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著書『秒で伝わる文章』の「第1章 人間は文章を読まない」を無料公開

本日、ついに私の初めての著書『秒で伝わる文章術』が発売されました!

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今回は、私が本書で最も伝えたかった「人間は文章を読まない」ということについて書いた第一章を、無料で公開します。

私がビジネスで仕事を書く上で、常に意識しているのがこの「人間は文章を読まない」ということです。「自分の書いた文章は絶対に読み手が読んでくれるもの」という思い込みを捨て去るだけで、圧倒的に伝わる文章を書くことができるようになります。

このnoteを読んで内容に興味を持ったら、ぜひ『秒で伝わる文章術』を手に取ってみてください!

それでは早速お楽しみください!

人間は文章の20%しか読まない

あなたが文章を書く上で、絶対に知っておかなければならないことが1つあります。

それは、「人間は文章を読まない」ということです。

大事なことなのでもう一度言います。人間は文章を読みません

「文章を読む」という行為は、人間の脳にとって、私たちが思っている以上に非常に負荷の大きな作業になります。人間の脳は膨大なエネルギーを必要とする器官なので、なるべく省エネをするように設計されています。脳科学者のグレゴリー・バーンズ博士は、「人間の脳は基本的にナマケモノだ」と言いました。「リソースを節約するために、なるべく文章を読まないようにしよう」と勝手に判断するわけです。これが、「人間は文章を読まない」と言い切る理由です。

人間の脳が文章を読むのに向いていないことは、あらゆる研究で証明されています。その中で、製品やサービスの使いやすさを追求するユーザーエクスペリエンスの分野で有名なのが、ウェブユーザビリティの第一人者であるヤコブ・ニールセン博士が書いた「ユーザーはいかにテキストを読まないか」という文献です。

こちらのグラフをご覧ください。

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出典:U-site「ユーザーはいかにテキストを読まないか

横軸がページ内の英単語の数、縦軸が読んだ割合になっています。ご覧の通り、1,200単語を超える場合、20%(240単語)程度しか読まれていないことがわかります。英語の単語数を日本語の文字数に換算すると約2倍といわれているので、2,400文字の文章の場合、480文字程度しか読まれていない計算になります。

この記事は2008年に発表されたものですが、2022年の現在では、当時よりはるかに人間は文章を読まなくなっていると考えられます。スマホの登場により、「読む」という体験そのものが大きく変化したからです。

スマホの登場による「読む」体験の変化

2021年6月、「ハフポスト日本版」の前編集長・竹下隆一郎氏が、 Twitterである記事をシェアしていました。米国のオンライン経済メディア「Insider」の編集長が、「1記事を600ワード以内に制限せよ」と指示した記事です。その理由も、読み手にとっての読みやすさを意識したものでした。

Twitter では、ツイートに添付された記事のURL をタップせずにリツイートすると、「まず記事を読んでみませんか?」という通知が表示されます。このことからも、「いかに人間が記事を読まないか」ということがわかると思います。

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デジタル化により文字数は無限に

長すぎる文章が世の中に多く生まれるようになったのには、原因があります。文章のデジタル化により、スペースの制限がなくなったのです。

たとえば、あなたが猛スピードでTwitter のタイムラインをチェックしているとき、それぞれのツイートをしっかりと読んでいますか? 友人からおもしろい記事をシェアされたとき、最初の一文字から最後の一文字まで、すべて読むでしょうか?

おそらく、読んでいないと思います(私も読みません)。

最もわかりやすいのは新聞や雑誌です。紙媒体の新聞や雑誌の文章は、文字数の制限があります。雑誌や新聞で文章を書くには、「与えられた狭いスペースで、どれだけ正確に、かつ多くの情報量を伝えられるか」という技術が必要でした。

しかし、それも電子版などの登場により、スペースによる制限は実質なくなりました。無限に文章を書けるようになってしまったのです。こうして、読み手のことを考えない長すぎる文章がインターネット上に量産されました。

メールがついつい長くなってしまうのも、文字数に制限がないからです。もしメールに「200文字まで」というような制限があったとしたらどうでしょう? あなたはきっと、必要ない部分をカットしたり、文字数を調整しながら、200文字に収まるような工夫をすると思います。しかし、制限がないため、だらだらと読みにくく長いメールを送ってしまうのです。

そういう意味で、140文字を制限とするTwitter は、文章のトレーニングとしては非常に有効です。「決まった文字数の中で、どうすれば最も伝わるか」という工夫をする必要があるからです。前述の600ワードという制限を採用したウェブメディアも、文字数制限をすることで、より内容が濃く、伝わりやすい、引き締まった文章になることを期待したものであると考えられます。

人間の集中力はデジタル化により低下

スマホの普及によるデジタル化により人間に起こった変化の1つが、集中力の低下です。

「ナショナルジオグラフィック」で、米テキサス大学オースティン校の心理学者エイドリアン・ウォード氏の実験が紹介されています。

800人の被験者に二種類の難しい精神作業を与える実験を行った。一つ目の課題は、ランダムに並んだ文字列を暗記しながら数学の問題を解くというもので、もう一つは、いくつかの選択肢の中から、視覚的な図形を完成させるための画像を選ぶというものだった。

一部の被験者は、自分のスマホを別の部屋に置いておくように指示された。それ以外の被験者には、スマホをポケットに入れたままにしておくか、机の上に置いてもらった。スマホは課題をこなすにはなんの役にも立たないが、これがどれだけ手に取りやすい位置にあるかは、被験者の成績に影響を与えた。スマホを別の部屋に置いておいた人たちが、もっともよい成績を上げた。スマホを目の前に置いておいた人たちの成績は最低だった。スマホをポケットにしまっておいた人たちにも、認知能力の低下が認められた。

この実験の驚くべきところは、スマホを利用している状態ではなく、手元にあるだけで、人間の集中力の低下が見られるということです。この実験から研究者は、スマホへの依存が若者の読解力を低下させる可能性を危惧してます。スマホの登場により、人間にとって「読む」という行為は、より難易度の高いものになったのです。

「読んでもらえない」という前提で書く

スマホの登場による「読む」体験の変化、そして世の中の情報量が爆発的に増加したこと、さらには動画メディアの発達などによって、日に日に人は文章を読まなくなっています。

このような状況で文章を書く上で、最も重要なこと。それは、あなたが書くあらゆる文章は、読み手に「読んでもらえない」と いう前提で書く必要があるということです。

文章を書く人間にとって、自分の書いた文章は、まるで子どものような、とても可愛いものです。そんな可愛いものなので、当然読み手も喜んで読んでくれると思ってしまいます。これが、大きな間違いです。読み手はあなたの文章に興味がないし、できれば読みたくないと思っています

これは仕事で大量に送られてくるメールを考えれば、簡単に理解できると思います。CCで送られてくる自分に関係のないメールにうんざりする経験は、誰にでもあるはずです。そうした大量のメールの中から、自分の送ったメールを確実に読んでもらう必要がある。そこで必要なのが、読み手ファーストな文章を書く技術なのです。

コピーライターはまず最初に、「広告なんて誰も見たくない、コピーなんて誰も読みたくない」ということを叩き込まれます。新聞や雑誌を読んでいる人は、記事が読みたくて買っています。

誰も広告のキャッチコピーなんて読みたくないのです。テレビ CMはもっと顕著で、簡単にスキップされます。近年のサブスクリプション型の動画サービスでは、最初からCMがありません。それぐらい、ある意味では嫌われているのが広告なのです。

そんな状況で、「いかに読んでもらえるか」「見てもらえるか」「好きになってもらえるか」を考えるのが、コピーライターの仕事です。その点において、「読み手に読んでもらえない」という前提で文章を書くことは、コピーライターがずっと鍛えてきた技術の 1つであり、文章を書く上でとても役に立っています。

私のようなライティングを仕事にしている人間が「文章は読んでもらえない」なんて言うと、矛盾しているような印象を受けるかもしれません。「読まれないものを書く」と言うと、何か悲しい仕事のようにも思えます。

しかし、私はその逆だと思っています。「人間は文章を読まない」 という前提で、「どうすれば伝えたいことが伝わるのか?」を考える。その技術こそが、デジタル時代の文章術なのです。そして、自らの技術でそれを実現することは大きなやりがいであり、とても価値のあることだと、私は考えています。

また、文章術を学ぼうとしているのに、いきなり「人間は文章を読まない」なんて言われると、手も足も出ないような気持ちになるかもしれません。でも安心してください。私が実践する文章術は、文章を読むことが苦手な読み手に対して、「いかに効果的に物事を伝えるか」を追求した技術と言っても過言ではありません。

「読み手の負担を少しでも軽減するにはどうすればいいか」と考えるホスピタリティなのです。

Yahoo!ニュースの見出しは15.5文字

「人間は文章を読まない」と仮定した場合、どうやって文字情報を知覚しているのかというと、感覚的には「見る」が近いと考えられています。

こちらの画像は「Yahoo!ニュース」に表示されている記事の見出しです。

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実はこれらのタイトルは、あるルールに則って書かれています。すべて全角15.5文字以内で書かれているのです。

Yahoo !ニュースの見出しは、長い間、13.5文字でした。その後、より正確に記事の内容を反映するため、14.5文字に変更され、現在は15.5文字になっています。これは、調査により導き出された最適な文字数です。近年は見出しにより情報が誤って伝わる危険性もあり、文字数を増やす方向になっていますが、実はおよそ20年もの間、13.5文字で統一されていたのです。

さらに、人間の視覚情報処理に関する研究でも、こんな実験結果があります。京都大学大学院の下田宏氏の実験によると、人間が眼球を動かさずに知覚できる文字数は、9〜13文字という結果でした。

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出典:ガベージニュース「タイトルは13文字までが適切?

日本のウェブ上で、短い文章で物事を伝えるという行為において、最もたくさんのデータを保有し、膨大な回数の試行錯誤を繰り返したのが、Yahoo !ニュースの見出しなのではないかと思います。その試行錯誤の結果と、科学的な研究結果がほぼ一致しているのは、偶然ではないでしょう。

人間の脳から文章を考える

私は理系出身で、大学生の頃は脳科学の研究をしていました。専攻は人間の視覚に関する分野で、卒業論文のタイトルは「近赤外分光法による視覚野と前頭葉の同時計測」です。「視覚情報が人間の脳でどのように処理されるか」について分析していました。また、広告会社で勤務していたときも、脳計測を応用したニューロ・マーケティングの実用化について大学と共同で研究するプロジェクトに参画していました。そのような過去の経験から、文章についても、人間の脳から考えるようにしています。

人間の脳が文章を知覚するプロセスは、大きく2つに分類できます。1つは、文字を目で認識する過程。もう1つは、目で認識した文字を、情報として処理する過程です。この2つの過程において、それぞれの読み手のコスト(負荷)を最低限に抑えることで、読み手ファーストな文章を書くことができるようになるのです。

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脳は文章を読むことに適応できていない

次に、人類の進化から、文章を読むことについて考察してみたいと思います。

私たちの祖先であるホモ・サピエンスが地球上に誕生したのは、今から20万年前。20万年前と聞くと、途方もなく昔のことのように聞こえますが、このときすでに、その身体は現代人であるわれわれと見分けがつかないほどそっくりであったといわれています。彼らはその時間の多くを、採集や狩猟に費やしました。当然、彼らの世界に文章はもちろん、文字すら存在していません。

そんな彼らが、初めて文字に出会ったのが、5000年前。ホモ・サピエンスは、20万年の歴史のうち、わずか5000年しか文字に触れてこなかったのです。割合でいうと、たったの2.5%。 97.5%は、文字のない世界ですごしていたのです。20万年前からほぼ私たちと変わらないホモ・サピエンスが、その歴史のうち、たった2.5%しか文字に触れてこなかったとしたら、私たちにとって文字がいかに新しいものであるかがよくわかります。人類にとって文字とは、まだ使い始めたばかりの新しいツールであり、うまく使いこなせなくて当然なのです。

さらに近年、私たちにデジタル化という最も大きな変化が訪れました。2021年のベストセラーとなった『スマホ脳』(新潮新書)で、著者のアンデシュ・ハンセン氏は、ホモ・サピエンスの20万年の歴史を、2ページにわたり1万個の点で表現しました。そのうち、私たちがスマホに触れたのは、1万個の点のうちのたった1つ。「現在のデジタル環境は、人類にとってきわめて特異な状態である」と述べています。

20万年のうち、文字が生まれて5000年。デジタル化されて十数年。現代人の私たちが多くの時間を費やしている「スマホで文字を読む」という行為に、人類の脳はまったく適応できていないのです。

現存する世界最古の文章

5000年前に人類が初めて残した文章とは、いったいどんな文章だったのでしょうか? 大ベストセラーになったユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書『サピエンス全史』(河出書房新社)によると、私たちの祖先が残した最初期のメッセージには、たとえば、「29086 大麦 37か月 クシム」のようなものだったそうです。読み方は、「合計29086単位の大麦を37か月間に受領した(クシム)」。

このことについて、ユヴァル・ノア・ハラリ氏は「残念ながら、現存する最初期の文書には、哲学的な洞察も、詩歌や伝説や法律も、国王の勝利さえも記されていない。それらは税の支払いや負債の累積、資産の所有権などを記録する、退屈な実用文書なのだ」と書いています。彼にとっては少しがっかりするような内容だったと読み取れます。

しかし、私は逆に、こうした「実用文書」こそが、私たちにとって本当に必要な文章であることの証明なのではないかと思いました。それは、エモーショナルに人の心を動かす情緒的なものではなく、この本が目指す、短くシンプルな文章で、正確に物事を読み手に伝える技術なのです。

バズらなくていい、エモくなくていい

文章に苦手意識がある人が多い理由の1つに「心をつかむ文章を書かなければならない」という誤解があると思っています。エモーショナルな文章、気の利いた文章、バズる文章など、「人の心を鷲づかみする文章こそが良い文章だ」とみんな思っているのです。そして、そうした文章が書けないので、自分は文章が苦手だと思ってしまう。

しかし、本当にそうでしょうか? あなたの生活で、心をつかむ文章が求められることは、どれぐらいあるでしょうか?

たとえば、リモートワークのチャット。あなたはエモーショナルで、気が利いていて、バズるような文章で、相手の心を鷲づかみにする必要があるでしょうか? そんな機会はほとんどないと思います。それよりも大事なのは、仕事を円滑に進めるために、 あなたの伝えたいことを、相手に正確に理解してもらう技術です。

私はこの技術こそが、あなたが本当に身につけるべき技術だと思っています。バズる文章も、エモい文章も、書けなくて大丈夫なのです。

文章は目的ではなく手段である

「バズる文章を書きたい」「エモい文章を書きたい」と考えている人は、文章を書くことそのものが目的になっている可能性があります。文章というのは、目的ではなく、あくまで手段です。

何か達成したい目的や課題があって、それを解決するための手段として、文章は存在します。本書に書かれている文章がまさにそれです。「あなたの文章力を向上させる」というたった1つの目的を達成する、そのためだけに、すべての文章が書かれています。ただ文章を書いて本を出すことが目的ではないのです。

文章術について書かれた書籍の表紙には、「バズりたい人必見!」のようなコピーが並んでいます。しかし、ここで考える必要があるのは、「あなたの人生において、本当にバズる必要があるかどうか」ということです。

「バズる」ということはあくまで手段です。バズらせることは、あなたにとって「本当にメリットがあるのか?」をしっかりと考える必要があります。

これは商品の広告でも同じです。少し前の話ですが、クライアントが「とにかくバズる動画を!」のような発注を広告代理店にしていた時期がありました。これがまさに、バズることが手段ではなく、目的になっている状態です。目的はあくまで商品を売ることで、バズらせることは、その手段の1つでしかありません。

バズることが目的化するとどうなるかというと、たとえうまくバズったとしても、「商品はまったく売れない」というような状況が起こりうるのです。

最近「バズる」という言葉が死語になりつつあるのは、「バズらせることが本質ではない」と気づき始めた人が多くなってきたからなのではないかと思います。

もしあなたが自分の書いた文章をバズらせたいと思っているなら、なぜバズらせる必要があるのか、それは本当にあなたのメリットになることなのかを、ぜひ考えてみてください。

以上が『秒で伝わる文章術』の「第1章 人間は文章を読まない」の部分です。最後までお読みいただき、ありがとうございました!少しでも興味を持っていただけたのなら、ぜひ購入をお願いします…!

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