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海外で内戦や戦争に遭遇したら、あなたはどう行動しますか

天安門事件

今朝、フジテレビの「日曜報道 THE PRIME」が天安門事件を取り扱っているのを見ました。天安門広場で戦車に轢かれて両足を失ったという中国人。日本人を空港まで退避させ飛行機で中国から脱出させるために尽力した外交官とANA職員。現地にいた日本人留学生。それぞれがインタビューで当時の体験をお話されていました。

印象深かったのは、空港機能が完全に麻痺していた中、ANA職員が自らの判断で規則を破り、日本人と、日本人だけでなく外国人も日本行の飛行機に乗せて中国から脱出させたことです。「首になることを覚悟してやった。」そうおっしゃっていました。立派な判断をされたと思います。

筆者は天安門事件が起きたとき、アメリカのノースカロライナにあるMCNCという半導体関連の研究センターで論文発表のためワークショップに参加していました。
あの時は本当に異様な雰囲気でした。
知人のイリノイ大学教授は、ご自分の研究室に中国人留学生を受け入れていました。ワークショップの期間中、教授は落ち着きなくあたふたとされていました。我々とは距離をおき、何かコソコソした感じで。他の大学の先生方にも似たような動きが見られました。

コソコソ、ヒソヒソ。

真相は分かりませんが、中国人留学生を保護するために大学当局とのやり取りが大変なのだろう、個人的にはそんなふうに推測していました。

そのとき一緒にMCNCワークショップに参加していた海外事業担当部署の同僚から言われた言葉は今でも覚えています。

「もし海外で内戦とか戦争とかに遭遇したら、アメリカ大使館に逃げ込め。そのほうが生き残れる可能性が高い。日本大使館は助けてくれないぞ。」

たび重なる邦人保護失敗

イラクのクェート侵攻

天安門事件の翌年1990年8月。イラクがクェートに侵攻しました。このときに日本人は逃げ出すことができずに人質になったのを見て、同僚に言われた言葉は本当だったとしみじみ思ったものです。「日本政府は日本人を助けてくれない」と。

ご参考までに外交青書の一部を以下に引用します。さすがに反省の色が見えますが、引用文の後には言い訳もいろいろ続いていました。なんだかな。

湾岸危機は同時に、邦人保護の観点からも先例のない事態を引き起こした。すなわち、イラクはクウェイトに侵攻した後、クウェイト及びイラクに在留していた一部外国人の出国を国際法に違反して禁止したのみならず、その一部を拘束し、「人間の楯」としてイラクにとって戦略重要な施設に分散して収容した。政府は、イラクのクウェイト侵攻に際し、安全の確保のため合計261人のクウェイト在留の日本人を在クウェイト大使館に収容した。同大使館がイラク軍に包囲された後、クウェイトに在留していた日本人のうち在クウェイト大使館で保護していた者を始め245人はバグダッドに移動し、そのうち213人はバグダッドでイラク政府に拘束され、多数が戦略上重要な施設に分散して収容された。また、イラクに在留していた日本人のうち8月14日までに出国しなかった214人が出国を認められなかった。

外交青書  「わが外交の近況」1991年版(第35号)第2章第4節 「人質問題」 

日本人を人質にとられた日本政府はその後、イラクとの交渉に成功して12月に日本人人質は解放されます。しかし、バグダッドでの解放交渉に、日本航空はアンマンまでしか飛ばず、バグダッドへはトルコ航空が飛んでくれたのです。

イラン・イラク戦争

1985年3月、イラン・イラク戦争。このとき、テヘランには215名の日本人が救出を待っていました。しかし、またもや日本からの助けは来ませんでした。助けてくれたのはトルコ。
日本は、自衛隊の海外派遣ができない、日本航空は安全が保証できないところには航空機は飛ばせないと、助けには行きませんでした。日本から救援機がこないことを知った当時の野村イラン駐在大使は、トルコの駐在大使に助けを求めました。そうしてトルコが日本人を救出するためテヘランに飛行機を飛ばしてくれたのです。

トルコに足を向けて寝られませんね。

アフガニスタンのカブール陥落

2021年8月、タリバンが政権奪取し、アメリカがアフガニスタンから撤退した。欧米や韓国の人達が早々とアフガニスタンを脱出し、日本大使館員も全員、外国の軍用機で脱出したのに、一般日本人だけが空港に辿り着けずにアフガニスタンに置き去りになったことは記憶に新しいと思います。

邦人保護ができない(しない)のは何故なのか

それぞれのケースを分析すれば、それなりの法律による制限、事情と原因があることでしょう。だからといって、「ああ、そうですか」とは済まされません。

中東、南米、中国・台湾、朝鮮半島、東ヨーロッパ。最近は世界中どこへ行ってもきな臭く、こういった戦禍に巻き込まれる可能性は誰にでもあります。海外どころか、国内だって今や危機感をもって望まないといけない状況になっています。沖縄出身の知人の実家では、町内会で避難壕(防空壕?)を作ることを決めたそうです。

筆者は、このようになる根本原因は日本国憲法にあると思います。憲法を遵守した摩訶不思議で複雑怪奇な法律を作ってオペレーションする限り、邦人保護は失敗する確率のほうが圧倒的に高いと思わざるを得ません。

手遅れになる前に、きちんと日本人を守ることができる憲法にしたほうがよいと思います。

余談:憲法17条は継承されている

法律の専門家ではないのでうかつなことは書けないのですが、「聖徳太子の憲法17条」は廃止されていないので現在も「継承」されているそうです。ちょっとおもしろいので、憲法17条をネット検索してみました。

憲法は国家権力を縛るものなので、日本の政治家と官僚には「こっちの方がいいんじゃない?」と素人一般人は思いました。

一、以和為貴  和を大切にし、人と争うことのないようにしなさい
二、篤敬三寶  三宝(仏とその教えと僧)を敬いなさい
三、承詔必謹  天皇の命令は必ず謹んで聞きなさい
四、以禮為本  役人たちは、礼儀を正しくしなさい
五、絶餮棄欲  邪な心をすて、公平な態度で裁判をしなさい
六、懲悪勧善  悪をこらしめ、善をすすめなさい
七、掌宜不濫  役目にあった人に仕事をさせなさい
八、早朝晏退  役人は、朝早くから夕方遅くまで仕事をしなさい
九、信是義本  お互いに信じ合うようにしなさい
十、絶忿棄瞋  人が異なる意見でも怒らないようにしなさい
十一、明察功過 功績、過失を明らかにし、必ず賞罰を加えなさい
十二、勿斂百姓 役人は、人民から勝手に税を取り立ててはいけない
十三、同知職掌 役人は、他人の役目もよく知っておくようにしなさ
十四、無有嫉妬 役人たちは、お互いに嫉妬の心を持ってはいけない
十五、背私向公 自分の利益を考えずに、国のことを大事に考えなさい
十六、使民以時 人民を使うときは、その時期をよくみて使いなさい
十七、夫事不可獨断 大事なことは、必ずみんなと相談しなさい