UX事例勉強中 スタバ編
こんにちは、UXデザイナーの宮地です。
UX視点でサービスを提供している企業や、製品開発にUX手法を上手に活用している企業を調べて、自身の開発の参考にしたいなと思ったことを備忘録的に記事掲載していきます。
今回は、スターバックスに関して纏めてみました。正直スターバックスのUX体験って語りつくされているので、どうしようかな?と迷いましたが、自身の備忘録だからとエクスキューズしながら書いています。
今回は以下の三冊を参考に引用しました。
ハワードシュルツの金言
「スターバックスはコーヒーを売っているのではない、コーヒーを楽しむ空間を売っているんだ」これが創業者ハワード・シュルツの有名な一言ですよね。ちょっと違う言い回しで”素晴らしいコーヒーを提供することよりも、むしろコーヒーとの素晴らしい出会いを提供すること”と紹介していることもありますが、いずれもモノとしてよりも空間やコトの提供価値を重視していることを示しています。
更に違う文献では、”ある時ハワードシュルツが「うちの店のパートナー(スタバの販売店員)がすごい発見したんだよ。自分達はコーヒー・ビジネスを通じて顧客に奉仕していると思っていたんだが、そうじゃなくて顧客ビジネスとしてコーヒーを提供していることに気づいた、と言うんだ」とスタバの役員に話をした”という逸話もあり、モノコト論に留まらずビジネスとしての根幹にまで影響していることも伺えます。
どうやってこうした考え方を、ハワードシュルツやスターバックスは持てるようになったのでしょうか?
夢を実現する調査
ハワードシュルツはスターバックスを“従業員全員が誇りに思える世界の一流ブランドにする”という夢がありました。
それを実現する為の徹底的な調査を3段階におけて行っていきます。
第1段階は、北米のレストランで出される何倍もお替りできるコーヒー、中国製のフリーズドライコーヒー、京都の自動販売機のアイスコーヒー、高級ホテルの喫茶で提供されるマイセンに注がれたコーヒーと世界中の集められる限りのコーヒーに対する評価・コメント記事を分析しました。
第2段階ではコーヒーに対する「欲求の強さ」「時間帯」「ライフスタイル」をグループインタビューし、どれぐらいコーヒーを飲みたいという欲求を持っているか?いつどこで飲まれているか?どんなライフスタイルの人がどんなコーヒーを飲んでいるか?を調査しました。
第3段階ではエスプレッソを愛飲するような“コーヒー通を自認”する人達にスターバックスの価値評価を行い分析しました。
この3つの調査ってペルソナ、カスタマージャーニーマップ作製、価値の評価検証と言うUX開発ステップそのものですよね。
こうした調査から“コーヒーは単なる実用品を超えた存在”であり、多くの消費者にとって”コーヒーとの出会いでKEYとなるのは、その場の状況や雰囲気”だったことが導かれました。
この結果を踏まえスターバックスはコーヒーの味・品質以外に様々な取り組みをしていきます。
① テレビCMマーケティングにお金をかけない
お客様が体験するスターバックスエクスペリエンスが事業マーケティングと捉え「ロゴの入った白いカップで出されるコーヒー」「お客様とバリスタの交流」「快適な椅子」「店内の色使い」「店内の音楽」「コーヒーの香り」そして「お客様の感性」こうしたコーヒーとの出会いを演出するひとつひとつをマーケティングとして捉えているそうです。また良い立地に進出することで店舗自体が広告塔になるそうです。だからスターバックスは有名建築家を店舗設計に起用したり、自社で「ストアデザイン賞」を実施していたんですね。
② お客様との関わり
スターバックスで行われている商品のテイスティングサービスは、単に販売促進ではなく商品をわかってもらうことで、商品と商品をつくるスキルに誇りを持っていることを、バリスタとお客様で分かち合うために行っているそうです。またお客様の飲んでいる表情、笑顔の度合いをバリスタが直接見ることが、リアルな信頼置けるマーケティングになっているらしいです。
③ お客様のインテリジェンスを尊重する
あの難しく、ちょっと小恥ずかしい「ノンファットラテ、ダブルトール、カフェインハーフ」というドリンク注文の仕方はお客様のインテリジェンスをくすぐる為にあり、これが言えるようになることがスタバの一員になったという証をお客様に与えるためにやっているそうです。だから「グランデがLでトールがMサイズ」というカンニング表記は店内に置かないそうです。
④ 約束したことを守る
お客様をがっかりさせないための誠実なマーケティングとして「完璧なエスプレッソの提供」「従業員に対する手当の保証」「地域チャリティ活動の支援」「プラスチックストローの廃止」など様々行われていますが、驚きなのは”マーブルモカマキアートは泡状ミルクにかかるチョコレートの細い格子模様をわざと少し乱れさせ、ちょうどバリスタが今作ったように見えるようにわずかながら完璧さを欠く写真を使っている“と言うところまで徹底して嘘をつかないようにしています。
⑤ エクスペリエンスの質を下げないコーヒー
そしてスターバックスの根幹をなすコーヒーは、コストのかかるアラビカ種を深煎りローストで提供し、それをつくるバリスタはコーヒーの淹れ方が上手なだけでなく品種、産地、煎れ方へのこだわりを熱く語ることでコーヒーを伝えるスペシャリストとしてお客様のコーヒーとの出会いをより素晴らしいものにしています。
ここに書いたこと以外も様々な取り組みを、お客様の最高のエクスペリエンスの為に働く人達全員で日々改善しながら実行していっている集大成がUXに優れた“お客だけでなく、従業員全員が誇りに思える世界の一流ブランド”をなしているのだと思います。
実は私は、どちらかと言うとアンチスタバ派です。
理由はデザイナーによくある天邪鬼な性格です。
みんなが良いと言っているスタバへのアンチテーゼです。
でもこの記事を書くために、改めていくつかのスタバを回ってみました。
あるお店では「良い天気ですね」違うお店では「今日はお仕事ですか?」と聞かれてその親近感にとても嬉しくなりました。
いろいろな仕掛けを知ってスターバックスに行ってみると、やっぱり長時間気持ちよくいることが出来ることを実感させられてしまいます。
「いいよな、この空間と時間」って。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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