大活躍の呼吸筋
私たちが普段から無意識に行っている「呼吸」。しかし、呼吸を継続するためには呼吸筋が活動しているのをご存知でしょうか。登山を行うときだけでなく、日常生活さらには睡眠中にも働いている呼吸筋。そのトレーニングとケアをすると、パフォーマンスアップだけでなく、ストレス解消にもつながります。
1. 呼吸筋ってなに?
私たちは呼吸することによって、酸素を身体に取り入れ、二酸化炭素を体外に排出することで生活しています。呼吸は無意識で行っていることがほとんどですが、1日あたり何回くらい行っているのでしょうか。一般的に、正常な成人であれば1分間に12〜16回の呼吸を行っています。仮に1分間に15回行っているとすると、1日に24,600回もの呼吸を行っていることになります。その際に働いている筋肉が「呼吸筋」です。
酸素と二酸化炭素のガス交換を行っている器官は「肺」ですが、肺は自分で収縮することができないため、呼吸筋が収縮することで肺のガス交換を助ける役割をしています。「呼吸筋」には、肋骨の間にある「肋間筋」と「横隔膜」があり、それぞれ安静中と運動中で活動する筋肉が変わります(図1)。
肺の大きさは変わらない?
肺の大きさは成人を過ぎると成長しない、と言われますが、呼吸筋を鍛えることで肺の伸縮性はアップします。その結果、肺活量を測定すると、値が向上することがあるのです。「昔から肺活量が少ない」という方もいますが、もしかすると呼吸筋のトレーニングによって、若い頃よりも肺活量をアップすることができるかもしれません!
2. 自分の肺年齢を知る
自分の呼吸筋を測定する方法ですが、医療機関で測定することができます。「呼吸機能測定」と言い、スパイロメータという機器を使用して測定しますが、最近では人間ドックでも測定項目の一つとして行われています。呼吸機能測定の項目ですが、肺活量(SVまたはFVC)は肺の容量、つまり肺の大きさを表しています。一秒量(FEV1.0)は一秒間に吐き出せる量で、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の重症度を表す際の指標です。そして、一秒率(FEV1.0%)は一秒量/肺活量×100%で、これが肺や呼吸筋の強さを表しており、一般的に70%を切ると肺の疾患が疑われます。もちろん、この一秒率が高い方が呼吸筋が強いと言えます。ご自身の測定結果がある際は、もう一度振り返って確認してみましょう(図2)。その結果から、肺年齢を算出することも出来ます。簡単に肺年齢を算出する方法はこちら。
3. 登山と呼吸筋の関係
登山を行う際、もちろん脚や体幹の筋も働きますが、呼吸筋も大いに働いています。運動強度が高くなる登りや、標高が高くなる準高所や高所(※今後、改めてお伝えします)では特に重要な働きをします。例えば呼吸筋、大脳(中枢神経)、脚筋の相互関係の呼吸筋代謝性反射の関係図を見ると、高い強度の運動を実施すると、呼吸筋や横隔膜の疲労が脳内の延髄にある呼吸中枢に伝えられ、反射的に脚筋の血管収縮を高め、血流や酸素供給を制限すると言われています。「以前と比べて、登りで息切れが激しくなった」「3,000m級の稜線でも高山病のような症状がでる」・・・という方は、もしかすると呼吸筋に問題があるかもしれません。
さらに、ザックを背負って長時間の歩行を行う登山の場合、呼吸筋は常に収縮している状態だと言えます。登山中だけではなく、普段の姿勢が猫背である場合はさらに日常生活から呼吸筋は常に収縮した状態です。このように、常に収縮した状態では、呼吸筋はしっかりと働くことができません。「日頃から定期的に登山を行っているから呼吸筋も問題ないだろう」というのは、ひょっとしたら間違っているかも?!
4. まとめ
普段、何気なく行なっている「呼吸」。実はそれも筋肉の働きが影響しているのです。その働きを知ることが大事です。次回は、呼吸筋のケアとトレーニング方法をお伝えします。
※こちらは、期間限定の無料配信記事となります。5月は限定期間として無料で配信いたします。
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