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24.信用できる男


 
 「やったね!良かったじゃん」
 夜、異動の話を伝えると、夫はそう言って嬉しそうな顔をした。 
 「やっぱりさ、仕事内容が好きっていうのは大事だよね。俺も転職しちゃおうかな」
 「転職?」
 「なーんてね、今の仕事まあまあ好きだし、必要ないか、ははは。乾杯!」
 美味しそうにビールを飲みはじめる夫。
 
 気楽な人はいいな。夫といるとよくそう思う。細かいことを気にしない夫は、絶えず騒がしい声で埋まっている私の頭の中のことなど、想像もしていないだろう。かといってマメに子どもの面倒もみるし同僚や友人にも頼られている。バランスのとれた人。言動が一致している、信用できる人。
 
 「Dさんもいるんだろ?」
 「え?…ああ、うん」
 「それは安心だな」
 「…え?」
 「いや、だって色々とさ、相談させてもらってるし、Dさんは信用できる男だしな」
 「う、うん、そうだね…」
 
 信用できる男…
 ちょうど、夫のことを信用できると思っていたときに、その口からDの名前が出るとは。
 
 信用できる、オトコ…。
 信用…って?
 オンナとしてのわたしを、わたしは信用できるのかな。
 今夜もまた、わたしの頭の中は騒がしくなっていく。

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