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【FC27】 総合芸術・即興演奏と意味論の宇宙

こんにちは。音楽家のMiyaです。今日は総合芸術における即興演奏と意味論の宇宙についてお話します。総合芸術は複数の分野の芸術が合わさって創造される一つの統一的な芸術。現代ではコラボレーションという言い方もしますね。様々な情報が溢れる現代で、異なるジャンルのコラボレーションが増えてきているように感じます。

異なる分野のコミュニケーションの方法

音楽だったら音楽、ダンスだったらダンスが、表現をする上での専門分野の”言語”になりますが、異なるジャンルのコラボレーション、例えば、音楽家とダンサーがコミュニケーションする時、音楽の言語はダンサーは使わないし、音楽家もダンサーの言語は使わない。(たまに全て自在に扱う人もいますが)表現する時は別々の言語。では、どうやってコミュニケーションを取るかというと、。お互いの言語が共鳴するポイントを探しつつ、なんとなく勘というか、非言語でのコミュニケーションが増えてくると思います。

今まで知らなかった新たな表現が生まれるのが、異なるジャンルでコラボレーションをする上の醍醐味。とはいえ、お互いの信頼だけで、感覚的にパフォーマンスを展開すると、うまくいく時は最高ですが、ミスコミュニケーションのまま、モヤモヤ終わってしまう事もあります。かといって、ガチガチに構成を決めても、ハプニングに対応できなかったり、創造の喜びが失われてしまう事も。

私は書道家の白石雪妃さんと長年一緒に制作していて、最初に二人のコンセプトについて話あった時、二人の言語が共鳴する所を探して辿り着いた方法が、"漢字の訓読み”でした。

今日は、私が異なるジャンルの表現者と即興演奏をする時にヒントに使う”響きの共鳴”についてお話します。どんな表現でもどこか共鳴する所があります。音楽と書道の場合はは”漢字の訓読み"。今回はこの事を掘り下げてお話したいと思います。漢字の訓読みに着目すると、古代の日本人がどのように「響き」を捉えていたか、という事が見えてきます。

漢字の訓読みと即興演奏の関係性

訓読みとは

日本古来の言葉を話す人々が漢字に出会ったのは、1世紀頃と推定されています。
その前は、言語を表す文字がなく、神話や伝承は口伝で伝えられていました。漢字が日本に伝わり、音読みと訓読み、2種類の発音の方法が生まれました。訓読みは、もともと日本にあった言葉に漢字を当てたもの。例えば、「きく」という漢字にいくつもの漢字が当てられている事からもわかるように、古代の日本人は繊細な発音の違いで、幾つもの意味を使い分けていたのですね。

即興演奏と訓読み

同じ発音で、状況によって意味を使い分ける事は、空間に応じて自在に音を展開する即興演奏にも通じます。即興演奏は奏者の音楽的背景が音に影響する事が多いです。例えば、440ヘルツでA(ラ)と設定した音を演奏するとします。その音が変わる事はなくても、前後にどのような音が続くかで、音楽的意味が変わってきます。また、そのA(ラ)の音をどのようなニュアンスにするか、繊細なコントロールでも変化しますね。この点も訓読みの発想と似てると感じています。背景は持ったまま、複数の意味を状況によって使い分ける。全ては「響き」から始まる事。その響きのルーツに迫る事で、未来の発想を知る事にもなります。

そのルーツが見えなくなってしまうと、未来の発想に繋がらなくなる、という事があります。時代は変化し、技術も進化しますが、それとは別で、響きのルーツを失うと、せっかくの豊かな情報を受け取る事ができない、という事があります。

漢字廃止論

日本語は音読みと訓読みのハイブリッドで、言語としての機能だけでなく、古来よりの思想も包括します。戦後、GHQ主導で日本語をローマ字表記にして、漢字廃止する案が検討された時期がありました。

GHQの要請で米国から派遣された「アメリカ教育使節団」(大学の学長、教授、教育行政官ら27人)は、日本語をローマ字表記にして、漢字習得にかける勉強時間を外国語や数学の学習にあてるべきだと考えた。1946年に「アメリカ教育使節団報告書」を発表している。(邦訳は講談社学術文庫に所収)

「GHQは、漢字のせいもあって日本人が戦争に走ったと考えたんですね。英語のアルファベットのような『表音文字』のほうが、漢字のような『表意文字』より進んでいるとも考えていました」

教育使節団は、難しい漢字のせいで日本人の識字率が低いことを示そうと、全国調査を命じる。調査は、1948年8月に、全国から抽出された約17000人を対象に行われた。1問1点として90点満点で採点され、平均点は、100点満点に換算して78点だった。正解がゼロ(識字できない人)は2%程度にすぎなかった。これは教育使節団の想定と全く異なっていたこともあり、漢字廃止には至らなかった。

GHQだけではなかった「漢字廃止論」 いま、漢字を使い続ける意味を考える

漢字の難しさが識字率に影響がないというのは興味深いですね。もしも日本語が全てローマ字になっていたら、日本人的感覚は今頃消滅していたでしょう。それが良い事か、悪い事なのかは、歴史をどの視点で見るかで変わるのかもしれません。私は、今、美しい日本語に響きに触れる事ができ、音楽のインスピレーションを頂ける事に感謝します。自分の言語を尊敬する事と他の言語を尊敬する事は同じ事。コミュニケーションの第一歩として、この土台がある事は、今後様々な非言語のコミュニケーションをとる上でも大切な事と捉えています。

脱亜入欧が日本の音楽に与えた影響

日本語はローマ字になる事は免れましたが、戦後、常用漢字は大幅に簡素化されました。漢字だけでなく、明治以降の脱亜入欧の影響で、古代からのつながりが切れてしまったもののもう一つの代表の一つは音楽です。日本の音楽には興味深い思想がたくさん詰まっていますが、リンクが切れてしまっていたら、つながる事ができません。次の記事で、日本古来の音楽の魅力と、それをどう現代社会に反映していくのかをお話しします。

漢字の訓読みと即興演奏をテーマにしたパフォーマンスの紹介

書道×音楽 直書観音
※書道家の白石雪妃と音楽家Miyaのユニット「直書観音」。この記事は幻想的な空間を生み出す二人の表現の核となるキーワードを紹介しています※
どなたでもお楽しみいただける公演です。是非ご来場ください。

2023年 11月19日 直書観音 Vol.17 うるおいの座


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