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多裂筋について極める

腰痛治療に用いられる腰痛体操については、現在数多くの研究が進められている。その中心となるアプローチは、多くが背臥位や腹臥位で行うストレッチ、筋力強化運動である。

従来の腰痛体操による体幹筋力強化法は、主に表在筋を鍛えるものであり、疼痛の強い者、脊椎の変形が高度な高齢者では、運動肢位を取ることが困難で負荷量も強く、実際の臨床現場では実施に難渋する例も多い。

それに対して、近年は腰痛患者に対して多裂筋の筋萎縮・機能不全が発症早期よりみられることが示されている。そこで、多裂筋など深層筋による脊柱の支持性を向上させる目的とした、腰部脊柱安定化エクササイズが幅広く実施されている。

安定化エクササイズの中で、高齢者でも実施可能なものとして推奨されているのが、四つん這いでのエクササイズだ。実際に、体幹筋活動量について多くの効果が報告されている。それを踏まえたうえで、多裂筋の概要やトレーニングの方法について解説したい。

(1)概要

多裂筋概要
起始
 C4-7の関節突起、胸・腰椎の横突起、仙骨・仙腸関節
停止 各起始部から2~4つ上に位置する椎骨の棘突起
作用 腰椎の前弯。仙骨の前傾。脊柱の安定・支持・伸展、同側側屈、反対側回旋

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多裂筋は脊柱起立筋と異なり、体上部~下部へ向かうほと筋腹が厚くなる。そのため胸椎の伸展には強く影響しないが、腰椎・仙骨の前傾で強く働く傾向にある。

多裂筋が機能しない場合、脊柱起立筋が脊柱の安定に働く。アウターマッスルの筋群が強く働く=インナーマッスルの機能不全につながるので、腰痛の原因にもなりやすい。

また、仙骨前傾に働く筋は多裂筋以外にほぼない。仙骨を立てる=前傾させることは、日常動作のパフォーマンス維持、スポーツの競技力向上、美しいスタイル形成などあらゆる面で重要な項目である。

※ボクシングは競技特性上、猫背の姿勢でボディを防御し、またバックステップ(後方移動)がしやすいよう仙骨が後傾姿勢になっている選手が多い。

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