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登山中の筋肉の働き

1. 筋肉の動き方

私たち人間の筋肉は約650個あり、そのうち約400個が運動に携わる筋肉と言われています。日常生活を送っている時も、平地を歩いている時も、山を歩いている時も、様々な筋肉が連動しながら動きを支えているのです。その筋肉は、大きく分けると3種類の動きがあります。

【筋肉の収縮様式】

短縮性収縮・・・筋肉が縮むことで力を出す
 登山中の登りでの太ももの前面(大腿四頭筋)の動きが短縮性収縮

伸張性収縮・・・筋肉が伸びることで力を出す
 登山中の下りでの太ももの前面(大腿四頭筋)の動きが伸張性収縮

等尺性収縮・・・筋肉の曲げ伸ばしがないまま力を出す
 クライミングでホールドを掴んだまま耐えている際の腕や指の動きが
 等尺性収縮

その中でも、筋肉痛を起こしてしまうのは、「伸張性収縮」。つまり、登山後に筋肉痛を感じるのは「下り」の動作が原因ということなのです。実際に上りと下りでの筋肉の損傷度合いを測定した結果が、下の図になります。

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2. 登山中の筋肉の動きを細分化

同じ筋肉でも、体の動きによって収縮の様子が違うのですが、さらに、その活動量も違います。例えば、登山中の登りでは大腿四頭筋が働くのですが、どれくらい使われるかというと、登山の登りではウォーキングの1〜1.5倍、下りでは2倍になることもあります。また、股関節の動きを助けるお尻(臀筋群)は、登山中に急な斜面や岩場、ハシゴなどを登る時に大きな働きをしますが、登りではウォーキングの約2倍になります。さらに、体幹を安定させる腹筋は、下りではウォーキングの約2倍、背筋は登りで約1.2倍と大きな働きとなるのです。

3. 年齢による筋力の低下

最近、膝が痛いな、下りで膝がガクガクするようになったな・・・と感じている方はいないでしょうか?最近では、登山事故が増加しているという問題も多く取り上げられるようになってきました。その内訳は「転・滑落・転倒」が最も多く、事故の半数を占めているとの報告もあります。そして、それらは特に下山中に多く、その原因が、筋力不足による可能性が高いと考えられています。耳が痛い話でもありますが、加齢による筋力の低下は、意外と大きいことも知っておく必要があります。

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さらに、上記の図で表した、じっとした状態で測定した「筋力」や「平衡性(バランス力)」だけでなく、登山中にバランスを崩した際に、とっさに足を出して耐える能力も年齢とともに低下します。

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現実をしっかり受け止め、いつまでも安全に楽しく登山を続けていきたいですね!

4. まとめ

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