ライバル視しあう関係でもありました。ただ、同じ景色を見ていて、同じように汗を流し、同じ涙を流す。そんな仲間は本当にかけがえのない存在だったと思います。

筑波大学といえば手前味噌な話ですが進学先として決して恥ずかしい大学ではありません。いわゆる難関国立大学。そこに一般入試で入ってきた人たちの集まりということで、みんな堂々としていました。これから始まる大学生活に夢を見る若人という感じかな。ただ、陸上競技に関していうと、ずっとエリート街道を突っ走ってきたというよりも、中学生の時に全国大会に出たけど高校では結果が残せなかったとか、文武両道で頑張ってきて全国大会には進めなかったけど、都道府県大会ではそこそこ名の知れた選手だったという人が多かったです。長距離チームは特にその傾向が強かったかな。

そして、どこのチームもそうですが、必ず走力には差があって、僕の同期の仲間にもクロカワという子がいました。工学系の学生で、パッと見ると決して陸上をやっているようには見えないヒョロヒョロ体型。頭が良さそうだけど、ホントに練習についていけるのかなと同期の僕が心配になってしまうような子でした。

案の定、受験勉強のツケもあいまって、入部当初は息も絶え絶えで練習についていくどころではなく、いつも青白い顔をして走ってました。僕自身も心配しているような状況ではなかったけど、クロカワのことはすごく心配だったし、いつ部をやめるって言うんじゃないかと冷や冷やしてました。

ただ、このクロカワは本当に強かった。速いとか勝てるとか、そういった意味じゃなくて、きちんと自分を持って頑張れる子でした。思い出深いのは1年生の夏合宿。メニューの中に50km走というメニューがありました。マラソンをやるわけじゃないし、こんな距離の練習は普段やらないのですが、そこは合宿ならではのメニューなので、みんなやる前からドキドキしていました。ただ、合宿の練習はみんなで乗り越えるからこそ意味があり、それによって殻を破ることが大きな目的にもなります。だからこそ、チームの皆はこのメニューの重要性をとても強く感じていたし、何が何でもこなそうと思っていました。

とにかく耐える!耐える!!耐える!!!

メニューを形容するとそんな感じでしたね。そして誰も遅れてはならない雰囲気があり、それは良い意味での緊張感にもなっていたと思います。予選会のメンバーに選ばれるであろう選手はもちろん誰も脱落なんてできません。ただ、走力的に崩れても仕方がないかなぁと思っていたクロカワが粘る!粘る!!粘る!!!

結局最後まで走りきりました。侮っていたわけじゃないけど、毎日苦しそうに走っていたアイツが走りきり、そして本当に満足そうな笑顔でみんなの輪の中にいる。その光景が本当に心に残りました。練習に対しての“目の色”が違ったんですよね。それぞれに役割があって、クロカワ自身が練習で離れないことがチームにとってどう言う影響を与えるかわかっていたんだと思います。

一人一人に役目があって、そんな中で頑張る仲間の存在は本当に力になる。クロクワはすごい!走力で負けることはなかったけど、そう素直に思った19の夏でした。クロカワは大学院に進学したので、僕が先に卒業することになったけど、その時も熱い手紙をわざわざ書いてくれました。

クロカワは今でもいいヤツです。


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