ebimiya

趣味部屋です。小説投稿します。感想いただけると嬉しいです。

ebimiya

趣味部屋です。小説投稿します。感想いただけると嬉しいです。

最近の記事

アップルの中庭で #3 お月見とピザパーティ(2)

半年前。 病院に入院してたころ、朝が地獄だった。 息をしてる自分に絶望してた。 別に死にたいわけでもないんだけどね。 ----------- 朝、目が覚めると、 天井の塗装のムラでできた、小さな陰影が目に入る。 それをじっと見つめる。 指一本動かすのが、ゾウの片足持ち上げるくらいの重労働に思える。 持ち上げさせるために、自分の心と指先の筋肉を宥めるんだけど、全然だめ。 心と体もバラバラだし、体の部位もバラバラなの。 なんか脳からの指令が途中で止まったり、そもそも指令が下さな

    • アップルの中庭で #3 お月見とピザパーティ(1)

      学生の頃、春休みを全部使ってヨーロッパに貧乏旅行に行った。 アルバイトで貯めたお金を握りしめて、初めての海外旅行だった。 初めて空港に降り立った時は、周りの人全員が悪い人に見えて怖すぎてちびりそうだったのに、 帰る頃になると地元民と変わらないくらい図太くおまけを交渉するようになっていた。信号のない道路を、車の運転手と目線を合わせながら、空気を読みながら渡れるようにもなった。 わたしの見つけた新たな住処兼、仕事場のアップルはヨーロッパによくある、中庭のあるアパルトマンによく

      • アップルの中庭で #2 親友よりも、他人のほうが優しいこともある(2)

        飲みの場で、親友にわたしの望まない形で性自認・性的指向をバラされた。 人生でトップ3に入るくらい、しんどい事実だった。 実は、今回のことで彼女にされたことが「アウティング」だったんだという認識に行き着くまで、数ヶ月くらいかかった。 怒りとか悲しみとか悔しさとかもあったけど、 なんでこんなことがしんどいんだろうっていう、自分の気持ちの置き所のなさというか… それが1番大変だった。 アウティングという言葉は知ってたんだけど、自分の身に起こってみると、いまいち繋がっていかなかった

        • アップルの中庭で #2 親友よりも、他人のほうが優しいこともある(1)

          中学生の時から、ずっと仲良しの親友がいた。 お互いの家に泊まったり、旅行に行ったり。彼女のご両親や兄弟の連絡先だって知ってるくらい、仲が良かった。 歯車が狂い始めたのは、ちょうど一年前。 彼女が通いつめてる居酒屋の常連さんで気になってる人から、ちょっとしたセクハラを受けたと言い始めてから。 好きならセクハラじゃないじゃんて思うでしょ? これが既婚者なんだな。てことはセクハラじゃね?とわたしは思う。 おい、親友。ちょっと嬉しそうにするなや。 気持ちはわかる、と言いたいところ

        アップルの中庭で #3 お月見とピザパーティ(2)

        • アップルの中庭で #3 お月見とピザパーティ(1)

        • アップルの中庭で #2 親友よりも、他人のほうが優しいこともある(2)

        • アップルの中庭で #2 親友よりも、他人のほうが優しいこともある(1)

          アップルの中庭で #1

          30歳、アロマンティックの女は社会に居場所なんかないわけ…? 仕事をして結婚して出産をする。そんな普通の女性として生きられない私は、女として失格なのか。 歳を重ねるごとに、気持ちが重くなっていく。 もしかしたら違うかもって 自問自答は何千回何万回と繰り返した。 もう透明人間になりたい、できるだけ悪目立ちしないようにって日々過ごしてる。 でもたまに思う。 わたしはここにいるんだって。 大声で叫びたくなる。 ---------------- 「仕事に生きよう」と一緒に夢を

          アップルの中庭で #1