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ファットアダプテーション(持久系スポーツへの影響)

ファットアダプテーションとは、長期的に高脂質食を摂り、意図的に脂質の摂取量を増やす食事方法である。主な目的としては「グリコーゲンの枯渇を防ぐ」「脂質の利用能力を高める」が挙げられる。ファットアダプテーションは、特に長時間の運動を強いられる持久系スポーツにて、使用される機会が多い。

(1)メカニズム

1)PPARβ/δの関与

持久系トレーニングと高脂質食摂取を組み合わせた場合、骨格筋のミトコンドリアが増加したという研究がある。このメカニズムは、※核内受容体のPPARβ/δが関係するという。

※核内受容体
細胞内タンパク質の一種であり、ホルモンなどが結合することで細胞核内でのDNA転写を調節する受容体である。発生、恒常性、代謝など、生命維持の根幹に係わる遺伝子転写に関与している。

PPARβ/δは、脂肪酸参加系酵素の遺伝子のプロモーター領域に結合し、これら酵素の遺伝子発現を活性化する作用を持つ。高脂質食により血中で増加した遊離脂肪酸が、骨格筋細胞内に取り込まれ、PPARβ/δを活性化。それにより、ミトコンドリアが増加する。

2)PGC-1αの関与

高脂質食+持久系トレーニングでは、1)のメカニズムに依拠しないミトコンドリア系酵素もおズカしていることが判明している。その要因として挙げられるのが、※PGC-1αである。

※PGC-1α
転写因子 PPARγ に結合する転写コアクチベーターとして同定された分子。エ.ネルギー産生や熱消費に関わる多くの遺伝子発現を制御する。

一過性の長時間運動を行うと、直後にPGC-1α遺伝子のmRNA増加が見られる。高脂質食を1度摂取しただけでは、PGC-1αの発現量の変化は見られないが、同様の食事を4週間程度継続すると、PGC-1αのタンパク質発現量の増加が見られた。食事によるPGC-1α増加は、運動とは違いPGC-1αのたんぱく質分解を抑制し、徐々に発現量を増やしていると考えられる。

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