歩行観察〜TStからTSwまで〜
1)TSt
TStの動作が不安定だと、脚の振り出しがスムーズにできない。安定した歩行動作で、非常に重要な相である。
TStにおいて、各関節が次のような角度を取る。
・股関節伸展=約20°
・膝関節屈曲=約5°
・足関節背屈=約10°
この状態は、前足部より骨盤が前方に位置するポジションとなる。このとき足関節底屈筋群は弛緩しておらず、下腿三頭筋はTStにおいて、歩行周期中最大の出力を発揮する。
TSt時における床反力のベクトルは、MTP関節を通過し上前方へ向かう=床反力は足関節背屈の方向へ働く。その負荷に耐えるため、下腿三頭筋が働き踵が浮いた状態を保持しているのである。
TStでは足関節背屈位のまま、MTP関節が伸展して踵が浮く。下腿三頭筋はこのとき、等尺性収縮する。股関節屈筋群は股関節伸展による伸張、足関節背屈筋群は床反力に対する等尺性収縮の状況下でPSwを迎える。
(1)TStの踵離床の重要性
TSt時に踵が離床(足関節が背屈)していることで、人は重心制御をスムーズに行える。TStでは両脚が前後に大きく開き、歩行周期全体でもっとも重心が低くなる。正常歩行の条件の一つに「上下左右の重心移動が非常に少ない」ことを上げたが、TStでも過度な重心低下を避けるため、踵が離床している方がいいのである。
実際に踵が離床した状態では、重心が最高点から約3cm下がるとされるが、踵が接地した状態では最高点から重心が約9.5cm下がってしまう。たった約6.5cmの差だが、その分無駄な重心上昇のエネルギーが生じるのである。
同様の理由で、対側のTSwにおける足関節背屈も重要である。
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