原風景と根っこ③野田昌宏「新版スペース・オペラの書き方」

作:野田昌宏 刊:早川書房
自分の中の原風景と根っこを思い出し書いていく記事の3回目。
今回は、SF作家の野田昌宏先生の書いたスペース・オペラ(宇宙SF)やエンターテイメント小説の書き方の指南書。
私学生時代に購入し、時折思い出して、本棚から出して、読んでいる1冊。
野田先生の体験談やエピソードを交えながら、スペース・オペラとは何か、スペース・オペラの面白さを教えながら、どうすれば面白く書けるか書いています。
どの本を読めば良いか、作品のバランス配分、情報カードの使い方、インプットとアウトプット(この言葉はこの本で知りました)、映画や小説の名作の分析、プロットについて、更にはホテルのカンヅメ(+執筆する環境)の仕方等いろいろと書かれて、勉強になりました。
また、この本は戦後SF作家の先生の方々がいかにアメリカのSF小説に会ったかも書いています。少なからずも、日本の戦後SFの黎明期の一端にも触れる事が出来ます。
そして、野田先生がスペース・オペラに出会った経緯も書かれており、文字通り若さとエネルギーでスペース・オペラとSFに関する書籍や情報を集めたと言うエピソードを読むと、やっぱり人間は「熱さ」が必要なんだなと思いました。
また、スペース・オペラについて、「水滸伝」を自身のスペース・オペラに参考にしたと野田先生が書いているのを読み、また、先生が少年時代に猿飛佐助等の時代小説の影響を受けたと書いているのを読むと先生の「原風景」が知れて、勉強になりました。
猿飛佐助に関しては、この本でも、『スペース・オペラと言えば「猿飛佐助」』と言う文章があり、立川文庫や柴田錬三郎先生の小説を挙げていますが、柴田錬三郎先生版の猿飛佐助の奇想天外なアイデアの数々は枚挙に尽きません。
この本の序盤に書かれている「いつまでも続いて欲しい(物語)」や「お友達になりたい(キャラクター)」や「アンデルセン童話のアンチテーゼ」は、野田先生の執筆活動の信念なんだろうなあと思います。
「面白い小説(物語)」を書くにはどうしたら良いかを野田先生の言葉(文章)で、本当に面白く、丁寧に教えてくれる本です。そして、野田昌宏先生の代表作の「銀河乞食軍団」シリーズも、日本を代表するスペース・オペラ(宇宙SF)の小説の一シリーズなので、興味を持った方は、「スペース・オペラの書き方」と「銀河乞食軍団」シリーズを是非とも読んでください。
最後に、野田先生の「銀河乞食軍団」シリーズでは、スペース・オペラの作品ですが、「ハードSF」的な要素は忘れず、「この作品はSF小説である」と言う事を忘れていませんでした。本当に、野田先生はSF作家(SF小説家)としての「根っこ」を持ち続けて、執筆活動をしていたのだと感動したのを思いながら、この記事を締めたいと思います。