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2-5.全体訓示×個別対応で、漏れなく・落ちなく

このプロジェクトでは、準備期間の間のミーティング(以下MTG)は、事前研修のみだった。メールでのやりとり95%。
今では考えられない。まずもってそれで成功できるとは思えない。
仕事上で、相手がプロフェッショナルな場合のみ可能なことを、学生に強いているようなものだと思う。
よく学生も頑張った。
が、頑張ったのは学生だけではない。私とT先生も、とても苦心した。

過去のブログにその時の記載があったので、一部転載しながらふりかえってみる。

===
》2月3日の深夜、T先生と私とで「返しがあった人」「なかった人」
》のチェックをメールでやりとり。
》私のところにメールしてきた人は、T先生にも送っているかどうかが
》わからないのだ。
==

当時は、学生の多くが携帯電話でのメール~テキストのみ~しか使ったことがない、という状況だった。

家にパソコンがない。あっても使ったことがない、家族との共有で設定がわからない。
大学メールのアドレスはあるが、ほとんど使わない。

・・・今の学生とあまり変わらないw
携帯のスペックの違いくらいか。

今はSNSもあり、グループを作りさえすれば、一括でやり取りもでき、既読かどうかもわかるが、当時はそういうツールは電子メ-ルくらいしかなかったのだ。
就活を前にして、やっとビジネス的なメールの書き方を習得する大学生なので、CCという意味も、使い方も知らない子が多かった。(これも今と変わらないかも。)

==
》2月3日23:20分ごろの段階で、
》連絡が取れた人:10名
》連絡がない人:13名

》また「T先生メール」が全員に行く。

》日付 2008/02/04 0:36
》件名 Re: お願い
》Tです。皆さんから送っていただいているメッセージは
》今回のプログラムを進める上で貴重な情報です。
》まだ送って頂けていない方も是非お送りください。
》どうしても思いつかない方はそのことをお知らせください。
》なお、お願いした通り、私と同時にmiwwさんにも
》メールはお送りください。

》日付 2008/02/04 0:47
》件名 miwwさんにメールを
》田村です。全員へのお願いです。
》miwwさんにメールを送ってください、
》自分の名前を「ひらがな」で書いて。

==
「ひらがな」は、名札作成のために必要だった。
ちなみに、学生のメールは、自分の名前を記載しないメールもかなり多い。
初めてのメールのやり取りをする場合は、
フルネームを名乗ることは社会の原則だ。
本文では苗字だけでも、署名にはフルネームが必要である。

T先生が、全員に直下型で連絡してくれる。「全体訓示」だ。
私は、個別に一人ひとり、DMでやりとりする「個別対応」。CCにT先生を入れて共有する。
T先生はそれらをみて、全体に共有した方がいいことを「全体訓示」的にメールで送るのだ。

私とT先生は、相談してやってはいないのだが、こんな感じで役割分担をしながら進めていた。

漏れなく伝えるべきところは伝える。わからなくて、気持ちも落ちそうになることもある学生が出ないように、タイミングを見ながら、具体的に指導に入り、すくいあげる。

書くPはこの後10年以上やってきたが、この態勢は二人でずっと保持してきた。
ここまでのお世話は、社会ではほとんどといっていいほどしてもらえないだろう。そのありがたみは、就職してしばらくたってわかるようだ。

この手厚い(?)態勢は、書くPの書くPらしいところのひとつだろう。

後半は、私のこの役回りをリーダー格の学生が担ってくれるようになった。学生が組織として機能するようになったのは、このコミュニケーションのクッションとすくいあげる役割を統括リーダーが理解して、担ってくれたおかげだろうと思う。

ちなみに、タイトルの「漏れなく・落ちなく」は、MECEの「重複なく・漏れなく」からの連想で、「漏れは防ぎたい」けど、重複は構わない。むしろ大切なことは何度でも言って腑に落とさせるのがいいと思っている。
そして、「落ちる」ことは防ぎたい。本人の希望ならそれも仕方ないと思うが、本人は頑張りたいのにフォローがないために落ちてしまう、ということがない仕組みを作りたいと思っている。

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》日付 2008/02/04 15:20
》件名 既に書く力をつけるプログラムはスタートしています

》Tです。いろいろな課題を与えていますが、
》ねばり強く対応してください。
》書く力をつける上で一番大切なことは
》「自分の中にあるものを掘り起こす」ことです。
》そう簡単に掘り起こせるはずはないですよ。
》「記憶にない」といって簡単に諦める方もいますが、
》人の記憶って、そう簡単に思い出せるものなんですか?
》あるいは昔のことをそのまま思い出すことが記憶なんですか?
》その意味で、書く力をつけるプログラムは既にスタートしています。
》力をつけましょう!折角、やるのでしたら。

》日付 2008/02/04 21:49
》件名 失敗は遅すぎる決定に勝る

》Tです。全員へのアドバイスにならないと思いますが、
》抱え込みすぎてはいけません。
》完璧なものを作成しようとタイミングを失することくらい、
》社会に出て致命的なことはありません。
》まさに、失敗や未完成なものを提出することを怖れてはいけません。
》自分なりにできたと思ったら、特に協業で(他者との連携で)
》ことが進んでいるとき、まずは投げてみること。
》それが重要です。
》失敗や不十分さからは学ぶことができるからです。

》日付 2008/02/06 16:22
》件名 昔の記憶に関する疑問に答える

》田村です。今回の作業を通して、
》不安になった方もいらっしゃると思います。
》ほんとうに小学校の時、そんなことを自分は思ったのか?
》そういう不安はわかりますが、
》記憶というものはそもそもそういうものです。
》記憶は現時点起点のものしかありえません。
》なぜならば、記憶はタイムシリーズで蓄積されいて、
》その時間軸を遡及する形でたどれるモノではないからです。
》いわば、現時点で何かを思いだそうとしたとき、昨日のことも、
》10年前のことも、同じ平面に、時間軸に関係なく
》(時間に対してニュートラルに)、浮かびあがってくるのです。
》そのうちの何を選択し、どう紡ぐかで、小学校時代の記憶は
》変わってきます。選択するのは「いま現在のあなたであり私」
》なのですから、小学校時代のあなたや私と感じたことは
》違って当然なのです。

このプログラムは学生たちの書く力をつけるためだけではなく、社会人としてのスキルを身に着けるためのプログラムにもなっていったのだった。

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