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SUBARU ff-1 レストアプロジェクト 第17回

皆様こんにちは。宮城スバル本社です。
ボディの塗装が終わり、着々とレストア完了までの道筋が見えてきている我らff-1レストアチーム。近々塗装後のボディのタイヤハウス等の下回りにラバースプレーを吹きかける予定となっておりますが、今回はミッションの組み立て作業の模様をお届けしたいと思います。

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その前に過去の作業をおさらいしていきます。
こちらの写真はレストア初期の段階で取り外したミッションです。
写真をご覧いただくと分かる通り、かなり黒く汚れております。
毎度のことですが、我々の目標は新車状態に戻すことなので、エンジン後方の奥深くに鎮座されて目立たない場所に装着されているものとはいえきれいに清掃していきます。

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内部に水、埃が入らないようにブラインド作業をし、高圧洗浄機でざっと汚れを落としてミッションケースだけの状態にして…

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落としきれない汚れはサンドブラストで清掃していきました。

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さて、ここからが今回のレストア活動になります。
清掃の完了したミッションを組み立てるため、埃や砂を除去していきます。
ふと、ミッション両側に配置されているデファレンシャルのサイドベアリングを回転させたところ、違和感が・・・。

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サンドブラストで汚れを落とした際に細かな砂がベアリング内部に侵入、洗浄作業失敗です。マスキングテープや段ボールでがっちり密閉していたはずでしたが、養生が甘かった様です。これは完全に予想外で、ベアリングの内部洗浄が追加作業となりました。

等速ジョイント

ちなみに豆知識ですが、砂が入り込んでしまったこの部品は等速ジョイントと呼ばれ、富士重工と東洋ベアリング(現NTN)が世界に先駆けて量産開発したものです。
ホイール側にコンスタント・ベロシティ・ジョイント(C.V.J.)、デフ側にダブル・オフセット・ジョイント(D.O.J.)が使用されております。
スバル1000以前にもFF車は存在していましたが、当時のFF車は加速時や旋回性能が悪く、乗り心地がFR車に劣っていたため、あまり普及しておりませんでした。
しかしながら、量産車としては世界で初めてスバル1000にC.V.J.とD.O.J.2つの等速ジョイントが同時に採用されたことによって、従来のFF車の常識を覆す、静かで振動が少なく、それでいて滑らかで正確な操縦性を実現することができました。
これ以降世界的に小型車のFF化への潮流が決定的になったことから、スバル1000(ff-1)にこの等速ジョイントが搭載されたことは、FF車の歴史の中で非常にエポックメイキングな出来事だったのです。

こんな大事な部品を砂まみれにしてしまっては、開発に関わった偉大な先人たちに申し訳が立ちません。(あと、操縦性に影響を与えかねません。)
急遽ミッション組み立てを中止し、予定にはなかった洗浄作業を行っていきます。

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パーツクリーナを使用しましたが完全に砂を落としきることは出来ませんでした。
他に考えられる手段としてガソリンや灯油で洗浄する、ベアリングを完全に分解して清掃するなどありますが、灯油洗浄は火事が発生する恐れの為に会社的にNG。
ベアリング完全分解は元に戻せなくなる恐れと、破損する恐れがある為やりたくない…。

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熟考した結果、部品にやさしい、滞留している砂をベアリング内部に残留させない安全な洗浄方法をやってみることにしました。まず、業務用のバケツを用意して、中に大量の水を溜めてその中にベアリングを沈めます。そして、手でベアリングを回転させながらエアブローガンで圧縮空気を吹き付けていくことにしました。
仮説としてはこうなります。
① ベアリングを回転させることによって砂が付着している面を露出させる。
② 水中の中で圧縮空気を吹き付けることで発生する泡で砂を浮かせ、水流で流してやる。
③ 水流で流れた砂は、ベアリングの奥深くに滞留することなく外に排出され、バケツの底に沈殿し再度ベアリング内に侵入することなく洗浄がすすむ。

この仮説を信じて何度も行い洗浄していくことにしました。
問題なのは非常に寒い時期であるということのみ…。この寒い時期に水の中に両腕を突っ込んで作業するのは、手の感覚がなくなるほど辛い作業でした。

ベアリングの引っ掛かりやジャリジャリ感もなくなり洗浄が完了したのはその日の夜のこと。ミッションの組み立ては次回の活動に持ち越すことになりました。

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締め付けトルク

2日目に入りました。
完全に分解して確認したところ、ミッション内部の部品に傷や交換が必要な部品はなかったもののケースとミッション後方にあるカバーを密閉するガスケットがなく、ガスケットは自作が必要でした。
自作ガスケットも出来上がり、あとはマニュアル通りの手順、締付けトルクに注意し組み付けていくのみ。

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実際に組み上がったミッションがこちら。
真っ黒だった時と比べて、きれいに仕上げることができました。
トラブルもありましたが、やりごたえのある作業だったと思います。

今回はここまで。次回もお楽しみに。


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