🗻津軽ソーヴィニヨン・ブラン | サントリーフロムファーム

2024年8月22日 13:51

色調は淡く仄かなレモンイエロー、りんごやパッションフルーツの香りとハーブのような爽やかさにほんのりイーストの風味。
そこからストーンフルーツのジューシーな果実味ある味わいを感じます。
酸は柔らかで繊細でありながらどこか落ち着きを払っています。

日本ワインコンクールにおいて
2015年に「シャルドネ」
2016～2018年に「ソーヴィニヨン・ブラン」で４年連続金賞受賞をしている、サントリーが手掛ける津軽シリーズ。
最新ヴィンテージの
〖津軽ソーヴィニヨン・ブラン2023〗を味わいました。

■「SUNTORY FROM FARM」

「良いワインは良いぶどうから」という理念の下、ワイン造りに励んできた「サントリー」は、ぶどう畑を出発点にして、日本ワインの魅力をお客様に届ける「SUNTORY FROM FARM」を展開しています。

私の故郷「津軽」は、日本のりんご生産量の約60％を占める主要な産地です。りんごを使ったお酒としてはシードルがよく知られており、アサヒビールのニッカシードルも弘前で製造されています。2023年9月には「ニッカ弘前生シードル」としてリニューアルされ、売上げも好調とのこと。

実は、この地には大手飲料メーカーが2社存在するという珍しい特徴があります。

■なぜ、津軽なのか

現在
「SUNTORY FROM FARM」の園地は、

・登美の丘(山梨県)
・高山村(長野県)
・塩尻(長野県)
・かみのやま(山形県)
・津軽(青森県)

が挙げられます。

開拓された銘醸地には共通点が存在します。
成熟期の最低気温は10～15℃であり、海からの冷たい空気や高い標高による低温、山からの涼しい空気がある場所が適しているとされています。

そして、弘前の4月から10月の平均気温は16.5℃で、全国的にも日照時間が長く、雨が少ない傾向にあり立地条件が揃っているそうです。

■サントリーが目指しているのは、ワイン用ぶどうの産地としての「津軽」の確立

弘前市、JAつがる弘前、そしてサントリーの三者が連携し、津軽産ワインぶどうの高品質かつ安定的な生産体制を構築し、津軽産ワインの生産拡大及び知名度向上に繋げることで、地域産業の発展及び地域経済の活性化を図る。

2020年から10年間の協定を結び、この目標に向け積極的な連携・情報共有し協力しています。

■サントリーと津軽のはじまり

1980年代後半
弘前市岩木地区（旧岩木町）、鶴田町、藤崎町でシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール、リースリングの契約栽培を開始しました。

太田さんが木村さんを誘う形でワインぶどう栽培を開始。
二人は1948年生まれの高校時代の同級生です。
当時、弘前市の栽培農家は太田勇藏さんと木村登さんだけだったそうです。

岩木山周辺のテロワールについて
標高約100～155ｍ。
岩木山の火山灰土壌が堆積した土地で肥沃。
水はけは良好。
気候はワインぶどうの生育期(4～8月)に雨が少なく、収穫前にあたる夏は気温が上昇。
日照時間も比較的長く、収穫期となる9月以降は一気に冷涼に。
冬は雪がぶどうの樹を凍害から守ってくれます。

2024年5月
風土と共に生きる人の技と愛情の軌跡を訪ねてみました。
サントリーの新旧5つのワイン用ぶどう園地巡りへ、いざ！

・太田勇藏園

朝9：00　
津軽富士と称される岩木山の麓に、太田勇藏さんの畑兼自宅があります。
“ようこそ”と、アルザスの街並みに合いそうな白い壁に木の骨組みを外観に露出する建築様式の立派な御自宅でお話を聞かせていただきました。
驚いたことに、100年の梁を使っているという。
奥様が、美味しいコーヒーとお菓子でおもてなしをしてくださいました。

太田さんは元々、東京で音楽関係の営業マンをされていて、30代前半、お父様が急逝したことで地元弘前に帰り農家を継ぎました。
東京にいた頃からワインに興味があり｢岩木ならりんごのように良いワインぶどうが育てられるのでは｣と思い、栽培をスタート。

標高150メートルのこの地で、
「世界トップクラスのワインを造る」との志を持っています。

太田さんはあまりお酒を飲まないそう。
ワインであれば、1杯か2杯だけ。
だからこそ、食事に合うものが良いと言います。
深浦産の網焼きサザエが合うよと教えてくれました。

もしかすると、どのソムリエの“合う”という言葉以上の説得力があるものはないと思いました。

緩やかな傾斜。除草剤を使わずこまめに草を刈るという手間暇をかけ、大事に育てています。

6年前に大腸がんと診断された際、太田さんはこの畑を最初に思い浮かべたといいます。朝は4時に起き、5時には畑で作業をしている太田さんは
「命にどん欲」と自らを形容し
「まだ満足できるブドウを作っていない」と謙虚に語りながら、その情熱を燃やし続けています。

・雪田愛園

パワースポットとしても有名な岩木山神社のすぐそば
南東向きの斜面に昨年6月にスタートした雪田さんの畑があります。
雪田さんは小柄でおしゃれな女性です。

女性一人での作業は大変ではないかと尋ねたところ、周りの人々が支えてくれているとのことでした。実際に訪れた時、隣の敷地の人と話している様子を見たり、他の園地の人たちが雪田さんの話をしているのを聞き、彼女の魅力とこれからの畑に対する期待を感じました。
この地で、「賞を取るブドウを作りたい」という彼女の願いが込められています。

・木村登園

標高155ｍ。南東向きの斜面で比較的傾斜が強い場所に木村登さんの畑はあります。
ここの土地は風が重要といいます。

木村さんは、りんご、桃、西洋梨、ヘーゼルナッツなど、多種多様な作物を栽培しています。
「中でも、ぶどうは地面に足をつけて作業ができ、疲れたらその場で休むことができるので、高齢者にとっては理想的です。
夫婦でゆっくりと作業をすることができますし、美味しいワインができた時の喜びは格別。
ただし、ぶどう栽培についてはまだ分からない。」
当時を振り返ると、ワイン用のぶどう栽培をやめた人もいましたが、
「絶対にやめるつもりはなかった」という。

長年の経験があっても分からないことがある。
ワインも同様で、いつまで経っても全てを把握するのは難しい。
だからこそ、面白いのかもしれません。

垣根仕立てギュイヨダブル
長梢で作る為、芽を選ぶことが出来るので品質が揃えられて、養分がスムーズに流れることがメリットという。

・木村大志園

木村大志さんは木村登さんの息子です。
現在栽培4年目。
1.4ヘクタールの畑で、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワールを栽培。
試行錯誤してぶどう造りをしており
雪害に対して、3年目でやっと成功したと語ります。

垣根仕立てギュイヨダブル(変則型)
枝をクロスさせることで、木の中心部を太くして、雪対策をしている。

改めて話を伺ったところ、別の方法で雪対策することにしたので、来年からは父(木村登氏)のような木の形になる予定とのこと。

大志さんは、「ワイン用のぶどう栽培者が増えれば良い。｣と言います。
高所作業の負担や、ぶどうの管理は約150日で済む一方、リンゴの場合は2ヶ月間しか休めないのも理由の1つだそう。これは青森県のりんご農家にとっても深刻な問題で、放任園が増えている事も事実。
高齢者にこそ取り組みやすいということです。

大志さんはここ弘前で常に未来を見据えています。

・佐藤勝美園

園地は元りんご畑でソーヴィニヨン・ブランが1300本植えられています。

佐藤さんのブドウは何故か成長が早いといいます。

樹木の勢いが強く、力強く上へ上へと伸びていることを感じました。
元々シャルドネやピノ・ノワールを7年間栽培した経験が現在に生きているのでしょう。2年目の新たに植えられたリンゴの木もあり、それは単なる切り替えではなく、「共存」と表現されていました。

佐藤さんは「いつか山梨でワインを飲めたらいいな」と言いました。
その話を聞いて、私は登美の丘ワイナリーへの旅を想像します。

17:30
5つの園地を訪れ終わった頃には、徐々に暗くなり、風も冷たく感じられました。圃場を見学し、話に耳を傾けていたため、昼食をとることをすっかり忘れてしまっていたのですが、太田さんの奥様が用意してくれたコーヒーとお菓子のおかげで、集中できていたことに気づかされました。
おそらく私自身アドレナリンが出ていたのでしょう。

■最後に

ドメーヌ型の栽培から醸造まで一貫して行うワイナリーは多数存在しますが、
【醸造】という、誰かに任せるしかない行為に対して

自分にできないことを信じて任せる。
それは【栽培】も同様。

だからこそ
〖毎年素晴らしいぶどう(ワイン)を造る。〗
という、双方の真剣さと情熱が感じられる、素晴らしい体験でした。

全世界で栽培されているソーヴィニヨン・ブラン
代表的な産地

・フランス　ボルドー地方
・フランス　ロワール地方
・ニュージーランド　マールボロ

ここに、日本らしさ、酸味の清らかさを感じる津軽ソーヴィニヨン・ブランが世界第4の産地として名を連ねることを目指しています。