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『ウーリーと黒い獣たち』スピンオフ#月の使者編

尊敬する「うりも」さんが
「創作活動を楽しもう」をコンセプトに
面白い企画を立ち上げました。

上記の企画では、
多くのnoterさんが参加されて
各々に妄想物語を作り投稿されています♬

せっかくですので…

わたしも
参加させていただきます!


もちろん、うりもさんから
お墨付きいただきましたww


以下、わたしの「ウーリーと黒い獣たち」の
妄想物語をお楽しみください🙇‍♂️


それでは、いってみましょう(^^♪



-あらすじ-

繋がりを感じて幸せに暮す民たちの国『ターリキィ王国』
あるとき、アクーン王が鼠径部に違和感を感じて病に伏した。
それからというもの、ターリキィの国は日照りが続き、
主食として大切に栽培されていた バナンナも実をつけなくなった。
人々の暮しに暗雲が立ち込める。

このままでは国が危ういと、賢者たちが知恵を出し合って導いたのが
『この国の波動を取り戻す』という打開策。
そのためには国の中から勇者を探し出すこと。

そしてその勇者が隣国の王ゲーンと手を結び、
闇を支配する女王ルボンから「インヨー」と呼ばれる波動調整の神器を
手に入れることだった。

国の命により選ばれし勇者ウーリー。
わずかに残っていたバナンナの実を携えて旅立つ。
果たして彼の行方にはどんなコメディが待ち受けるのか⁉



勇者の誕生



ターリキィ王国の朝は早い。

ニワトリの鳴き声が聞こえたかと思うと、すでに人の声が聞こえてくる。これは国が元気な証拠なのか。はたまた、隣人特有の特徴なのか…おそらく、後者に当てはまるだろう。
なぜなら、隣の長屋は「べしゃり屋」と呼ばれ、有名なおかみボーチャが住んでいるからだ。また、この国で最も早く開店する雑貨屋としても有名だ。

つい最近、保健所の職員がべしゃり屋に訪問したが、とくに収穫はなく、そそくさ立ち去っていったのを見かけた。また、うまいことボーチャに言葉で丸め込まれたのだろう。そもそも、雑貨屋というのは裏の顔で、どちらかといえば情報屋として機能しているらしい。


今日の朝も、何ら変わらない平凡な朝だったはず…

そもそも、この国は日照り続きで主食の「バナンナ」の実が育たず情勢は厳しいと聞いていた。にもかかわらず、にぎやかな笑い声、高いトーンで誰にでも聞こえるようにおしゃべりする住民たち。
「一周まわって、おかしくなったのか」と自分を疑うほどに明るい国だ。


失礼。

わたしは、べしゃり屋の長屋の隣に引っ越してきた「ゴーショー」という流れ商人である。もともとはショウナーン王国で働いていたが、さらに一儲けしようとターリキィ王国に移住してきた。
「あそこの店にいけば、有力な情報がもらえるかもよ」と仕事仲間に言われ、”例”の長屋の隣にやってきて、早くも1週間。
寝不足である。
朝早くからワチャワチャ大きな声で喋られれば、誰でも寝不足になれるのはわたしが責任を持って保証する。よりにもよって、トタン壁のボロ長屋に住んでるもんだから、余計に隣の声は否が応でも聞こえてくる。酷い環境だ。

最初は「噂話から客層が分かるのでは」と聴き耳を立てていたが、すぐに意味がないことが分かった。そう、この国特有の母国語、ターリキィ語で会話するからだ。唯一、分かる言葉は決まった時間に聞こえてくる「せいそ!せいそ!せいそ!」と「ごっつぁんです」だけだ。正直、どのタイミングで使う言葉なんだと理解に頭を悩ませている。寝不足と最悪の環境のループ。
今回の出稼ぎは失敗だと、いまさらに後悔しているがもう遅い。


話を戻そう。


今朝は、いつもと違って仰々しい朝を迎えた。なぜなら、今日は干ばつ被害のターリキィ王国を救うために「三賢者」のおふれを出す日だからだ。
もちろん、この情報は朝っぱらから「べしゃり屋」の前で話す女性から盗み聞きしたときに得た内容だ。(というより、勝手に聞こえてきたというほうが表現としては正しいだろう…)

 閑散とまでは言わないものの普段は人が通り過ぎる程度の広場だが、わたしも例に漏れず、三賢者の言葉を聞こうと広場に向かったものの、今日は見たことがないほどに人だかりができあがっている。
広場の中央にはモニュメントの噴水がある。ターリキィ王国の王、アクーン王の銅像が噴水中央にそびえ立ち、その足元から水が溢れ出ているのが本来の姿。いまは水は流れず、噴水というカタチだけを模している虚しい建造物に成り下がっている。わたしは集まる民衆をかき分けて、可能なかぎり広場中央に近い場所でそのときを待つことにした。ただ、噴水周りに集まる民衆の熱気は凄まじい。場所によっては怒号の声が聞こえる。

「おい、まだか!!」
「この国はどうなるんだ!」
「早く、答えを教えてくれ!」

徐々にヒートアップする民衆。太陽が少しずつ傾きかけ、建物の陰が増えた矢先、噴水の前に二人の賢者が出てきた。あれだけ騒がしい群衆の声は二人の一言目を逃すまいと、ピタリと止んだ。かたずをのんで静まり返る。
その間を待っていたかのように、一人目の賢者が透き通る声で喋り出す。


「ここのところの日照り続きにより、我が国のもっとも重要な食であるバナンナの実が枯れて育たなくなっているのは皆も知るところである。このままでは国の蓄えも近いうちに底をついてしまうだろう。雨を降らすために三人の巫女によって雨乞いの儀式を取り行うこととした」


続けて、二人目の賢者が喋る。

「しかしそれだけでは急場の凌ぎに過ぎず、根本的な問題を解決する必要がある。王アクーンは太陽の守護する元に生まれし存在であり、彼の病はこの国の天気さえも狂わせてしまう。この日照りはアクーン王のエネルギーが弱まっていることが引き起こしているのだ。我らが王のエネルギーを回復させねばならない。そのためにはシュミクトの智慧が必要である」

二人の賢者の言葉を整理するとこうだ。

・バナンナの実を育てるために
 雨を降らせるための”雨乞いの儀式”を取りおこなう。
・アクーン王のエネルギー復活のために”シュミクトの智慧”が必要

ふむ、はたして効果的な方法なのだろうかと少しの疑問を感じたとき、二人の賢者に近づく輩が見えた。どうやら、最後の賢者らしい。


噴水前に立ち、声高らかに賢者は言う。

「この国の波動が著しく低下していることが王の病を引き起こしている。これは我が国のみならず、じきに隣国にまで悪影響を及ぼしてしまうだろう。早急に両国が手を取り合って、この大難を共に乗り越えるべく、協力を仰ぐ書簡を、ゲーン王宛に送った。
そしてここで、この命を受けて国を救う勇者を選出する。
私の受け取った天啓を今から皆に伝える。それが示すすべての条件に該当する者こそ、選ばれし勇者である」


選ばれし勇者!?


わたしの脳内は混乱する。勇者の存在がここで明るみに出るのかと、にわかに信じがたい状況を受け入れられず、気が動転する。近日の寝不足もあいまって思考の整理が追いつかない。「まさかな…」と瞬時に疑ったそのとき。
最後の賢者は口を開く。

「まず第一の条件。勇者の名は頭文字がWの男である」

えっ!

w!!


ザワザワとどよめく民衆と一緒に、周囲を確認し合う声も聞こえる。
続けて、賢者は言う。

「第二の条件。勇者は他者の言葉を丁寧に傾聴する者である」
「そして第三の条件。
 生まれてこの方、メウボーシの実を口にしたことがない者である」

なんじゃ、その条件は!?

勇者の頭文字は「W」で、他者の言葉を丁寧に傾聴できて、メウボーシの実を食べたことがない人。
ありふれたようで以外に存在しない絶妙なラインの条件に、不思議と「そんなやつはいない」と決めつけて、広場をあとにしようとしたとき。

「その男が誰なんかわかったで!」


この声は聞いたことがある。いや、忘れたくても忘れられない声だ。そう、わたしが引っ越してきた部屋の隣に住む長屋のおかみさん、ボーチャの声だ。若干、イラっとしつつも、その声は続けて喋り出す。

「あんたとこの旦那やんか!他におれへん!」

ボーチャは、隣の女性の肩を叩きながら言う。
隣の女性は「わたしの旦那?」と言わんばかりの顔をして、つぎに奥から見知らぬ男性が前に出てくる。どうやら、その男こそ”勇者候補の男”らしい。
その男は現状を理解せぬまま、民衆から背中を押されて、広場中央にいる三賢者の前に立たされる。「なにが始まるんだ」と一度は帰りかけたわたしの足は、広場中央を向く。

三賢者の手には赤い実が握られているのが見えた。どうやら、メウボーシの実っぽい。そして、その実を勇者候補の男の顔に近づけていく。

「ちょっと待ってー!何なんー!コワいコワい!」

あきらかに抵抗の意思を示す男。それもそのはず、メウボーシの実はとてつもなく酸っぱい実なのだ。子供はおろか大人ですら、食べるとなると躊躇するほどに人を選ぶ食べ物である。

遠くから「ごっつぁんです!」と聞き慣れた言葉が聞こえてくる。どうやら、男の奥さんからの激励の言葉のようだ。(なんて迷惑な言葉だ)

泣き叫ぶ男の口にメウボーシの実を押し込む賢者。
「ごっつぁんです」と親指を立てる奥さん。
「どうなるんだ」と様子をうかがう民衆。

とんだカオスな空間に引きずり込まれるように、わたしも実を押し込まれる男の生き様を終始、見続けた。


むせ返りながらも強引に実を押し込まれた男は、どうなったのか。


発光しだしたのだ!


男の身体は、周囲の人間が目を覆いたくなるほどに、まばゆい光を放っていたのだ。あれだけ広場に集まった人間の誰よりもその姿は神々しく、ありえないほどの光量は太陽にも引けを取らない。

あまりに非日常の現実に、わたしの口は開きっぱなしだ。
「この男の生態はどうなってるんだ」と思考の整理が追い付かない。

そして、男にメウボーシの実を押し込んだ賢者が、なにやらひそひそと喋りかけている。もしかすると、その特異体質についての説明か、あるいは発光する条件なのか…、遠巻きに見ていたわたしには分からない。




月の使者


その男の名は「ウーリー」という。世間では控えめな男で人当たりは良く、周囲の人の声を真摯に受け止める男だといわれている。妻と娘ひとりで暮らしている。が、今回、国の危機によって”勇者”に抜擢された英雄。

勇者ウーリーの目的は、国の問題を解決すること。つまりは、干ばつ問題と国王アクーンのエネルギーを復活させること。

前日の夕方の一部始終から、その男は三賢者と同伴して行動を共にしている。同日におこなわれた”雨乞いの儀式”も、そのまま見続けていた。
広場には「勇者の誕生だ」と祝う者、野次馬程度でさっさと帰る者、「飲み直すぞ」と居酒屋に足を運ぶ者など…、さっきまでの熱気はなんだったのかと言わんばかりにそれぞれに動き出す。
まぁ、民衆からすれば”勇者”という存在があらわれたからこその安心感を得たのかもしれない。

「勇者だから」「勇者だったら」「勇者こそ」

民衆の期待に、国の期待に応えてこそ、勇者に存在意義はある。ウーリーという男に与えられた使命は、他力本願ながらに道のり険しいものだと痛感せざるを得ない。すくなくとも、彼の特異体質「発光する身体」が国の危機を救うことに、どのように役に立つのかが想像できない。だとすれば、民衆の声とは、どちらかといえば「この勇者に期待してはいけない」といった側面も持ち合わせているかもしれない。

”光る身体”だけでは弱いのだ。

そう考えると、勇者ウーリーは三賢者と同行して、その特異体質の今後の使いどころについて検討するのだろう。すでに旅は始まっているのだ。
わたしは広場での出来事をとおして、「ターリキィ王国に勇者が誕生したこと」をけして軽んじてはいなかった。なぜなら、このことをルボン女王に報告せねばならないからだ。








以上です。

ここまで、
わたしの妄想物語でした~♬

楽しんでいただけたら幸いです。

今後は、ほかnoterさんの物語を読みつつ
また妄想を膨らませたいと考えております。

では、また。
失礼します。

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