劇場に足を運ぶことを忘れないで~日本講演新聞

新聞なのに、ニュースは載せない”日本講演新聞”が、今週も、心揺るがす情報をお届けします。

 春先からの流行り病の影響だろうか、映画の興行で前代未聞のことが起きている。

 芥川賞作家で、お笑い芸人の又吉直樹さんの小説『劇場』が映画化されたのだが、なんと7月17日の劇場公開と同時に、アマゾンプライム・ビデオでネット配信されている。

 映画は、出来る限り映画館に足を運んで観るのが制作者・出演者に対する礼儀だが、昨今の状況を鑑みた配給会社の吉本興業がステイホームでも鑑賞可能にしたのである。

 この物語は、演劇に人生を賭けた1人の青年の愚直なまでのひたむきさと愛し方が分からない彼女との悲哀の日々とを織り交ぜながら、それでも演劇の素晴らしさを伝えている。

 主人公の「永田」は劇作家で、彼が描く芝居はことごとく当たらない。評論家からは酷評され、観客の入りも悪い。

 「永田」は、街で声を掛けた女性と付き合うようになり、やがて彼女のアパートに転がり込み、一緒に暮らし始めたまではよかったが、彼には全く生活力がなかった。

 数か月が過ぎた頃、彼女から「せめて光熱費くらい入れてくれない?」と頼まれると、「ここは俺の部屋じゃないよね。人の部屋の光熱費を払うって意味分かんない」と言う始末。ここだけ切り取っても、どれだけ彼がダメ男かお分かりだろう。

 そんな感じで観客はずっと胸クソ悪い気分でこの映画を観る。それがこの映画の狙いでもある。だからこそ演劇ならではの見事なラストシーンに観客は感動し、「いい映画を観た」という気持ちに包まれる。

 映画は、昭和の時代からテレビでも楽しめていた。やがてビデオになり、DVDになり、今ではネット配信になった。わざわざ映画館に足を運ばなくても楽しめる娯楽である。

 しかし演劇は違う。

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