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道徳の教科書に載りました~日本講演新聞

感動と学びを世界中に~全国の講演会を記事として発行する日本講演新聞がお届けします。

この春、中学校の道徳の教科書に、日本講演新聞の記事が掲載されました。

それに伴い、授業するときのねらいやポイントがまとめられた、先生用の教科書『とっておきの道徳授業14』(日本標準)にも掲載されました。

今回はその掲載記事をご紹介します。

アビリーノ症候群~反対意見が言いやすい包囲環境~

                ジャーナリスト 幸田シャーミン氏

 誰かがリーダーシップを取ろうとするとき、そのリーダーに反対の意見を持っている人がいるかもしれません。ところが私たちは対立が嫌いなので、「安易な合意」や「偽の合意」に走ったりします。

 これを「アビリーノ症候群」といいます。そのエピソードです。

 組織学者のハービーさんという人が、ある日、妻の実家に遊びに行きました。実家はテキサス州にある小さな町です。8月の暑い日でした。

 実家のお父さんが「今からアビリーノにドライブに行こう」と言い出しました。

 それを聞いたハービーさん、「何てことを言うんだ!」と思いました。アビリーノというところはその家から180キロも離れていて、しかも砂漠です。車にはエアコンが付いていません。「この暑い日に今からアビリーノに行くなんてとんでもない」と思ったのです。

 ところが横にいたハービーさんの妻が「あら、お父さん、それいいんじゃない。ねぇあなた」とハービーさんに言うわけです。

 咄嗟にハービーさん、「僕はいいけど、お義母さんが何て言うかね?」と、お義母さんが否定してくれることを期待したら、お義母さんも「あら、いいわよ」ということになって、みんなの合意の上でアビリーノに行くことになりました。

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 すると想像した通り、窓を開けて走るからほこりまみれ、汗まみれ。

 途中、食事をしようと思っていたレストランが休みだったので、すごくまずいお店で食べ、また片道180キロの道を帰っていきました。

 家に入ったらみんなバラバラに座り、一言も口をききませんでした。

 しばらくしてお義母さんが「実は私は家にいたかったのよ。でもみんな行きたそうだったからお付き合いしたのよ」と言ったんです。

 それを聞いたハービーさんの妻は、「私だってあの暑さ、想像しただけで行きたくはなかったけど、あなたが行きたいと言ったから…」とハービーさんに言うわけです。

 彼は咄嗟に「僕は自分から行きたいと言った覚えはないよ。同意しただけだよ」と言ってしまったのです。

 そしたらお義父さんが「せっかくおまえたちが遊びに来てくれたのに晩ご飯が冷凍食品じゃ気の毒だから、僕は行きたくなかったけど君たちのために誘ったんだ」と言ったのです。

 この話でハービーさんは何を言いたかったかというと、家族という最も気楽で親しい関係であっても本当のことがストレートに言えない。それで「偽の合意」が起きてしまうということです。

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 そこでハービーさんは、「自分たちにとって結果的に破壊的なマイナスの行動を組織が取ってしまう合意」を「アビリーノ症候群」と名付けました。これは組織や会社でも起きるんですね。

 「なんでこんな企画が誰の反対もなく通ってしまったのか」と。

 みんな「自分さえ我慢すればいい」「反対意見が言えない雰囲気がある」ということで「偽の合意」をしてしまうんですね。

 これを避けるには組織の中で合意をするときに、リーダーと違う意見を持っている人がいたら、その人が意見を言える環境をつくることが大事です。これを「包囲環境」といいます。「包み込む」環境です。

 「本物の合意」をしていくためには対立が避けられないときもあります。でもそれが破壊的な対立意見でなければ、「本物の合意」をつくるための摩擦はかえってヘルシーだということです。 

(1999年2月8日号より)

この授業のねらい…集団の中で意思決定をする際、相手の意見をやみくもに受け入れることが思いやりでないことに気づき、集団の中で相手を大切にしようとする態度を育てる。

≪授業の流れ≫
1.感想の発表
2.問題点を探す
3.どうしてバービーさん家族はそう言ったのか
4.バービーさん家族の行動hは、集団として望ましい行動だったのか
5.この時間で学んだことの振り返り


子どもたちに響けばいいなと思いました。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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