寄稿 週刊文春掲載、レオパレスの新たな基準法違反「疑惑」を解説
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寄稿 週刊文春掲載、レオパレスの新たな基準法違反「疑惑」を解説


どーも、おっちーです。

先日、レオパレスのアパート・マンションの施工不良に伴う法令違反が発覚し、改修に迫られ、また住民の引っ越しの要請をするなど、アパートオーナー、入居者に多大な迷惑をかけた事件が発生しました。

この事件に関して私は法令違反、施工不良の内容の技術的解説、施工不良を見抜けなかった組織、行政的な要因について解説した動画を投稿しました。

この事件に関しては、起こしてしまった事を十分に反省し、そしてこの様な事態が二度と起こらないように建設業界が変わっていく事、
そして、事件の発生の最大の予防策として、普段建築、建設を仕事としてない、関わりがない人にももっと建築の事、設計の事に関心を持ってほしいという事は私はこの解説動画でも述べてきました。その思いは今も変わっていません。

しかし、ダイワハウスでも施工不良の問題が発覚するなど、問題は収束するどころか業界全体を覆っています。

さらに先日、レオパレスのアパートでさらなる「法令違反の疑惑」が週刊文春のスクープで報じられました。

この記事によると、レオパレスのアパートで上下階に配管を通す「大きな穴」がそのままとなっており、ここから火が移る危険性があるというものです。
そして一級建築士の森山高至氏によると「建築基準法違反が濃厚」というものでした。

このような新たな問題が浮上することは私としてもとても悲しい話です。

しかし、この記事を読んでみるといくつか「腑に落ちない」点が見られました。
それは、
●法令違反が「疑惑」の域を離れていないという事。
●記事では書かれていないが、建物の規模次第では「違法では無い」という事
●疑惑自体はすぐに判明できる内容にも関わらず追求していない文春の記事、および指摘した一級建築士の姿勢

です。

今回はこの3点について、より広い視野で皆様にみてもらいという思いがあり、記事を執筆するに至りました。
ぜひご一読いただき、参考にしていただければと思います。(一部追記あり)

目次
●貫通部の防火区画処理とその必要な建物の規模と構造
●スクープ記事と「証拠写真」から「疑惑」を現場を読み取る
●簡単に判明できる「疑惑」をないがしろにしている文春の記事及び一級建築士の姿勢、・・叩いて良い相手なら何をやっても許されるのか?

●貫通部の防火区画処理と必要な建物の規模と構造

建築基準法において、火災が起きた時に上の階や隣の部屋に火が燃え移らないための処置として「防火区画」というものがあります。基本的には「準耐火構造」「耐火構造」と言った火災に強い、壁や床にすることで、火が燃えうつる(延焼)を防ぐのですが、給水、排水の配管、電気の配線などを通す際の穴は文字通り「抜け穴」となり、火が穴を通じて燃えうつる恐れがあります。その為、ロックウール、モルタルなどの火に強い材料で穴を埋める必要があります。これを「防火区画の貫通部の処理」と一般的に言います。

この「貫通部の処理」は先ほど説明しました。「防火区画」の役割を持つ壁や準耐火構造の床を計画する場合、必ずしなければなりません。
(建築基準法施施行令112条の15)

 では、このような処置を行わないといけない建物はどんな建物なのか?これも法律で明記されています。法律の中では壁や床、柱などの構造を担う部材を先ほど説明した「準耐火構造」とし、さらに窓などの開口部から外部の火災によって発生した火が燃え移らない処理をする建物として「準耐火建築物」というものがあります。(この規定をさらに厳しくクリアしたもので「耐火構造」「耐火建築物」というのがありますが、今回の趣旨に外れるので割愛します。)
(建築基準法第2条の7、7の二、9の二、9の三)

 この「準耐火建築物」としなければならない建物は、これまた法律で決まっております。

一つは市街地などの多くの人が行き交う地域(法律で「防火地域、準防火地域」として定められ、各行政でエリア分けしています。また東京都内では全ての建物を原則準耐火建築物以上としなければならないエリアが別途定められています。)で一定規模の建物を建築する場合、

もう一つは不特定多数が利用する、または危険物を扱う建物(特殊建築物と呼びます。)の中で一定の規模を持つ場合、

です。
そして今回のアパート、マンションの場合、上記の「特殊建築物」に該当し、一定の規模の場合準耐火建築物以上にしないといけません。そして、該当する規模は


●2階の床面積の合計が300平米以上
●3階以上
●(準防火地域の建物で)床面積の合計が500平米以上

となります。(基準法27条別表1、施行令115条の3〜116条9、基準法62条9)
実際のところは45分準耐火、1時間準耐火など細かい要求で細分されます。
しかしここで知ってもらいたいのは「アパート、マンションの場合、貫通部の処理をしなければいけない建物の規模、及び地域は特定されている」ということです。
上記をご覧になればわかるのですが、2階建てで小規模の場合、法的には不要であるということがわかります。

●スクープ記事と「証拠写真」から「疑惑」を現場を読み取る

では次に記事の内容から「法令違反疑惑」を読み取っていきたいと思います。
まず、記事にある「証拠写真」をみていきます。

文春オンラインより、配管部の「大きな穴」の写真


確かに写真を見ると、配管を通す穴を埋めた形跡は見れません。
そして、以下のように指摘しています。

「本来ならケーブルや配管の貫通部にできた隙間は、耐火性素材で完全に埋める必要があります。少なくとも下の階の天井と上の階の床を耐火性素材で補強するか、ガスや給排水など配管類を納める空間を別に作らないといけません。(中略)
このワンルームサイズの居室であれば1階で火事が起きた場合、2階や屋外に到達するまで45分間持ちこたえなくてはいけないと建築基準法で定められています。仮にこの穴の近くで火がつければ、ものの数分で2階に到達することも考えられ、建築基準法違反の疑いが濃厚です」

この指摘で私が気になったのは2点あり、
●防火区画の説明はしているが、そもそもこの建物自体が防火区画が必要な建物かの言及が一切されていない。
●後半部分の「このワンルームサイズの居室であれば1階で火事が起きた場合、2階や屋外に到達するまで45分間持ちこたえなくてはいけない」と言っているがワンルームタイプのマンション全般の規定では無い

ということです。一点目に関しては記事の中では「(違反の疑いが)濃厚」という形で本質を避ける発言をし、ツイッターでは「回答待ち」としています。

2点目に関してはもっと明確で「ワンルームの部屋のマンションに対して45分持ちこたえる(おそらく先ほど述べた準耐火構造のことです。)構造とする」という内容は法律にはありません。先ほど述べたように階数、大きさ、建てられる地域によって変わってきます。

これは、法令違反以前に大きな誤解を生む内容です。(その後に火が燃えうつる様子を説明しているので尚更です。)もちろん法令違反を行なっていた可能性自体は0ではありません。(前科がある以上、可能性はあると思います。)
しかし、「疑惑」とするにしてもその根拠には記載されている事実が少ないと思います。
考えてみてください。レオパレスの回答を待つのは良いのですが、この区画処理が必要な要素は「場所」「階数」「大きさ」です。特に階数はすぐにわかる内容あり「違反と断定できる内容」では無いでしょうか?これを「疑惑」として発信するのはあまりにも無責任では無いか、そう思います。

●簡単に判明できる「疑惑」をないがしろにしている文春の記事及び一級建築士の姿勢、・・叩いて良い相手なら何をやっても許されるのか?

先ほどの節に続きますが、今回の「疑惑」が「シロかクロか」判断するのは別に大した労力は必要ありません。建物の階数は一目瞭然です。防火区画が必要な建物にしなければいけない地域はインターネットで調べれば瞬時に調べることができます。
そして、建物の規模、大きさ、そして違反の判断で一番重要な「準耐火構造」であったり「準耐火建築物」の判別は建物の図面があればすぐできます。(一般の人にはすぐ図面から読み解くのは困難ですが、一級建築士なら容易いと思います。)
もし、レオパレス側が図面を公表しない、またはオーナーが図面を持っていない場合でも、市役所に問い合わせれば「建築計画概要書」と言って建物の規模、構造が箇条書きされた行政への届出書類を閲覧できます。

このように、すぐに違反を判断できるにも関わらず「疑惑」というカタチで報じた週刊文春、そして、記事の中で「違反の疑いが濃厚である」と曖昧なカタチで不安を煽る一級建築士の姿勢には疑問が残ります。

疑惑であるとすれば先ほど説明した内容のように「どう言った場合(この場合だと3階建である場合、など)違反となる」と言うことまで説明する責任が一級建築士として発信する以上は必要では無いでしょうか?
(ちなみに今回指摘している森山高至氏についてはネットで検索すればどのような人物かは大方わかると思います。)

週刊文春はそれこそ「文春砲」を自慢するように様々な「疑惑」を発射して世間を賑わせているのでもはや説明は不要でしょう。事実、この記事が載っている週刊文春が発売された日、レオパレスの株価はさらに下がりました。



しかし、界壁、天井の施行不良を一度犯したとはいえ断定もせず、「疑惑」のまま、叩くこと、そしてそれが許される、正義であるという空気が生じてしまっているのがとても悲しいことだと思います。もし仮に「違反では無い」と言うことがわかった時、彼らは謝罪するでしょうか?おそらくしないでしょう。だって「悪いことを一度した奴らなんだから、何しても平気」ですから。

また一級建築士でありながら、違反の判定が難儀では無いにも関わらず「疑惑」と言うカタチで曖昧なまま発信していることにも悲しさを覚えます。
一級建築士は不要論こそあれど、実務と試験を経てその知識と技術が保証された「国家資格」です。中途半端な言説や見解でその品位を落とされるのはとても悲しいことです。もちろん、専門分野が違うため、「わからない」こともあると思います。しかし、その場合でも調べて明らかにする、不明確な部分があればその部分も含めて説明し、余計な不安を煽らせることをしないのが一級建築士のあるべき姿だと思います。
私自身も一級建築士として設計の業務を行う以上、胸に刻んでいかなければいけません。
※例えばですが、医師免許を持っている人が一度犯罪を犯し、その罪が裁かれてた、もしくは審議中の人に対して「この人は精神疾患の疑いがある」と無闇に発言していたらどうでしょう?信頼なんてできませんよね。

後記

今回は記事が出た直後であり、続報があるかもしれませんのでここまでとさせていただきます。しかしこの件で見えてきたのは「悪いことした組織には何をしても良い」と言う空気、そして、一級建築士を冠するにしてはあまりにも杜撰で信用を落としかねない指摘であったと言うことです。こうした事が積み重なり、レオパレスに限らず建築士、引いては建築業界全体の不信と衰退に繋がります。
こうした事が起こる事が今後なき様、建築に携わる人が声をあげ、対話し、建築とそれを建てる業界全体が良い方向へ導いて行く事、それが一番大切なのだと思います。

ではでは

追記:文集の記事に関して、仕様書などを見せてもらっているものの、最終的な判断がないため「可能性」というコメントをしているとのことでした。



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ありがとうございました!
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