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UX事例勉強中 ナイキ編

こんにちは、UXデザイナーの宮地です。
UX視点でサービスを提供している企業や、製品開発にUX手法を上手に活用している企業を調べて、自身の開発の参考にしたいなと思ったことを備忘録的に記事掲載していきます。

自己紹介

私はもともとプロダクトデザイナーとして自動車関連のインパネやメータ、ナビなどのプロダクトデザインをしてきました。2013年から先行デザインをマネジメントする立場になり、ここ数年はモノよりもコト発想のデザインが中心となって来たため、新サービス・新ビジネスをUX視点から、その有用性を検証することがミッションとなっています。


UXデザインをどう捉えるか

UX(ユーザエクスペリエンス)という単語を、本当によく聞くようになりました。多くの人が言っているように、UXの捉え方、使われ方、概念、定義は様々な形です。私の業務でもサービスデザイン、UIデザイン、HMIデザイン、デザインリサーチなど様々な場面でUXを使っていますし、業務分野も車載のHMI、車内空間環境、物流、農業、F-Iot、DXなど多彩で、製品開発にもサービス開発にも使われています。

ではUXデザインとは何なんでしょうか? HCDの理事でもあるインフォバーン井登取締役は、エクスペリエンスデザインを「ユーザが、本当はそうしたかったけれども、そうしたいと言えなかったこと、無意識に諦めていたエクスペリエンス(経験)を目の前に差し出してあげること」と言っています。
私もこの言葉を一つの基準軸としてUX開発を行っています。

ブランディングにおけるUX視点

私がUXデザインに取組み始めた時に、紹介された本があります。ブランドコンサルティングであるスコット・ベドベリ著「なぜみんなスターバックスに行きたがるのか?」です。ベドベリ氏は広告会社を経て、ナイキの広告担当役員、スターバックスのマーケティング副社長を歴任しています。UXデザインなのに広告?ブランド?と思いましたが、著書を読んでみるとベドベリ氏が実施してきたことは、まさにUXデザインでした。


彼がヘッドハンティングされたとき、ナイキは世界第3位のスポーツシューズメーカで、第1位アディダスや2位リーボックに大きな差をあけられており、リーボックを抜いて北米1位になりアディダスを抜いて世界1位になることが彼に与えられたミッションでした。当時のナイキは競技生活を目指す真剣勝負のアスリートだけを客層ターゲットに絞っていたために、技術力は高いのだけれど自ら限定された市場にのみフォーカスしていました。さらに時代変化により消費者も、本格的にスポーツをする人のためだけのものではなくなり、女性や老人も参加できるようなフィットネスなどの楽しむスポーツに移行を始めていました。
こうした流れを受け、ナイキを世界1位のスポーツメーカにするために、「若者であろうと年配であろうと、プロスポーツ選手であろうと、アマチュアであろうと、日々のランニングを欠かさないスポーツマンであろうと、週末だけのスポーツマンであろうと、テニスプレーヤーであろうとウォーキング愛好家であろうと、あるいは幼い子供であろうと、ナイキの世界にはあらゆる人の居場所がある」という社内メッセージをベドベリ氏は掲げました。
社内には当然反対意見も多くありましたが、彼はやりきることに成功し今も続くブランドメッセージ「Just Do It.」を作り上げ、ナイキ大躍進のきっかけになりました。本格的なスポーツマンでなくても、多くの人々にスポーツする喜び・体を動かす喜びを、従来から持っていた高い技術でユーザに価値提供することに成功したのです。

上の動画が1988年のJust Do Itのコマーシャル映像になります。下の動画が20年後の2018年の映像になります。


20年続くメッセージと価値提供

現在のナイキのHPにあるスローガンには、20年前にベドベリが掲げたメッセージの思想が引き継がれています。

BRING INSPIRATION AND INNOVATION TO EVERY ATHLETE* IN THE WORLD. *IF YOU HAVE A BODY,YOU ARE AN ATHLETE.

彼がナイキを去り20年以上経った今でもナイキの根幹になっていて、多くの人に愛されるスポーツメーカ企業であり続けるための重要な企業理念になっています。当時UXと言う言葉は、まだありませんでした。でもブランディングをUX視点で実践して大成功した事例の一つであると思えますし、UXを実践していく上でとても参考になる事例です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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