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セーラの叔父さま 38話

壁のすぐ向こう側

ようやく鈍いカリスフォード氏にもセーラの正体がわかったらしい。
しかし、カリスフォード氏がクルーの娘を探し出して二年間。隣にその娘が居たのに全く気がついていなかったのよね。
原作のセーラはそこでこう呟く。

「その間中ずっと私はミンチン先生の所にいたのですね。壁のすぐ向こう側に」

ロンドンのタウンハウスというのは何軒かの建物どうしが壁を共有して横に繋がっている構造です。
学校と普通の家が壁を共有して繋がっているなんて日本にいるとあまりイメージがわきませんよね。
だから私が幼い頃この「小公女」を読んでも学校の壁のすぐ向こう側に隣の家があるなんてイマイチ理解出来ていなかったように思います。
学校というと日本人なら大きな運動場があって何百人も生徒達がいて・・・という風に思うのが普通ではないかと思います。
ただ、私も大人になってアニメの「小公女セーラ」や実写版「ピーターパン」や「メリーポピンズ」などの映画に出てくる家もタウンハウスだと気がつきました。
世界は広い。いろんな住居形態があるんだなあって思いますね。


セーラがクルー氏の娘だと判明した頃、隣のミンチン上流女史寄宿学校ではちょっとした騒ぎが起こっていた。
ミンチン先生はセーラに用事をさせようとセーラを探していたがいくら探してもセーラが見つからない。
そこへフランソワーズがやって来た。
「フランソワーズさん、セーラはどこにいるのです?」
「さあ、コックのお手伝いか、お使いか・・・私は知りませんが何かあったのですか?」
フランソワーズ(叔父さま)はもちろんセーラの行き先を知っているがそれを答えるはずはない。
「いいえ、知らないならそれでよろしい。他に誰かセーラを見かけた者はいないのですか!」

しばらくして小間使いの一人がセーラが隣の家に勝手に入っていくのを見たと証言。
ミンチン先生は怒った。
「そのようなぶしつけは許しません。これから出かけて行って失礼を謝ってきます」

怒りで顔を真っ赤にして隣に行く準備をするミンチン先生。
怒りのためかなかなかコートに手を入れられず焦っている。
その様子を冷静に見ているフランソワーズ。
(ミンチンさん、セーラがお隣に行ったことぐらいで怒るなんて自分がセーラにどれだけ酷いことをしてきたか自覚はしているんだろうね。セーラがお隣にミンチンさんのしてきたことをばらされると困ると思っているんでしょうね。
ばらされる以上のことが起こるんですよ。もうあなたは今から深い後悔をしなければならないのですよ。まあ、自業自得だから仕方ないけどね。哀れなミンチンさん・・・)

アニメ版のセーラは部屋を暖かくして食事の用意をしてくれた魔法使いの正体はお隣のインドの紳士だと気がついていたようだけど、原作のセーラは全く気がついていなかった。

父親から財産を奪って逃げ出した悪い友達だと思って、セーラはそのことばかりを考えていたのだ。
しかし、カーマイケル夫人から、魔法使いの正体がカリスフォード氏だったことを聞かされてセーラは彼が悪い人間ではなくて優しい人だということに気がついたのだ。
カリスフォードも鈍いけど、セーラもかなり鈍いかもしれない。

「つまり、私のお友達はおじさまだったのですね」
セーラは痩せ細ったカリスフォード氏の手に顔を近づけ、何度も何度もキスをした。・・・というのは原作のセーラ。中の人が中年の日本女性である私は未だに手にキスをするという動作は苦手なのです。
でも、感謝の行為はするべきなので、手を取って両手でその手を包み込む。

もし、カリスフォード氏が隣の可哀想な下働きの女の子にまるで魔法使いのようなことをしていなかったらセーラはどうしただろう?
カーマイケル夫人にカリスフォード氏は悪い人ではないと説明して貰っても、父親のお金を奪って死に追いやった悪い男だという思いは払拭できなかったのではないだろうか?
ラム・ダスが隣の女の子に興味を持って主人のカリスフォード氏に女の子の話してなかったらそういう展開にはなっていなかったはずだ。・・・いや、それよりラム・ダスがその女の子がインドの言葉を知っているっていうことを主人に話していたらもっと早くセーラがクルーの娘だと判明していたに違いないのだが・・・。


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