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遠い記憶 第七話

新しく引っ越して、来た物の
生活は、一向に楽にはならなかった。
母は、朝、新聞とヤクルトを同時に配達。
昼間は、昼間で別に働いていた。
夜は、集金と家にいた姿は、ほとんど無い。
その為、夜は、新聞のチラシ折り、
今では、チラシを入れる機械があるが、当時は、
全て、手作業だった。
廣子!
はよう、チラシ折れ!の、母のかん高い声、
正直、私は、毎日毎日、何時終わると知れないチラシ折りが、
嫌で、嫌でしょうがなかった。
しかし、それ以上に、顔を吊り上げて、怒る母の顔を、見る方が
もっと、嫌だった。

父の、酒癖は、相変わらず、収まる事は無かった。
一度暴れると、手の付け様が無く、半年は、仕事しない。
包丁を持ち出し、暴れるのだ。
私達は、何時殺されるだろうか、恐怖の何物でも無かった。
危ないと、思ったら、靴など履いてる余裕も無い。
兄と母、私と弟は、四方に逃げる。
何時も、兄がお宮下にある、交番に助けを求めると、
パトカーのサイレンと共に、
警察官が、数人、最後は脇を抑えられ、パトカーに乗せられる。

そんな、父を見て、
寂しいとか、悲しいとか、情けないとか、そんな感情は
無かった。
ただ、今日はこれで、寝れる安堵感。
ただ、それだけだった。

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