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古事記百景 その七

神生みの初め

既生国竟スデニクニヲウミヲヘテ
更生神サラニカミヲウミマス
故生神名大事忍男神カレウミマセルカミノミナハオホコトオシヲノカミ
次生石土毘古神ツギニイワツチビコノカミヲウミマシ。…訓石云伊波亦毘古二字以音下效此…
次生石巣比売神ツギニイハスビメノカミヲウミマシ
次生大戸日別神ツギニオホトビワケノカミヲウミマシ
次生天之吹男神ツギニアメノフキヲノカミヲウミマシ
次生大屋毘古神ツギニオホヤビコノカミヲウミマシ
次生風木津別之忍男神ツギニカザケツワケノオシヲノカミヲウミマシ。…訓風云加邪訓木以音…
次生海神名大綿津見神ツギニワタノカミノミナハオホワタツミノカミヲウミマシ
次生水戸神名速秋津日子神ツギニミナトノカミノミナハハヤアキヅヒコノカミ
次妹速秋津比売神ツギニイモハヤアキヅヒメノカミヲウミマシキ
自大事忍男神至秋津比売神并十神オホコトオシヲノカミヨリアキヅヒメノカミマデアワセテトハシラ。)
此速秋津日子速秋津比売二神コノハヤアキヅヒコハヤアキヅヒメフタハシラノカミ
因河海持別而生神名沫那芸神カハウミニヨリテモチワケテウミマセルカミノミナハアワナギノカミ。…那芸二字以音下效此…
次沫那美神ツギニアワナミノカミ。…那美二字以音下效此…
次頰那芸神ツギニツラナギノカミ
次頰那美神ツギニツラナミノカミ
次天之水分神ツギニアメノミクマリノカミ。…訓分云久麻理下效此…
次国之水分神ツギニクニノミクマリノカミ
次天之久比奢母智神ツギニアメノクヒザモチノカミ。…自久以下五字以音下效此…
次国之久比奢母智神ツギニクニノクヒザモチノカミ
自沫那芸神至国之久比奢母智神并八神アワナギノカミヨリクニノクヒザモチノカミマデアワセテヤハシラ。)


伊邪那岐神と伊邪那美神の二柱の神は、出来上がった国に住まう神を生もうとされます。
最初にお生まれになったのは大事忍男神おおことおしおのかみ
次に石土毘古神いわつちびこのかみ
次に石巣比売神いわすひめのかみ
次に大戸日別神おおとひわけのかみ
次に天之吹男神あめのふきおのかみ
次に大屋毘古神おおやびこのかみ
次に風木津別之忍男神かざもつわけのおしおのかみ
次にお生まれになったのは海神うみのかみ大綿津見神おおわたつみのかみ
そして湊神みなとのかみ速秋津日子神はやあきつひこのかみ速秋津比売神はやあきつひめのかみ
ここに大事忍男神から速秋津比売神まで十柱の神がお生まれになりました。ここでお生まれになった速秋津日子神と速秋津比売神の二柱の神も川と海に関連する神をお生みになります。
最初は沫那芸神あわなぎのかみ
次に沫那美神あわなみのかみ
次に頬那芸神つらなぎのかみ
次に頬那美神つらなみのかみ
次に天之水分神あめのみまくりのかみ
次に国之水分神くにのみまくりのかみ
次に天之久比奢母智神あめのくひざもちのかみ
次に国之久比奢母智神くにのくひざもちのかみ
ここに沫那芸神から国之久比奢母智神まで八柱の神がお生まれになりました。


※大事忍男神は何の神なのか分かりません。
※石土毘古神と石巣比売神は岩や土の神と女神と言われています。
※大戸日別神と天之吹男神は何の神なのか分かりません。
※大屋毘古神は家屋の神と言われています。
※風木津別之忍男神は風の神と言われています。
※沫那芸神と沫那美神は泡の神と女神と言われています。
※頬那芸神と頬那美神は水面の神と女神と言われています。
※天之水分神と国之水分神は灌漑の神と言われています。
※天之久比奢母智神と国之久比奢母智神も灌漑の神と言われています。


「いよいよ神生みが始まりました。太安万侶です。今回も那岐君と那美さんに加え、新しくファミリーになられた速秋津日子と速秋津比売の二神にも来ていただきました。まずは那岐君、神生みは国生みとは違うんでしょうか」
「前回の国生みの経験が活かされてるっていうか、比較的楽なスタートだったと思ってんだけど」
「そうよね。息子と娘が後半は助けてくれたから、国生みと比べればずいぶん楽してるよね」
「それでは初登場の速秋津日子君と速秋津比売ちゃんにも話を聞いてみましょう。まずは息子の速秋津日子君、どうだった?」
「父上と母上の助けになればと思って頑張ったんすけど、俺たちの方が若いのに数で負けるって論外すよね」
「集中力の差じゃねえか」
「父上様も母上様も鬼気迫る感じでしたもの」
「同じ部屋だったの?」
「そんな訳ないっしょ。ただ、気迫が飛んでくるって感じなんすよ。さすがベテランと言えばいいのかな」
「それでちょっと引いちゃった感じもありましたし」
「次の機会があれば、もう少し上手くやれるってことかな?」
「いやあ、もうご馳走様っすよ。お腹いっぱいでできないっす」
「私もすごく疲れちゃうから、しばらくはお預けでいいかな」
「息子君と娘ちゃんはあんなこと言ってますけど?」
「情けねえよなあ。俺たちなんて兄ちゃんや姉ちゃんたちの協力も得られずに、ここまで俺たちだけで頑張ってきたのにさ、息子や娘がこれじゃあお先真っ暗だね」
「那岐、ちょっと言い過ぎだってば。私たちの時とは時代が違うんじゃないの?」
「どう違うんだよ」
「万事控えめって感じじゃない」
「若いんだし、我武者羅に行けばいいじゃんか」
「その我武者羅感がダサいって思われてるんじゃないの」
「お前たちはそうなのか?」
「違うとは言いにくいなあ。俺たちは生まれた時から父上と母上の子で、今風に言えば、レジェンドの子で、ハイソサエティーな訳っすよ。そこに我武者羅感は必要ないんすよね」
「理屈捏ねてるようだが、我武者羅にはなれねえってことか?」
「なれないかどうかは、なろうとしたことがないから分からないが正解かな」
「やっぱり始まったばっかりだと思ってたけど、これじゃあ世も末だな」
「那岐、分かってると思うけど、この子たちにはこの子たちの考えがあるのだから、強制しても仕方ないと思うよ。間違ったとしても自分たちで修正していくんだろうから、好きなようにやらせてみれば」
「母上、それ俺たちの前で言います?」
「まあまあ、揉めるのは止めようね。ところで、神生みはまだ続くんだよね」
「そうだな、まだ充分ではないらしいから」
「俺たちはちょっと休憩してから、参戦するから」
「那美、こいつらホントに俺たちの子か?」


お知らせが一つあります。
この「古事記百景」のシリーズは今後木曜日の更新とします。
新しく「訊く者」というシリーズは月曜日更新とします。
乞うご期待。


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