殺という字に赤丸をした少女
もう昔の記憶になるが。
母親がドライブ中にこんなことを言った。
「それでも母さんが子供の頃使ってた勉強机は捨てようと思った時みたら、真ん中がへこんでたから、ちゃんと机で勉強してたんだなって思ったよ。」
こう、うちの娘に言って聞かせてた。
半信半疑な娘は「ふぅ~ん」と気のない返事を返していたが、あたしはなんだか誇らしかった。
いや、というか母親に「そこ」は認めてもらってたのかと純粋に嬉しくなった。
文字を書くのは好きだった。だからノートまとめとかは大好きだった。
問題を解くのは苦手だった。
ただ文章を写すのが好きだった。
好きな文章を写すと自然とそれは頭に入っていた。だから書くことで覚えれることはなんとかこなしていた。バカだったけど。
あの机。
買って貰うときはもちろんまだ年長さんで小学一年生に上がる時に買って貰った。
近くの売場に見に行って気に入ったのを探した。母の事を思えばもちろん成長に合わせて机の高さが合わせれるものがいいだろう。しばらくは買わなくて済むし。
そしてほんとは好きなアニメの付いた机カバーが欲しかったけど、母に「勉強する気がある子」にみられたくて、結局、「6年生までに覚える漢字表」なるものが付いたカバーにした。
程なくして少女は自分ではどうしようもない心の葛藤に出会い、机カバーの中の「殺」という文字にのみグリグリと赤丸をする事になる。
それでもきっと文字は書き続けていた。
文字だけではなく絵も描いていたが。
どうも文字を書いているときは「カツッカツツ」的な音がするが、絵を描いてる時は「シャッシャッシャッ」みたいな音がするらしく
母親に「なんも勉強してないでしょ!!」と部屋を覗かれる日々だった。
図書館にて植物図鑑を見付け、スズランの実に毒があるということを知り、興味を持つ。
そしてスズランの身を採取して潰して…机の中に閉まった。
…殺したいぐらい憎い人がいる。
年端もいかない少女がなぜそこまで追い詰められなければならなかったのか?
悶々と毒殺を考えるまでに。
数日後スズランの実は机の中で当たり前のように腐っていた。残念だった。
だけどそれで良かった。そんな度胸もないし。
そうして月日がたち、その「人を殺したいぐらい憎んで赤丸を付けた少女」は自分の素敵な子供達を筆頭に、たくさんのいい人に囲まれて「生きるのも悪くないな、幸せだな」と思って毎日笑顔で暮らせてるんだ。
いつもありがとうございます
ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございます。もうね、感謝しきれないけどね✨
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