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【感覚統合】前庭覚とパフォーマンス

前庭覚は加速、回転を知覚するシステムのことである。ほとんどのクライアントへの施術として、姿勢改善を図るトレーナーは多い。筋、骨へのアプローチからそれを試みることが一般的だが、肝心な姿勢の維持・調整には、前庭覚が深く関係する。

(1)姿勢維持と前庭覚

姿勢の維持には平衡感覚が必要不可欠となる。平衡感覚とは、身体に伝達される揺れ・回転方向の動き・加速度・重力方向への負荷などの情報であり、それを知覚するのが前庭覚の役割でもある。

こうした前庭覚の情報に、視覚や固有覚、触覚等の感覚情報が統合されて、姿勢の制御が行われる。前庭覚が機能していない状態として、分かりやすいのが「目が回っている状態」のこと。回転方向に過剰な力が働くことで、前庭覚がほかの感覚を知覚できないことで起こり、立つ・歩くなど日常では問題なく行える動作が、困難となってしまう。

(2)前庭覚の構造

前庭覚を司るのは、内耳にある三半規管と耳石器官からなる前庭器官である。この2つの器官では、それぞれに受け取る情報が異なる。それぞれで受け取った情報は、前庭神経核(橋と延髄の移行部に位置する)にて伝達され、視覚、固有覚と統合され、姿勢のコントロールが行われる。

前庭

1)三半規管

三半規管はその名の通り、前半規管、後半規管、外半規管(外側半規管、水平半規管)の3つで構成されている。三半規管は主に回転方向の加速情報を知覚する。三半規管のうち、前/後半規管は前後・左右の加速情報を受け取り、外側半規管は水平面上の加速情報を受け取っているとされている。

2)耳石器(官)

耳石器は卵形嚢、球形嚢の2種類があり、それぞれに平衡斑という前庭神経の終末器官がある。耳石器は直線運動の加速情報を受け取っているとされており、卵形嚢は前後方向の加速情報(まっすぐ歩く、後ろへ下がるなど)を受け取り、球形嚢は上下方向の加速情報(ジャンプする、しゃがむなど)を受け取っている。

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